第182話 南橋の奇跡! 轟く再生のあえぎ声!

 仮面の男によって致命傷を負ったラモーネ・ドルネア公爵夫人。


 命からがら北西区の南橋までたどり着きはしたものの、そこで力尽きて倒れ込んでしまいます。


 道に横たわる血まみれのラミアを見つけた北西区住人がシスター・エヴァに報せた結果、キモヲタが呼ばれることとなったのでした。


 報せを受けて大慌てでラモーネの下へやってきたキモヲタは、仲間のラミアが見守るなか、早速【足ツボ治癒】を施そうと彼女の足元へ向かおうとします。


 しかし、ラミア族であるラモーネには人間の足はありません。そこにあるのは巨大な蛇の尾なのでした。

 

 その尾とて、仮面の男による大きな損傷があちこちにあって、見るのも辛くなるような痛ましい状態です。


「ふむ……」


 キーラが耳栓と目隠しの準備を整えている間、キモヲタは顎に手をあて静かに瞑目していました。


(確か師匠はこう言っていたでござる……)


 それはかつてこの異世界に転移する直前、キモヲタにチートスキルを授けてくれた天使との会話を思い返していたのでした。


『エンジェル・キモヲタ師匠! 頂いた【足ツボ治癒】でござるが、これから我輩が向かう異世界には人間とは異なる種族もいるのではござらんか? 色白赤眼アラクネ娘とか、ケンタウロス娘とか、ラミア娘とか、イカ娘とか、そういう場合はどうすれば?』


 キモヲタとフォルムがうり二つの、ヘソ出しTシャツに『えんじぇる』と書かれ天使がデュフフと笑って答えました。


『もちろんその全部がいるでござるよ。さらに言えば、ゴースト系もちゃんと存在するでござる。仲良くなれば、ずっと耳元で恨み言を聞かせてもらえるかもしれませんな』


『ふぉおおお! ゴースト娘の囁きボイス! 異世界ではそのような心地よい安眠が保証されてござるか!? 師匠、ぜひとも彼女たちと仲良くなるをヒィヒィ言わせるためも【足ツボ治癒】の奥義を伝授くだされ! 何卒! 何卒ぉぉ!』


 彼らの会話を第三者が聞いていたら、確実に「コイツら頭おかしい」内容でしたが、魂が共鳴していた二人の間には常識や良識などは一切不要だったのでした。


『デュフフ。もう貴殿はその奥義を体得しているでござるよ。先ほどの会話で、我輩はそれを確信したでござる』


 そう言うとエンジェル・キモヲタは、さも愉快そうにタプンタプンをお腹を揺らします。


『と言いますと?』


 そう言われても、何がなんだか分からず首を傾げるキモヲタに、エンジェル・キモヲタが答えました。


『先ほど、我輩がゴーストに耳元で怨みを言われるという話をしましたな? それを貴殿は瞬時に『ゴースト娘のASMR ~ 耳元で囁く罵り声 ~ R18製品版』へと変換したでござるな? デュフコポー』


『確かに! しかし、それがどうしたでござる……はっ!?』


 キモヲタの身体にカミナリが走り抜けました。


『デュフフフ。どうやら分かってしまったようでござるな。そうでござる。世界のどのような理不尽も、不可能なことも、意志の力で歪曲してしまう究極の技法……』


 エンジェル・キモヲタの問いかけるような目線を受け、キモヲタは静かにその答えを口にします。


『お前がそう思ってるなら、そうなんだろう? お前ん中でな!……メソッドでござるか!』


『然り然り! さすがは我が魂の同志! 今この瞬間、貴殿は【足ツボ治癒】の究極の奥義に到達したのでござる! フォカヌポー』


 エンジェル・キモヲタとの会話をそこまで思い出したとき、キーラがキモヲタの肩を叩きました。


「キーラタン! 我輩の手をラモーネ殿の尻尾の先に誘導してくだされ!」


「わかった!」


 キーラがキモヲタを誘導して、ラモーネの尻尾をその手に触れさせました。


 その瞬間、エンジェル・キモヲタの言葉がキモヲタの脳裡に蘇りました。


『そこに足裏があると強く思うことができたのなら、そこにあるのでござる! コツは「こういう足に踏んづけられたらさぞ気持ちいいだろうなぁ」という足裏を強くイメージすることでござるよ!』


(師匠! 今こそ我輩、本当に分かったでござる! 今手にしているこのラモーネたんの尻尾こそ足裏、罵られながらお腹をペシペシとされたいでござる!)


 カッ! 

 

 と目を見開いたキモヲタ。目隠しされているので何も見えませんでしたが、それはともかく気合は十分でした。


「轟け雷鳴! 響け足裏! この必殺の後家殺し! 我が親指よ! ラモーネたんんに届け!」


 グリッ! グリッ! グリグリィィ!


 その瞬間、


 ブワァァアア!

 

 と強烈な緑色の光がラモーネの全身を包みます。


 グイグイッ!


 とキモヲタがラモーネの尻尾に親指をめり込ませる毎に、身体中にあった傷がどんどん消えていき、噛み切られた部分がみるみる再生していくのでした。


 死人のように暗かったラモーネの顔に血色が戻っていきます。


 グリッ!


 さらにキモヲタが親指を深く押し込んだそのとき、ラモーネの目がカッと見開かれました。


「あはぁあああああああああああああああん❤」


 ラモーネ・ドルネア伯爵夫人のFカップの巨乳が、仮面の男によって切り裂かれていた服を完全に破り去って、ドルンドルンと音を立てて暴れ回ります。


 グリッ! グリッ! グリグリィィ!

 

「らめぇぇ♥ らめらめらめなぉおお❤ わらひには夫が、はひぃん♥ 夫がいるのよぉおお❤」


 ビタンビタン! 


 ラモーネの蛇体が激しく震えて地面を打ち付けます。

 

 その見事なまでのアヘ顔ダブルピースに、キモヲタたちの真上から見ていたラミアたちの顔が真っ赤に染まるのでした。


 そのような阿鼻叫喚のエロ騒動も、キーラによって完璧な耳栓と目隠しを施されたキモヲタには、まったく知る由もないことなのでした。


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