第138話 親指はずし再び! 二度ネタ上等でござる!
特に危険な戦闘も危険な事態も発生することもなく、ドド=スライム討伐を終了したキモヲタたち。
首都に戻るったキモヲタは、ヘラクレス50本をネットショップで注文し、エレナに手渡します。
「エレナ殿、これを売ってお金を作ってくだされ」
大きな箱にびっしりと詰められたヘラクレスを見て、眉根を寄せるエルミアナ。キーラと言えば、これが全てお金に変わると聞いて、もはやヘラクレスが金貨にしか見えなくなっているのでした。
「キモヲタ! これだけお金があれば、あの娘だけじゃなくて、もっと沢山の女の子を『みうけ』できるんじゃない? もしかして、女の子ぜ~んぶ『みうけ』できる?」
「さすがにそれは無理でござるよ。確かに今回のクエストでたくさんのEONポイントが得られたでござる。だからと言って何でも思いのままにできるような金持ちになれるわけではござらん。まずは、あの女の子を助けることからですぞ」
「そうだね! まずはあの娘だね……そういえばあの娘の名前を聞いてなかった!?」
「そう言えばそうでござったな!?」
自分たちが助けようとしている少女の名前も知らなかったことに気がついて、驚くキモヲタとキーラなのでした。
そんな二人の様子に飽きれるエレナ。
「なんだい!? 名前も知らない娼婦のために、わざわざ化け物スライムを倒したって言の? ほんっとお人よしにもほどがあるわ」
はぁ……と深いため息を吐いてから、エレナは言葉を続けます。
「まぁ、おかげで私も儲けさせてもらえるし……いいわ。ヘラクレスを金貨に換えたら、その女の子の身請けができるように紅蝶会に口利きしてあげる。貴方たちが直接交渉するよりもスムーズに話が進むはずよ」
「おぉ! ありがとうござるエレナ殿!」
「エレナ! ありがとう!」
エレナの提案に感謝するキモヲタ。キーラといえば、エレナのGカップに抱き着いてその谷間に顔を埋めておりました。
それを見て羨ましいという思いが9割でしたが、残り1割でキモヲタはエレナに感謝していました。
娼婦の少女の身請けといっても、具体的にその手続きについて何も知らないキモヲタ。その交渉を始めるために、南橋でひと悶着くらいあるのだろうと覚悟していたからです。
エレナへ感謝の言葉と共に、そうした懸念を持っていたことを伝えると、
「なら私に任せて。南橋に行くときは私も同行するわ」
と自ら協力を申し出てくれたのでした。
~ 北西区クエスト ~
ヘラクレスの換金が終わったのは、それから一週間後のことでした。
ちょうどまた指示書を届けるクエストが出されていたので、キモヲタたちはそれを受注して、北西区へと出発することにしました。
「今度は、南橋を通るし、みんなもいるから危ないことはなさそうだね!」
エレナの馬車では御者を務めるエレナの隣にキーラ、荷台にはエルミアナとキモヲタが腰かけています。
「ンメェェェエエエエ!」
キーラに応えるようにロバのキンタが大きな声を上げました。
~ 北西区復興局 ~
南橋を通ったからか、今度は冒険者パーティーを組んでいたからか、復興局には何のトラブルもなく辿りつくことができました。
シスター・エヴァを待つ間、キモヲタたちは子どもたちのところに顔を出していました。子どもたちは何人かが入れ替わっているようで、以前には見かけた幾人かの子の姿がなく、逆に新しい子どもたちの姿がありました。
「おぉ、ノエラ殿はご健在でしたか!」
足を引き摺った少女がキモヲタを見つけて満面の笑顔になりました。キモヲタの声を聞きつけて、盲目の少女も笑顔を浮かべるのでした。
「あっ! 指が外れる魔法使いのお兄ちゃんだ!」
以前、「親指ずらし」の手品を見せてもらった子どもたちも、キモヲタに気が付くと大喜びで近寄ってきました。
「指が外れる魔法使い? キモヲタ殿が?」
子どもたちの様子を見たエルミアナが怪訝な顔をキモヲタに向けました。
「ふふふ。それはですな……」
キモヲタは、子どもたちとエルミアナを前にして、再び「親指ずらし」の手品をやってみせました。
「わーっ! 親指がとれたー!」
「やっぱすげぇよ! 兄ちゃん!」
「痛くないの?」
はしゃぐ子どもたちの姿を、すでにキモヲタからネタ晴らしを受けているキーラと、似たような手品をいくらでも知っているエレナは、生暖かい目を向けて笑っていました。
「はわわわ! キモヲタ殿!?」
故郷の森やアシハブア王国の冒険者の間で、明けの明星と称えられし金髪緑眼の美しきエルフ、エルミアナ――
「指が! 指が外れてますよ! だだだ大丈夫なのですか!?」
――が目をひん剥いて驚いていました。
エルミアナが大慌てでふところからポーションを取り出したところで、背後から声が掛かります。
「なんですか騒がしい! ここには病気や怪我で休んでいる人もいるのですよ!」
シスター・エヴァが腰に両手を当てて、子どもたちにしかめつらを向けていました。
「「「ごめんなさーい」」」
子どもたちが散った後、シスター・エヴァはキモヲタの顔を見てハッとした表情を浮かべます。
「あなたは確か、前にも来ていただいたキ……キモイ方?」
「キモヲタでござるよ、シスター。また指示書を持ってきたのでござる」
「そうそう。キモヲタさんだったわね」
キモヲタが差し出した指示書を受け取ったシスター。
その場で内容に目を通すと、その表情を暗くするのでした。
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