第155話 異世界ハーレム(但しロリ紳士枠)

 シスター・エヴァとのウィン=ウィン契約が成立して以降、キモヲタとキーラは元教会である北西区復興局に泊まり込みで、【足ツボ治癒】を行うことになりました。


 シスターとキーラとの会話から、ドがつくブラック企業のようにひたすら酷使されることを覚悟していたキモヲタ。


 実際に治癒を始めてみると、キモヲタ自体は意外と楽チンなお仕事であることに気が付きました。


 午前の二時間、「真実の口」に訪れる北西区住人の傷病者を治癒。お昼休みを取って午後から三時間はセレブの治癒を行って、その日のお仕事は終了なのでした。


 しかもセレブ対応のうち二時間ほどは、シスターとセレブの丁々発止の交渉。キモヲタの治癒は実質一時間もありません。


「真実の口」の裏側で待機する間は、ノエラとカミラがキモヲタに飲み物を運んだり、肩を叩いたり、かいがいしく世話をしてくれるのです。


 治癒が終わった後は、夕食までの間、キモヲタはシスターが用意した客人用の部屋で休憩を取ります。


 その部屋では―― 


「どうキモヲタ? ここが気持ちいいの?」

「キモヲタ兄さま、私が兄さまを踏んでしまってよいのでしょうか」

「キモヲタ兄ちゃん、これがいいの?」

「キモヲタ様、本当にこれでいいのですか」


「ふぉおおお! 極楽でござるぅぅ! ふぉおおおお!」


 ベッドの上にうつぶせに寝転がっているキモヲタを、四人の美少女(一部幼女を含む)が取り囲んで身体をマッサージしていました。


 キモヲタの背中に跨ったキーラは、両手を使って首元から肩甲骨に掛けてグイグイとマッサージを続けていきます。


「ふぁはあぁあああ! キーラタンのマッサージ最高! 腰に感じるキーラタンの臀部のやわらかみ最高!」


「で、でんぶ?」


 ソフィアはベッドの端から壁に手を付いて、キモヲタの足裏を踏み踏みマッサージをしていました。


「ソフィアたんの踏み踏みも最高でござるぅぅ! 我輩の【足ツボ治癒】の百倍心が満たされるでござるよぉお!」


「キモヲタ兄様……ほ、本当にこれでいいのですか?」


 さらにキモヲタの左腕と右腕を、もみもみする限りなく幼女に近い少女ノエラとカミラ。


「キモヲタ兄ちゃん、これで元気になる?」


「キモヲタ様、元気になってください」

 

 小さな手が一生懸命にキモヲタの手をモミモミするのでした。


「ふぉおおおおお! 幼女のマッサージキタコレ!」


裁判官:これより異端審問を開始す……


(やかましいでござる! これは我輩の過酷な労働に対する正当な報酬でござる! しかもこれは彼女たちから希望してきたことでござるよ! さらに、これはあくまで疲労回復のためのマッサージ! 我輩の心に一切の邪はござらぬ!)


 キモヲタは、スタートしかけた脳内異端審問を吹っ飛ばしてしまったのでした。


「ふはは! 異端審問もキャンセルしてやったでござる! これで我輩のハーレムは成れり! 我がハーレムは成れり!」


 どこまでも邪な心のキモヲタなのでした。


「異世界に転移とくればハーレム展開が必須でござろうに! これまで我輩の周りにいたハーレム候補たちときたら、我輩のことをオークと勘違いしている残念美人ばかり! しかし行動を共にしているうちにやがて溶けてゆく心! 育まれていく好感度! そしてエッチイベント! そんな期待を抱き続けていた我輩が間違っていたでござる!」


 なにやら語り始めたキモヲタでしたが、枕に顔を埋めているため、周囲には「フゴフゴフゴ」と言っているようにしか聞こえなかったのでした。


「いまこうしてロリ天使たちが我輩のことを大事に思って、やさしくボディタッチしてくれている今これこそ、我輩のハーレムだったでござる! エルフがなんぞ! Gカップがなんぞ! 男の娘はちょっとまだお尻と心の準備が……なのでなんぞ! 今このロリ天国こそが、我輩の異世界ハーレムだったでござる!」


「ちょっとキモヲタ、うるさいよ! 静かにして!」


 キーラがキモヲタの背中の上で、身体を上下させてキモヲタに体重をかけます。


 抗議の意志を示したつもりのキーラでしたが、それはキモヲタにとってはご褒美以外のなにものでもないのでした。


「ふぁぁああ! 背中にキーラたん、足にソフィアたん、両腕にノエラたんとカミラたん! これが天国でなくてなんでござろうか。Gカップ美人やエルフの美女とか巨乳ラミアとかじゃなきゃハーレムとは認めないなどと、そんな狭い了見のバカどもをあざ笑ってやりたいでござるな!」


 ちょうどこのとき、ラーナリア大陸から遠く離れた海を行く船の上で、腕に幼女を抱えているひとりの少年が大きなくしゃみをしていたのでした。


「ふあぁあああ! ボクもう疲れちゃったよ……」


 キモヲタの背中に倒れ込んだキーラは、そのままキモヲタの隣に転がって眠り込んでしまいました。


 二つのベッドをくっつけてダブルベッドにしていたので、キーラはのびのびと身体を伸ばして眠ることができました。


「あっ、お姉ちゃん、私も寝る……」


 キーラの背中にくっつくようにしてソフィアがベッドの上に寝転がりました。


「あっ、わたしも寝る!」

「わたしも……」


 そうしてノエラとカミラもキモヲタの隣で眠りに入るのでした。


 

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