第154話 キモヲタ、労働基準監督署へ駆け込む!(ない)
シスター・エヴァのウィン=ウィン契約の申し出に対して、ガッチリとその手を握ったのはキーラでした。
「それでは報酬の取り分は、キモヲタ様が6割ということで……」
「えぇえ!?」
そのまま話をまとめようとするシスターにキーラが食いつきました。
「そもそもキモヲタの治癒がなきゃ成り立たないんだし、報酬は全部キモヲタのものでしょ! シスターだったそんなに若返ったんだし、本当ならシスターからも報酬を貰いたいところだよ! それにボクたちは、そのお金で南橋に立ってる子どもたちを助けなきゃいけないの!」
キーラという思わぬ伏兵の登場に慌てるシスター・エヴァ。彼女としてはこの契約による利益で、近隣に新しい建物を立て、復興局の機能をそこに移したいと考えていたのでした。
「で、では7対3ではいかがでしょう? 今は復興局として使っているこの教会を本来の役割に戻すために、私たちも多くのお金を必要としているのです」
「そんなの話にならないよ! だってキモヲタはここでずっと治癒することになるんだよ!」
キーラの発言にギョッとしたキモヲタ。
「えっ!? わ、我輩、ずっとここに拘束されるのでござるか!?」
「そうだよ、シスター! キモヲタは宿にも戻らずに、ここでずっと働くことになるんだよ! それなのに3割も報酬を持っていこうなんて、そんなの酷いよ!」
言葉の加減を知らないキーラの言葉は、シスターの良心にダメージを与えました。その巻き添えを喰って、キモヲタまでダメージを受けていました。
(我輩としては、3日毎でも辛いので、どちらかというとここに来る回数を減らして欲しかったでござるよぉお)
そんなキモヲタの心の内を知らない二人は、交渉を進めていきます。
「そ、それでは8対2で! その代わり、キモヲタさまたちのためのお部屋を用意します! それとノエラとカミラを小間使いとしてお付けします。二人ともキモヲタ様に大変な恩義を感じていて、お礼をしたいと申しておりました。きっとよく働いてくれるはずです!」
「キモヲタのサポートならボクとソフィでやるからいらない! ねっ!」
そう言ってキーラから顔を向けられたソフィアは、ブンブンと首を縦に振りました。
(ここで泊まる? ここは教会でござるよね? こんなところに泊まることになってしまったら、ピンクのふにふにタイムが確保できんではござらんか!)
さすがにエロマイスター・キモヲタといえど、人々が救いを求めて集う神聖な教会で、ピンクのふにふにタイムを過ごすなんてことはできそうにありません。
(なんとしても、宿に帰って休む時間は確保せねば。さて、どうやって二人を説得すればよいでござろうか……)
などとキモヲタが考えていたとき、キーラとシスターがお互いの両手をガッシリと握りました。
「それならいいよ! 契約成立!」
「はい! ありがとうございます。キーラ様!」
「えぇぇえ!? 我輩、何も聞いてないでござるが!?」
交渉の結果、最初はキモヲタ側とシスター側で7対3の報酬の割合だったところを、キーラによって見事に9対1にまで持っていくことができたのでした。
シスターの目的は、キモヲタの【足ツボ治癒】の稼ぎで、新しい復興局を建設すること。
そのため今回の契約期間は、復興局の建設費用に目途がつくまで。
報酬のお金はシスター側の取り分は1割。ただし
そしてこれらの交渉において、キモヲタの意志は一切スルーされていたのでした。
最初の想定とは違ったものの、復興局の建設に目途がついたシスターは、その大きな胸に手を当てててホッとため息をつきました。
キーラは、キモヲタのマネージャーとして大戦果を挙げたことで鼻を高くしており、ドヤ顔ってキモヲタを見下ろしていました。
「ボクたちの部屋にはふかふかのベッドを用意してくれるって! それにキモヲタが足を治したノエラと、目が見えるようになったカミラも、ボクたちのサポートについてくれるよ! よかったねキモヲタ!」
両手に腰を当ててドヤ顔ってるキーラを、尊敬のまなざしで見つめるソフィア。
「キーラお姉ちゃん、すごい!」
そして、シスター・エヴァのウィン=ウィン契約において、もっとも要となるキモヲタは……
(教会に泊まり込んで24時間治癒体制だと……)
床にorzしているのでした。
やがてプルプルと震え始めたキモヲタにキーラが声をかけました。
「教会に泊まるなんて不思議だね!? なんだか楽しいよねキモヲタ!」
「ノォオオオでござるぅぅ! 我輩、働いたら負け教の神を信仰するものでござれば、他宗教の教会に泊まるなんて絶対に嫌なのでござるよぉおお!」
ドドドドッ!
と音を立てながら、復興局の外へと走り去っていくキモヲタなのでした。
「キモヲタ! どこいくの!?」
「労働基準監督署でござる! 不当で過酷でオ〇禁な
「よくわかんないけど! 夕方までには戻ってきてよ!」
キーラの声に、すでに外に走り出ていたキモヲタから返事が聞こえてきました。
「リョウカイでチクショーでござるぅぅ!」
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