第122話 キーラたんのその穴、最高に具合が良いでござるよ
カザン王国の首都アズマークの朝は喧騒と共にはじまります。
大通りでは24時間、物資を運ぶ馬車や人々の往来が絶えることがありません。キモヲタたちが宿泊している宿は、大通りの裏手でしたが、深夜でさえまったく人がいなくなるということはありませんでした。
早朝ともなれば、人々も遠慮なく大声を出して、ガタガタゴトゴト音を立てながらそれぞれの作業をはじめます。
昨日の買い物で疲れ果てたキモヲタ。昨晩は宿の一室でぐっすりと眠りに落ちていたのですが、あまりにも外がうるさいので、目が覚めてしまいました。
「ぐぬうぅ。やかましいでござる。我が眠りを犯すべからず~」
あまりに騒がしくて眠れないので、呪いで王都を破壊してやろうと呪印を結び始めたキモオタ。今なお現役の中二病患者である、その仕草はなかなか堂に入ったものでした。
「キモヲタ何してるの? 顔をしかめるくらいに漏れそうなら、早くトイレに行っておいでよ!」
「おはようでござるよ、キーラたん! これはウ〇コではござらん! 王都を破壊する呪いをかけているところでござる」
「なんでそんなことするの!? そんなことしたら、今日お出かけできなくなっちゃうでしょ!」
既に目が覚めていたキーラは、昨日キモヲタに買ってもらった新しい冒険者衣装に身を包み、すぐにでも出かける気が満々のモードに入っていました。
「えっ……今日も出掛けるでござるか。我輩、どちらかというと今日は部屋に引きこもってまったり(アダルトネットショップ閲覧)したいのでござるが……」
「もう! 昨日、エルミアナと約束したよね!? 三人であちこち見て回ろうって! ホラッ! これキモヲタが買ってくれた服だよ! ボクこれで街を歩いてみたい!」
キーラは、買ってもらった新しい冒険者衣装をキモヲタに見せるために、その場でくるりと回転しました。
上半身は柔らかな淡褐色の綿素材でできた長袖シャツで、胸元には細かな刺繍が施されています。
深緑色のスカートは膝上15センチほどの長さで、動きやすさを重視しつつも、可愛らしさを失わない絶妙なバランスです。
しかし、このスカートの真骨頂は、獣人や亜人の尻尾用に開けられた穴でした。その穴は、単なる切れ込みではなく、丁寧に縫製された楕円形の開口部で、縁には柔らかな革素材が使われています。
これにより、尻尾を通した際の擦れを最小限に抑え、快適な着心地を実現していたのでした。さらに、穴の周囲には細かなプリーツが寄せられており、尻尾の動きに合わせて自然に広がるよう工夫されていました。
スカートの下には、同じ深緑色のショートパンツが付属していて、激しい動きをためらわずにすむ安心感をキーラに与えてくれます。ただキモヲタにとっては、生シャンティを隠すショートパンツは、なくても良いものなのでした。
足元には、しっかりとした作りの茶色のブーツ。軽量で柔軟性があり、長時間の歩行にも耐えうる設計です。
全体的に見ると、この衣装は単なる可愛らしさだけでなく、冒険者としての機能性も十分に考慮されているものでした。
特に尻尾用の穴の質の高さは、キーラを虜にするに十分でした。
「ねえ、キモヲタ! 見て見て! この尻尾の穴、すっごく良いんだよ! ちっとも痛くないし、動きやすいし!」
「ふぉおおお! キーラたんマジかわゆす! その尻尾を目一杯ハスハスしたいでござるぅ!」
「ダメー!」
アッカンベーをするキーラの超高濃度マジかわゆす粒子によって、キモヲタは萌え死んでしまいました。
「ハッ!? キーラたんが可愛すぎて、いま我輩、死んでいたでござる!」
「何言ってるのか全然わかんないけど、お出かけするなら、ずっとボクの尻尾を見ていられるよ!」
「さぁ! いますぐ出発するでござるよ! エルミアナ殿! エルミアナ殿はいずこぉお!」
ベッドから飛び起きて部屋を飛び出そうとするキモヲタを、慌ててキーラが引き留めました。
「ちょ、キモヲタ待って! 下着で外に出ちゃ駄目! 服着て!」
~ 朝食 ~
「キモヲタ様、私はしばらく大使館詰めになりそうです」
朝食の席で、ユリアスは今日も大使館に出かけることをキモヲタに伝えました。
「確か魔鉱石の採掘権の競売に参加するのでござったか?」
「競売に参加するのは事実ですが、その話は私たちのクエストを他の領主に悟られないようにするためのカバーストーリーなので、実際に私がでむくわけではありません」
現在のユリアスの任務は、他の地域に賢者の石の探索チームとの情報交換を行うことでした。ユリアスの他に2つのパーティーが、それぞれ別の地域で賢者の石の探索を続けています。
彼らとアシハブア王国大使館で合流するため、他のチームが到着するまでの間、ユリアスは大使館と近くにあるフェイルーン子爵の御用邸から離れられない状態でした。
昨日、エルミアナと一緒に馬の売却に向ったエレナは、当初予想以上の好条件で取引を成立させることができたこともあって、とてもご機嫌でした。
Gカップの胸元を惜しげもなくさらしながら、エレナはキモヲタに話しかけました。
「ねぇキモヲタ。例のアレ5つほど用意できる? 売り込めそうなところに目星がつけておいたから、明日辺り持っていきたいの」
「デュフフ。例のアレでござるな。了解でござるよ」
「ふふふ」
エレナとキモヲタは怪しげな笑みを浮かべて、何やら企んでいるような雰囲気を醸し出していましたが。電動ハリボテのヘラクレスを売って、一儲けしようとしていることは、ユリアスもエルミアナも既に承知のことでした。
「ねぇ! ねぇ! キモヲタ! レイノアレって何!? 食べられる物? 美味しいの? ねぇねぇ、教えて! 教えて!」
「デュフフ。例のアレは、キーラたんにもいつか食べられるかもしれませんが、その前にキーラたんには我輩の聖剣をば……」
ドスッ!
キーラの純心を守るべく、エルミアナがキモヲタのお腹にマジエルミアナパンチを叩き込みます。
「ぐぼぇあっ!?」
「キモヲタ大丈夫!? それでレイノアレって何? ねぇ、教えて! ねぇ!」
何も知らないキーラは、床にうずくまるキモヲタを心配しつつも、好奇心が先に立ってしまうのでした。
「ぐぬぅ。キ、キーラたそ……い、いま我輩を揺するのは止めてくだされ。朝食が出てしまいそうでござる……」
正直に話そうにも、目の前にいるエルミアナの形相があまりにも怖いものですから、結局キモヲタはお茶をにごすのでした。
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