第140話 敏腕アダルトショップ店長と顧客モデル
「絶対にオホ声が出ちゃう! 最狂にぶっとい夜の恋人ヘラクレス50本お買い上げありがとうございましたぁ~♪」
アダルトショップ「ナイトタイムラバー」のカウンターに立つ巨乳アルバイトの遠野雫(22歳)。
お客様の大きなキャリーカートにヘラクレスや他の商品を積み上げるのを手伝った後、見送りの際に感謝の声をあげたのでした。
「どどどど、どもぉ……」
野球帽&サングラス&マスクのお得意様は、雫の言葉にビクリッ! と身体を震わせ後、店の前にある公園を全速力でカートを引いて走り抜けていくのでした。
お得意様の女性客を見送った後、雫は二階に上がって商品開発中の店長に売り上げの報告に向いました。
ガラッ!
「店長~♪ ヘラクレス50本とその他もろもろをお客様がお持ち帰りになりましたよ~!」
「うぉおおい! いきなり入ってくんじゃねー! いつも言ってるだろーが!」
「ププッ! とりあえず、パンツ穿いてください~♪ たとえそんなのでもセクハラですよ~♪」
そういって雫が、指先で小さい輪っかを作って、一流企業を脱サラして大人のおもちゃ販売で一旗あげようとした佐藤隆作(45歳)の股間に向けました。
「その指はヤメロ! 俺のチキンハートが傷つくだろうが!」
「そういいながら、ポークビッツをフリフリしながらセクハラを続ける店長、マジぱねぇっす~♪」
とんでもない絵面ですが、この二人未だ大人な関係に陥ってはいません。その理由のひとつが、隆作が仕事に傾ける情熱。常に商品開発に全力を注いでいる隆作は、常に研究のために様々な商品を試している為、起きている時間の大半を賢者モードで過ごしていたのです。
今も今とて新商品を研究して賢者モードに入っていたので、いくら雫の巨大なIカップがたわんたわんと目の前で揺れていたところで、隆作は賢者モードのままでした。
雫が腰を下ろして、パンツを引き上げた隆作がズボンを履くのを手伝いながら、
「店長の予想通り、今回も食べ物とか日用品が出ましたね~♪」
と、最近ずっと売れ行き商品を的確に予想できている店長を褒めました。
「ということはあの客、またリヤカーみたいにでっかいカートで商品を持ち帰ったか」
「ですです~♪ 猛暑日なのにサングラスとマスクで、ちょっと心配しちゃいました~♪」
「わざわざ商品を取りに来なくても、宅配便を使えばいいだろうにな。まぁ、いろいろと事情があるんだろうが……」
「詮索しない方がいいですよね~♪」
ネットで注文された商品を、支援精霊がサングラスとマスクで直接受け取りに来る理由……。
実際のところは、神ネコ配送便が「ナイトタイムラバー」と契約を結んでいないことが原因でした。そのためキモヲタの支援精霊は、受け取った商品を職場にある転移装置を使ってキモヲタのところへ送っていたのです。
もちろん支援精霊が申請しさえすれば、神ネコ配送と店の契約を進めることは可能でした。
しかし、支援精霊には申請を出すつもりなど微塵もなかったのでした。
いつも職場を訪れるイケメン神ネコ配送員に、ほのかな恋心を抱いていた支援精霊。もし契約が締結された場合、彼がナイトタイムラバーの配送担当になるのを支援精霊は知っていました。
イケメン神ネコ配送員が、あのアダルトショップの爆乳店員、遠野雫と接触するようになることは断じて阻止したい支援精霊。
さらに契約の場合、毎月このイケメン配送員から手渡されることになる配送品の明細書。いかがわしい商品名が並ぶ一覧表を、彼から受け取るのも断固として拒否したかったのです。
そんな極めて私的な理由から支援精霊は、神ネコ配送とナイトタイムラバーの契約申請を出していなかったのでした。
そのような事情や、そもそも支援精霊や神ネコ配送の存在さえも知らない佐藤隆作。
しかし、さすがは元一流商社のエリート社員。最前線でバリバリ働き続けて鍛え抜いた嗅覚から、キモヲタのニーズを的確にとらえていたのです。
「それにしても、最近の店長はすごく調子がいいですね~♪ アダルトグッズ以外は、どの商品が売れるか分かってるみたいですぅ♪」
ズボンを履き終えた隆作は、ドヤ顔を雫に向けました。
「アダルトグッズの場合は、どうしても俺の趣味と性癖のせいで予想が偏向してしまうからな。それ以外なら、わりと冷静な分析と判断ができるんだよ」
「どんな分析してるんですかぁ~♪」
「うむ。仮定的な顧客モデルを構築して、注文毎にそのモデルに微調整を加えていくことで、売れる商品を推測している」
「ん~、つまりどういうことですかぁ♪ 教えてくださいぃ~♪」
無意識に胸元を寄せて、甘え声になる雫に、思わず賢者モードがくずされそうになった隆作。コホンッと咳払いをして、邪念を払って説明をはじめるのでした。
「俺が想定している顧客は異世界に転移したキモいオタクのDTだ」
「ほへぇ!? オタクですかぁ♪」
雫の頭に大きなクエスチョンマークが浮かびます。
「まぁ聞け。これは実際にそういう奴がいるかどうかではなく、あくまで売れ行き商品を予測するための空想の存在でしかない。今のところ、デブのキモヲタというモデルを使うと、予想の精度が増しているというだけのことだ。それが適切な予想をもたらしてくれるのであれば、モデルが犬耳娘であろうが男の娘クッコロ姫騎士だろうが関係ない」
「な、なるほどぉ~♪」
感心して頷く雫のIカップがバルンバルン揺れるのを見て、思わずツバを呑み込む隆作。賢者モードが崩されても、そのIカップに手を伸ばそうとはしませんでした。
大人の清い関係の二人ですが、雫のエロ挑発ボディに隆作の理性が揺らぎそうになるのはいつものことでした。
しかしそれでも、いつも雫のIカップに伸びようとする手を最大の自制心を発揮して止めるのは、彼女の両親と隆作が同世代であるということ。しかも雫の両親とは面識があり、なんなら夫婦揃って買い物にも来てくれたことがあったというのが最大の理由なのでした。
理性を取り戻すために再びコホンッと咳払いをした隆作。
「そ、それでだな。もしも、そのDTのキモヲタデブが異世界に連れていかれて、唯一できることがうちの店の通販を利用することだった仮定する。そう考えて商品を選ぶと、売れる商品がかなり正確にわかるってわけだ」
「ほへぇ~♪ さすが店長ぉ、凄いですぅ!」
一流企業を辞めて、アダルトショップを開いた佐藤隆作。
実際、恐らく本人やIカップの雫が想像する以上に凄い男だったのでした。
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