第97話 エレナの乱舞するバルンバルン

 エレナの足裏治療が始まりました。エレナの全身は、キモヲタのスキル発動によって暖かい緑色の光に包まれています。


「んはぁぁあああああああん♥」


 キモヲタがエレナの足裏に親指を押し込むたびに、甘い喘ぎ声が響きます。


 グリグリッ! グリグリッ! グリグリッ! 


「あはぁああん♥ ああん♥ うほおぉお♥」


 アヘ顔ダブルピースで喘ぐエレナは、キモヲタの手の動きに合わせて身体をのけぞらせると、


 バルンバルン! バルンバルン! バルンバルン! 


 その狂暴なバストが大きく弾むのでした。


 裸のエレナにユリアスが毛布をかけるものの、


 バルンバルン! バルンバルン! バルンバルン! 


 乱舞するバルンバルンが毛布を振り払ってしまのです。


 通常モードのキモヲタが見たら、鼻血の池ができるに違いないエロシーンが繰り広げられていました。


 しかし、耳と目を塞がれたキモヲタは、そんな目の前の状況に気づくこともなく、ただ黙々とエレナの足裏を揉み続けているのでした。


 グリグリッ! グリグリッ! グリグリッ! 


「やん♥ らめ♥ らめぇえええええ♥」 


 キモヲタの手から逃れようと、エレナが身体をのけぞらせるたびに、キモヲタはエレナの足裏をしっかりとつかんで、その動きを封じます。


 エレナの全身にあった傷が消えていくのを見て、エルミアナが声を上げました。


「傷がほとんどなくなってます! 淫紋まで消え始めてる……キモヲタ殿のヒールは、魔法さえ無効にするのでしょうか」


「いや、そんなはずはない」


 セリアが首を横に振りながら、静かに呟きました。


「しかし、エレナ殿の淫紋はこうして実際に消えているではないですか」


「それは……」


 少し考えてからセリアが言葉を続けました。


「恐らくそれは、淫紋が入った部分の効果を失っているんだと思う。紋様を使った魔法は、その印自体に魔力が宿るものだから」


「入れ墨された皮膚が元の状態に戻ることで、印が消えているだけだと?」


 エルミアナの問いに、セリアはうなずきました。


「結果として魔法も消えているけど、それは魔力を打ち消したわけじゃないと思う。もし、キモヲタのヒールに魔力を打ち消す力があるなら……」


 セリアの瞳にある青い焔が強く輝きました。


「私の目はこうして燃え続けていない」


 エルミアナは、自分の目をまっすぐに見つめるセリアの瞳に、内に秘めた悲しみがあるのをなんとなく感じました。


 セリアにどう声をかけていいのか分からず、エルミアナは何も言葉を返すことができませんでした。


 グリグリグリン!


 エルミアナが気まずさを感じ始めたとき、キモヲタがエレナの足裏に親指フィニッシュブローを繰り出しました。


「ひぎぃぃぃぃ♥ らめらめらめぇえええええ♥」 


 エレナの身体がビクビクと震え、そのまま倒れ込みました。


 放心状態で身を横たえるエレナをユリアスが引き起こすと、濡れたシャンティを脱がせて、タオルで拭って、新しい縞パンに履き替えさせます。


 その間に、セリアが地面に乾いた毛布をしいて寝床を用意し、そこにユリアスがそっとエレナを寝かせました。


 最後に、キーラがキモヲタの耳を押さえていた手を放し、キモヲタの耳栓と目隠しを外します。


 この間、約1分。キモヲタの治療後のフォローについては、もうみんな手慣れたものでした。


「キモヲタ、ごくろうさま!」

 

 そう言ってキーラがキモヲタの肩をトントンと叩いたり揉んだりして、キモヲタをねぎらいます。


「ふおぉお! キーラたんの肩もみが心地よくて、我輩このまま天国に行ってしまいそうでござる!」


「ふふっ! そうなの? じゃあ、もっと一杯トントンしてあげる!」


 簡単にご機嫌になったチョロキーラは、キモヲタの肩をトントンと叩き続けました。ご機嫌過ぎて、頭を左右に振りながらトントンしているキーラの髪が、ファサッと揺れるのでした。


 尻尾をブンブン振って、キモヲタの肩を楽しそうに叩くキーラの姿を見て、ユリアスたちも笑顔になりました。


 誰もが和んで心をホワホワさせるばかりで、ファサッと揺れるキーラの髪の下から現れる白いうなじにことに気づく者は誰もいなかったのでした。




~ 翌朝 ~

 

「おはよう」


 焚火の番をしていたエルミアナにエレナが声をかけました。


「おはようございます、エレナ殿。お体の調子はどうですか?」


「最高ね。これまでなかったくらい調子がいいわ。体の傷も消えてるし、それに……」


 淫紋とは言いづらいのか、エレナは黙ってそっとへその下に手を添えました。


 エルミアナは黙ってうなずきました。


「それにしてもキモヲタ……様のヒールは本当に凄いわね。もしかしたら大陸でも十本の指に入るくらいの治癒師だったりする?」


 エルミアナはエレナの質問に対して少し考え込んでしまいました。


 実際のところ、エルミアナはキモヲタの治癒力がとてつもないものであると感じていました。


 オークに襲われたときに噛み切ったはずの自分の舌が、キモヲタの治療によって完全に再生していたことを彼女は思い出しました。


 欠損の回復は、聖女と呼ばれるものでも難しいされているとエルミアナは聞いていました。それはつまりキモヲタは聖女と並ぶかそれ以上の治癒力を持っているということです。


「そうですね。十本の指かどうかは分かりませんが、キモヲタ殿のヒールは、私の知る限りでは最高の治癒力を持っていると思います」


 慎重に答えたエルミアナに、エレナは満足そうな笑みを浮かべました。


「そう……やっぱり凄い人なのね」


 その笑顔をキモヲタが見ていたら、乙女ゲーム『深淵の悪役令嬢』のサルミアちゃんのニヤリとした笑顔にそっくりだと思ったことでしょう。


「それはもう、たっぷりと御礼させてもらわくちゃ」


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