第274話 ドラゴンボーンズの替え歌!
【お尻痒くな~る】の効果が切れて、元の素の状態に戻ったドラゴンボーンズ。
キモヲタの不思議な踊りによって、自分たちのお尻の痒みが取れたと信じて、キモヲタを称えるのでした。
「キモヲタ! お前に栄光あれ! ウーッ!」
「アタシたちのケツの痒みを消してくれた! ヤーッ!」
「「「偉大な魔術師! ハーッ!」」」
彼らの信頼を勝ち取ったキモヲタは、ここぞとばかりにお尻が痒くなった原因を妖異に押しつけます。
「いやいや。我輩はただ貴殿らの健康をお祈りしただけでござるよ。それにしてもあの虫の化け物め! ドラゴンボーンズの皆様方にこのような恐ろしい呪いをかけるとは!」
キモヲタは大袈裟な素振りで、巨大な妖異の死骸を指差すと、次に拳を胸元にもっていき力強く握り締めました。
当の妖異からして、【お尻痒くな~る】の犠牲になっていたわけですが、そのことは墓の中まで持っていくつもりのキモヲタなのでした。
「確かに! 怪物の呪いは恐ろしかった! ハッ!」
「頭おかしくなるわ、噛まれて痛いわ、なにより痒いわで、超辛かったわ! ウーッ!」
「だが俺たちはドラゴンボーンズ! ヤーッ!」
「「「どんな敵でも恐れない! ハーッ」」」
とにかく、いちいちうるさい連中なのでした。
~ 捜索拠点 ~
フロアボスの討伐の知らせを受け、他の冒険者たちが地下三階の広間に集まってきました。
その中には遅れてダンジョンに到着してきたクラウディア・モリトールの姿もありました。
「これより、この広間を捜索の拠点とする! 引き続きこの階の行方不明者の捜索を続行! あわせて地下四階への入り口も探すのだ!」
遅れて来ているにも関わらず、相変わらず大上段から他人を指示するクラウディア。カザン王国とルートリア連邦の騎士隊も、その勢いに呑まれて彼女の言う通りに行動を始めます。
激しい戦闘と不思議なダンスを終えて、食事休憩中のキモヲタたちのところへ、冒険者たちが次々と近づいて来ては、キモヲタたちを賞賛しました。
「あんたたちが、このでっかい甲虫を倒したのか? 凄いな……」
そう言って冒険者が指差す先には、ユリアスとエルミアナによって丁寧に解体された妖異の死骸がありました。
一方、冒険者たちとは違って、貴族や騎士隊の者は誰一人としてキモヲタたちに近寄ろうとはしませんでした。
クラウディア・モリトールなどは、キモヲタたちの居場所から対角線上でもっとも遠い位置に陣取っていて、こちらに目を向けようとさえしません。
意地でもキモヲタたちの功績を見ようとしない貴族たちの姿勢に、呆れていたのは冒険者だけではなく、ドラゴンボーンズたちもそうでした。
「ウーッ! あの貴族ども、この怪物を見ようとしない!」
「ヤッ! 怪物を倒したキモヲタたちを称えない!」
「ハッ! 俺たちの痒みをやつらにも味合わせてやりたい!」
だんだんと怒りに染まっていくドラゴンボーンズたちを見て、何かやらかすのではと危機感を抱いたキモヲタ。
「まぁまぁ。あの方々も、自分たちの手柄を横取りされて、面目が立たないのでござるよ。普段いばり散らかしてるだけに、立つ瀬がなくて歯ぎしりしてるだけでござる。まぁ、武士の情けでござる。ここは生暖かく笑っておこうではござらんか」
「ウーッ! キモヲタがそういうのなら、笑うとしよう!」
「ヤッ! わかった! ではドラゴンボーンズの替え歌でいくか!」
「「「ハッ!」」」
キモヲタの説得を受け入れて大人しくするのかと思いきや、ドラゴンボーズは互いに肩を組み、なにやら始めました。
「ちょ、ちょ、ちょっと皆様方……いったい何を……」
「替え歌」という言葉を耳にしたキモヲタの額から、冷や汗が流れ始めます。
「「「ウーッ! ヤーッ! ハッ!」」」
「「「ウーッ! ヤーッ! ハッ!」」」
「「「腰抜け~♪ 貴族ぅ~♪ 遅れて~♪ 来たり~♪
魔神は~♪ キモヲタが~♪ 倒し~♪ ちゃった~♪」」」
「「「ウーッ! ヤーッ! ハッ!」」」
「「「ウーッ! ヤーッ! ハッ!」」」
「「「まぬけな~♪ 騎士は~♪ その目を~♪ 閉じて~♪
ぷるぷる~♪ 震えて~♪ ママのちちにぃぃ!」」」
「「「吸いッ! ついっ! てるっ!」」」
「「「吸いッ! ついっ! てるっ!」」」
「「「ダーッ! ダハハハハハハ!」」」
歌を終えたドラゴンボーンズたちは、大爆笑で床を転げ回ります。そんな彼らの姿に煽られ、怒りに震えるた騎士たちの中には、剣を抜いている者まで出始めていました。
「ちょちょちょちょちょ皆様方!? ハウス! ハウスでござる!」
貴族たちを生暖かく笑うつもりが、顔面蒼白になってしまったキモヲタなのでした。
そのキモヲタの隣では、ユリアスが泡を吹いて倒れていました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます