第166話 バルンバルンのラミア女子たちによる秘密の建築

~ 黒スライム狩り ~

 

「真実の口」で稼いだ金貨はすべてソープランド建設につぎ込んでしまったキモヲタ。


 ユリアスから受け取った賢者の石探索クエストの報酬もあって、当分のお金に困るということはなかったものの、それでもギルドで常に出ている「大ネズミ退治」のクエストを続けていました。


 首都中に張めぐされている地下水道は、広大かつ深い地下構造になっています。ドワーフ族によって作られた水をためる調圧水槽などはまるで、古の偉大な神をまつる巨大神殿のようになっており、水生種族が小さな村落を作っていたりするほどでした。


 キモヲタたちの大ネズミ退治は、道路のすぐ下にある浅い場所なので、そこまで深く潜ることはありません。


 薄暗い地下道は、ところどころに魔鉱灯が掛けられているほか、地上の光が差し込む出入り口も多く、松明なしでも十分に歩くことができました。


 この浅い階層で注意すべきは、大ネズミや大コウモリ、黒スライム、あるいは地下に隠れ住んでいる者たちです。


「あっ! 黒スライムがいたよ! キモヲタ! 焼いちゃっていい?」


「やっちゃってくだされ、キーラたん! ソフィアたん!」

 

 地下水道を歩いていた三人は、今日も「大ネズミ退治」に勤しんでいるのでした。


 ジュワワッ!


 キーラとソフィアが黒スライムめがけて松明を押し付けます。黒スライムの火に当てられた部分は、一瞬で蒸発して消えていきました。


 カラン。


 最後に核石を残して黒スライムが消滅すると、キモヲタの視界にメッセージが表示されます。


≫ 妖異「黒スライム」を討伐しました。報酬 5000EONポイント


 このEONポイントこそ、キモヲタが「大ネズミ退治クエスト」を受け続けている理由です。


 大ネズミは討伐の証として尻尾を持って帰るのですが、かさばる上にきちゃないので、いつも帰り際に必要最小限だけ狩るようにしていました。


「はい、キモヲタ兄様。核石です!」


 ポニーテイルに結んだ銀髪を揺らしながら、ソフィアがキモヲタのところに戻ってきて核石を手渡しました。


 その明るい笑顔を見て、キモヲタの胸がホワホワしました。身請けしたばかりの頃は口数が少なく、いつも表情に暗い影がさしていたソフィアでしたが、今ではキーラだけではなくキモヲタにも心を開いていました。


「疲れたでござろう。そろそろ休憩に……」


「ソフィア! スライムがまだまだ奥に沢山いるよ! キモヲタが怠けないようにお尻を蹴飛ばして連れて来て!」


「わかった!」


 そう返事してキモヲタの背後に回ったソフィア。蹴りこそはしないものの、その小さな手でキモヲタの背中を力一杯押してくるのでした。


「さぁ、兄様! 早く今日の分の核石を集めてしまいましょう! ソフィアは早く天幕に戻り、皆でイリアーズホットドックを食べたいのです!」


 グイグイッ!


「ちょっ、ソフィアたん!?」


 遠慮なしに背中を押してくるソフィアに戸惑いつつも、なんだか嬉しくなってくるキモヲタなのでした。




~ 怪しい区画 ~


 ソープランドの建設は昼夜を問わず突貫工事で続けられています。短い工程でも手が抜かれることがないように、建築ギルドから派遣されたドワーフ族が現場を取り仕切っていました。

 

 彼らは魔族に対する偏見が少ないこともあって、現場には彼らが引き連れて来た作業員の中には魔族も少なくありません。


 魔族なら誰でも雇っているというわけではなく、ここにいるのは長年ドワーフ族と交流のある者たちです。先の大戦で彼らはセイジュー神聖帝国とは対立関係にあった者たちでもありました。


 これまで様々な建築の現場で経験を積んできたオーガやオークは、ちょっとした重機並みの労働力となっており、その実力がこのソープランド建設でも発揮されていました。


 特にラミア族は膂力に優れるだけでなく、その蛇の半身を使って高所に昇って作業を続けることができるだけでなく、音を立てずに移動・作業ができるという点でも優れておりました。


 その特性を生かし、彼女たちは夜間作業に従事することが多かったのです。そのため昼間は幕舎で眠っていることが多く、キモヲタが彼女たちの存在に気づくことはありませんでした。

 

 もし気づいてしまったら、モン娘大好きキモヲタは大興奮して、夜中も眠るのをやめて彼女たちの作業を観察し続けてしまうことでしょう。


 ラミア族というのは女性しかいない珍しい種族で、ここにいるのは見目麗しいバルンバルンな者ばかりです。


 彼女たちは、作業中にバストがバルンバルンしないようにサラシを撒いているものの、そのために胸の谷間がサキュバスもかくや! と叫ばざる得ないほどに魅力的に盛り上がってしまっているのでした。

 

 もしキモヲタが気づいてしまったら、おっぱい大好きキモヲタは大興奮して、夜中も眠るのをやめて彼女たちの作業を観察し続けてしまうことでしょう。

 

 そんな彼女たちが毎晩のように建設作業に従事していた現場の一角。


 そこにはキモヲタをサプライズさせるためのシスター・エヴァが企画したある建物が建てられようとしていたのでした。



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