第163話 作ろう夢の国! その名はソープランド!
少し会わない間に、キモヲタが金貨二万枚の男となっていた上、それを北西区復興のために使おうとしていることを知ったユリアス。
北西区復興の責任者でもあるシスター・エヴァとの関係も深まっていることから、キモヲタがこれからカザン王国にとって重要人物になることは間違いありません。
このままでは、カザン王国に取り込まれてしまうことは必至と考えたユリアスは、キモヲタにアシハブア王国の名誉男爵になるよう提案します。
名誉男爵というのは、アシハブア国王からの特別な承認を受けた非永続的な称号です。個人における顕著な功績や王国に対する貢献を行ったものに対して与えられますが、一般の爵位とは異なり、恒久的な貴族の地位を与えるものではありません。
この称号は、有能な外国人や非貴族出身者との関係を強化する手段として用いられるもので、国王の正式な叙爵が行われるまでの間、若しくは特定の目的のために仮的に与えられるものです。
「なので、名誉男爵になられても、貴族としての完全な地位や権限は持たない代わりに、貴族に課せられる多くの義務や税の負担もありません」
復興局地下室で開催された第二回キモヲタ会議で、ユリアスはキモヲタに熱く語って聞かせました。
「名誉男爵となれば、王国の行事において貴族としての席次が与えられることがあります。王室の私的な集まりや公的な会議に招待されることもあるのです」
と言われても今一つ反応の鈍いキモヲタに、ユリアスはかみ砕いて言いました。
「つまり美しい貴族令嬢が数多く集まるパーティにも参加できるということです」
「よし乗ったでござる!」
そのユリウスの一言でキモヲタは即断即決したのでした。
もちろんキモヲタは以前から貴族令嬢というものに興味津々ではありました。とはいえ、もし実際に会うかどうかと問われれば、丁重にお断りしていいたことでしょう。
気の小さい自分が、高貴な身分の美女を目の前にして、まともに話すことができるとは思えなかったからです。それどころか、目を見ることさえできないかもしれません。
ところが今のキモヲタは「金貨二万枚の男」でした。つまり気が大きくなっていたので、迷うことなくユリアスの提案を受け入れたのでした。
「ありがとうございます。ではすぐに手続きを進めてきます!」
そう言うが早いか、ユリアスは地下室から飛び出すように去っていくのでした。
この名誉爵制度は男爵位までであれば、カザン王国に駐在している特命全権大使が王の代行者として半年間の仮叙爵を行うことが許されていました。
そしてユリアスが奔走すること四日。
ついにキモヲタはアシハブア王国の名誉男爵となったのでした。
~ 夢の国の建設 ~
「それでキモヲタ名誉男爵様、本当にこの計画を推し進めて良いのですね?」
シスター・エヴァの執務室で、キモヲタはキーラやエレナと一緒にシスターとの話し合いを進めていました。
シスターはテーブルに広げられている図面を刺しながら、改めてキモヲタに意志を確認します。
「キモヲタ様が『真実の口』によって稼がれた全ての金貨を、この治癒施設と保養施設を兼ね備えた巨大な設備に投資されると?」
「もちろんでござる! もう覚悟は決めているでござるよ」
そう答えるキモヲタの顔には一切の迷いはありませんでした。
「我輩は、我輩が稼いだ全ての金貨を投資するでござる! この夢の国に……」
そこでキモヲタは大きく息を吸い込んでから言いました。
「夢の国! ソープランドの建設に!」
両手を胸の前に組んだシスター・エバが、歓喜の声をあげます。
「素晴らしいことです! キモヲタ名誉男爵様に女神の祝福があらんことを! やはりあなたは、私が見込んでいたとおり女神が遣わされた聖者様だったのですね!」
シスターは素早く両手を動かして、女神ラーナリアへ感謝の祈りを捧げました。
「北西区の人々に治癒やレジャーを提供しながら、そこで雇用を生み出し、かつ子どもや大人にも教育の機会まで与えてくださるなんて! 教会もキモヲタ様に喜んで協力させていただきますわ!」
テーブルに置かれている図面には、治癒施設と温泉旅館、そして大人のレジャー施設が描かれていました。
ヒーラーによる治療と薬草による処方箋の提供が行われる医療のための治癒施設。リハビリと保養を兼ねた全年齢向け温泉旅館。そして先の二つから少し離れた場所に大人しか立ち入れないレジャー施設がピンクのインクで描かれていました。
そして今回、キモヲタが全ての金貨を投資して、なお後悔することがなくなった理由は、このピンクのインクに描かれたものにありました。
そのピンクで示されたものこそ、キモヲタのキモイ肝いり施設だったのです。
「キモヲタ様! ソープランドの建設、共にがんばりましょう!」
「おぉ、シスター殿! 感謝するでござるよ!」
キモヲタとシスターがガッシリと握手を交わしているその背後で、Gカップのエレナは、艶やかな赤髪をいじりながらほくそ笑んでいました。
「ふふ♪ そうこなくっちゃ! 私も色々と儲けさせてもらわないとね」
クスクスと笑う度にたわわに揺れるエレナのGカップなのでした。
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