第176話 背後からのパイオツもみもみハプニング
~ 地下水道 ~
ジュワッ!
今日も今日とて、キモヲタは王都の地下水道で黒スライム退治に勤しんでいました。
最近は、復興局内に設置されたギルド出張所のクエストを受注するようになったこともあり、北西区内の地下水道を巡っているのでした。
さらに数日前から加わった仲間のおかげで、黒スライムを退治する数はこれまでの数倍にまで伸びていたのです。
「わー! 早い早い!」
キーラが大はしゃぎしています。キーラも夜目が効く方なので、地下水道をかなりの速度で進んでいたとしても、まったく恐怖は感じません。
黒髪をポニーテイルにまとめた青い瞳のラミアの小脇に抱かれたままキーラは、地下水道を爆走していきます。
「こ、怖い……」
一方、人間のソフィアは夜目が効かないため、暗闇の爆走はただ恐怖しか感じません。そのため白くて細い腕でラミアの首元にガッシリしがみ付いて目を閉じていました。
この黒いラミアは、ソープランドでキモヲタ邸を建設中の巨乳ラミア女子のひとり、ラモーネ・ドルネア公爵第四夫人でした。
ラミア女子たちの存在がキモヲタにバレて以降、彼女たちは隠れる必要もなくなったため、昼夜を問わず堂々と作業を行うようになりました。
キモヲタ邸はほぼ完成していて作業に余裕も出て来たため、昼と夜でシフトを組むようにしたのでした。
それは深夜だけの作業だと、夜中に覗きに来るキモヲタが、翌日に寝不足になってしまうため、その対策でもあったのでした。
ラミアたちが昼間の作業も行うようになってからは、キモヲタは彼女たちと昼食を共にするようになりました。ラミアが大食漢であることを聞いたキモヲタは、大量の料理を持って訪れることで、あっさり彼女たちと仲良くなったのです。
昼食の会話で、北西区に出没する仮面の男の話題が出たとき、ラモーネが喰いつきました。
「黒い仮面の妖異ですか……許せません」
ラモーネの美しい青い瞳がスッと細められ、そこに静かな怒りの焔が昇っていました。
そしてキモヲタたちが仮面の男の手掛かりを追っていることを知ったラモーネは、キモヲタたちの黒スライム退治に同行するようになったのでした。
ラモーネの参加によって、キモヲタたちの黒スライム退治のスタイルは一変しました。
「わーい! 速い速い! ラモーネさん凄ーい!」
まずキーラが楽しそうでした。
「……」
ソフィは速さには恐怖を感じていたものの、ラモーネのおっぱいクッションとお母さんのような温もりとやさしい匂いに包まれ、同時に幸せな心地にも浸っていたのでした。
そしてキモヲタは……
「ハッ! ホッ! ヤッ! タッ! アチョッ!」
ラモーネの尻尾に巻かれて持ち上げられ、そのまま宙を進みながら、真面目に黒スライム退治の作業に勤しんでいたのでした。
ラモーネが加わってからの黒スライム退治は、まずラモーネが両手にキーラとソフィアを抱えて地下水道のなかを疾走。最後尾のキモヲタが目に付く黒スライムに【お尻痒くな~る】を発動していきます。
そうして一通り地下水道をあちこち進み終えたところで、今度は来た道を戻りながら、キーラとソフィアとキモヲタで黒スライムを焼いていきます。
ラモーネのおかげで、天上にいる黒スライムも難なく焼くことができるので、作業効率は数倍に跳ね上がりました。まさにキーラが望んでいたガッポガッポ稼ぎができるようになったのです。
ちなみにこの狩猟スタイルが確立する前には、ラモーネの背中にキモヲタが跨ってしがみついて移動するという案もありました。
その案を強く主張したのはもちろんキモヲタです。背後からラモーネの細いくびれにしがみついて移動することを想像して、デュフフフというキモイ笑いを漏らしていました。
(デュフフ。不安定な状況ゆえ、思わず手がラモーネのFカップに触れてしまうことがあるやもしれないでござる。なんならガッシリと掴んでしまうことも、いやいや振り落とされないように、しっかりとモミモミしてしまうかも知れないでござるよな。デュフコポー)
当然、そんな思惑を完璧に見通していたキーラが、キモヲタに警告しました。
「キモヲタラモーネさんは、ドルネア公爵っていうアシハブア王国でも一番王様に近い貴族の奥さんなんだよ。もし失礼なことなんてしようものなら国王まで怒らせちゃうかもね」
冷気を放つキーラのジト目に、思わず震えたキモヲタなのでした。貴族にも権力にも関心ないキモヲタでしたが、アシハブア王国から名誉男爵という称号を得て、ソープランド建設においてはそれを利用させてもらっている以上、無下にできないキモヲタなのでした。
ラモーネ夫人への背後からのパイオツもみもみハプニングを断念し、しょんぼり意気消沈したキモヲタでしたが――
ラミアの尻尾に巻かれて宙に浮かびながら、地下水道を爆走するのが存外に楽しくて、
「ひゃほおぉおい! でござるぅぅ! ハッ! ホッ! ヤッ!」
大はしゃぎしていたキモヲタなのでした。
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