第136話 美女たちがヌルヌルのぐっちゃぐちゃでござる

 女神クエスト「ドド=スライムの討伐」で、洞窟に訪れたキモヲタ一行。


 その入り口付近にまで、黒スライムがうようよと湧き出ていました。


「うえぇえ……壁にも天井にも張りついてるよ。もう見慣れたかと思ってたけど、これだけうようよういるとやっぱり気持ち悪いね」


 そう言いながら洞窟を覗き込むキーラの背後から、エルミアナが内部の様子を伺います。


「これは……まるで冥界の入り口のようですね」


「キモヲタ様、こ、ここに入るのですか?」


 ユリアスが不安な顔をキモヲタに向けます。


「その洞窟の中がどうなってるのか知らないし、見るつもりもないけど、私は絶対に入らないからね! 私が冒険者じゃないってこと忘れないでよ!」


 馬車の上から、エレナがキモヲタたちに向って叫びます。


「メェェエエエエエ!」


 キンタもとりあえず会話に参加しようと鳴き声を上げました。


 パーンッ!


「はーい! みなさん、我輩に注目でござるよぉ!」


 キモヲタが両手を叩くと、全員の視線がキモヲタに集まりました。


「これから洞窟のスライムを殲滅にかかるでござるが、その前に皆にお願いしたいことがござる」


 キモヲタのお願い。それは、今回のクエストについては全員がキモヲタをパーティーリーダーと認めて欲しいということでした。


 元々、今回のクエストではキモヲタがリーダーだと考えていたユリアスが、キモヲタに疑問を投げかけます。


「私たちは、元々キモヲタ様がこのクエストではリーダーであると思っていたのですが、改めて確認されるのは何か意味があるのでしょうか」


「もちろんあるでござるよ。とりあえずユリアス殿、我輩をこのパーティーのリーダーと認めてくださいますかな?」


「はい。キモヲタ様をリーダーと認めます」


 その瞬間、キモヲタの視界にメッセージが表示されました。


≫ ユリアス・ヴァルガーがキモヲタのパーティーに入りました。有効時間は24hになります。残り時間 23:59:57


 メッセージを確認したキモヲタは、ユリアスたちに説明します。


「我輩をリーダーと認めていただけると、皆様方は我輩のパーティーに入ることになるのでござる。そうすると、これから24時間は誰がスライムを倒しても我輩にEONポイントが入るのでござるよ」


「えーっ! キモヲタだけ得してズルイー! ボクもEONポイントが欲しいー!」


「そう言われましても……。そもそもキーラたんがEONポイントを貰ったとしても、使いようがないでござろう」


「ううぅ、確かにそうだけど。そうだけどさ……」


「ふふふ。頑張ったキーラたんには、ちゃんとご褒美にエロコス衣装や新しいシャンティをプレゼントするでござるよ。もちろん、ユリアス殿やエルミアナ殿にも何かプレゼントさせていただくでござる」


「うーっ。まぁ……それなら……いいかな」


 話が落ち着いたところで、キーラとエルミアナもキモヲタのパーティーに入る確認を済ませました。


「それじゃ。これからスライム退治と行くでござるよ。なに危険はござらん。ただ松明でジュージュー焼いて行くだけの簡単なお仕事でござる」


 そう言ってキモヲタは松明に火をともしました。


「それでは我輩が先行して、目に入る端からスライムを無力化していくでござるから、各々方は松明でジュージューとスライムを焼いて行くでござるよ」


 松明をともしたエルミアナがキモヲタに確認しました。


「いま一度確認させて欲しいのですが。キモヲタ殿の【お尻かゆくな~る】で、スライムの消化機能が働かなくなるというのは、間違いないのですよね」


 エルミアナのエメラルドの瞳をまっすぐ見つめ返しながら、キモヲタは堂々と答えました。


「間違いござらん。なんでしたら、我輩が消化されないのを確認してから付いて来てくださっても構いませんぞ。では……」


 ハッ! ホッ! ヤッ! トッ! シュッ!


 キモヲタは【お尻かゆくな~る】を発動しながら、洞窟の中へと足を踏み入れてきました。


 ハッ! ホッ! ヤッ! トッ! シュッ!


 キモヲタから気合を向けられたスライムは、一瞬の後、その体表面を泡立たせてプルプルと震え始めます。

 

「それ、ジューッ!」

 

 キーラが泡立つスライムに駆け寄って、松明の火を押し当てます。スライムに火が触れるとジュッと音を立てて、火の当たった部分が消滅しました。


 スライムの核が露わになると、キーラは短剣の柄でそれを叩き割ります。


≫ 黒スライムを討伐しました。報酬:5000EONポイント


「キーラたんグッジョブ! 5000ポイントゲットでござるよ!」


「やった! それ次っ!」


 ジューッ!


≫ 黒スライムを討伐しました。報酬:5000EONポイント

≫ 黒スライムを討伐しました。報酬:5000EONポイント


 キモヲタとキーラが次々と黒スライムを消滅させていくのを見て、ユリアスとエルミアナも二人に続きました。


 ハッ! ホッ! ヤッ! トッ! 


 ジューッ! ジューッ! ジューッ! ジューッ! 


≫ 黒スライムを討伐しました。報酬:5000EONポイント

≫ 黒スライムを討伐しました。報酬:5000EONポイント

≫ 黒スライムを討伐しました。報酬:5000EONポイント

≫ 黒スライムを討伐しました。報酬:5000EONポイント


「おぉ、さすがパーティーだと報酬の入りが違いますな! キーラたん、いまEON

ポイントがガッポガッポ入ってきているでござるよ!」


「わーいっ! ガッポガッポだぁ!」


 キモヲタは【索敵レーダー】で黒スライムの存在を確認しながら、一匹も逃すことなく【お尻かゆくな~る】を仕掛けていきます。


「ガッポガッポでござるぅ!」


「ガッポガッポ! ガッポガッポだ! わーいっ!」


 その瞳に金貨を浮かんでいるキモヲタとキーラ。


 無力化されたとはいえスライムの一部が、ぼたぼたと身体に落ちてくるのも気にせず松明を振るいます。


 テンションアゲアゲの二人に当てられて、そのうちエルミアナやユリアスまでガッポガッポ祭りに参加しているのでした。


 身体中がヌルヌルのぐっちゃぐちゃになった、キモヲタとケモミミ少女と、美しきエルフと男の娘姫騎士なのでした。


 








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