第2話 赤ん坊の隣で
朝陽の家、アパートの一室に到着した。里奈は大人しい。抱っこバンドで朝陽に括り付けられ、時々キョロキョロしながらも、指をくわえて黙っている。
「ほら、着いたよー。里奈、おねんねしようねー。」
朝陽はベビーベッドに里奈を寝かせると、おむつを取り替え、布団を掛けた。
赤ん坊を見せられて終わりかと思ったが、そうではなかった。赤ん坊が寝ている隣の部屋で、情事を許してくれた。そのつもりで着いてきたんでしょ、と彼は言った。保育所まではその通りだったが、もう何が何だか分からなくなっていた。色々と理解の範疇を越えている。だが、せっかくなのでお言葉に甘えた。
情事の後、
「じゃ、帰って。さよなら。」
あまりにもあっけなく、追い立てられた。
「もうすぐ里奈のご飯だから。」
そう言われては、返す言葉もない。
「ちょっと待て。お前があのゲイバーにいたのは、一時の情事の相手を、その……漁りに来たって事なのか?」
その歳で。朝陽はそれについては何も言わなかった。
「はい、出てって。」
玄関へ押し戻される。辛うじて扉に手を掛け、閉められないようにしつつ、
「連絡先、教えてくれ。頼む、朝陽。」
懇願する。このまま帰ったら後悔しそうだ。まず、家を知ってしまったから忘れられない。かといって、勝手に家に押し掛けたらストーカーになってしまう。どうしても、連絡先が欲しかった。
「分かったよ。ほら。」
朝陽はダイニングのテーブルに置いてあったスマホを手に取り、QRコードを出した。慌ててそれを読み込んだ。
「サンキュー、またな。」
そう言って、朝陽にキスをした。朝陽は少し驚いた顔をした。何も言われないうちに、その場を立ち去った。
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