第68話 うちの店長がぁ、またやらかしちゃってぇ~。だから買ってね❤   

 キモヲタたちを歓迎する宴が終わると、その日もキモヲタたちは村の空き家で休むことになりました。


 その晩は色々と大変だったこともあり、疲れていた他の仲間はそれぞれの部屋ですぐに眠りにつきました。


 キーラにも個室が用意されていたので、キモヲタは久々に一人の時間を確保することができました。ベッドに腰かけたキモヲタは、直ぐにネットショップ「ナイトタイムラバー」の注文画面を開いて、商品のラインナップを眺めていました。


「ふーむ。それにしても、この100万円もする商品が気になるでござるな~」


 全製品一覧を価格が高い順に並べ時に出てくる「究極のブラックホール」というメカメカしい商品。その外観は、まるでSF映画に出てくる宇宙船のようで、写真では至る所に付けられたLEDランプがピカピカ光っているのでした。


『あなたに究極の宇宙体験を! 光さえ逃れることができないブラックホールがあなたのロケットを吸い込みます! NASAAと共同開発した最先端の超快感発生パルス波動装置を搭載! 分割リボ払い可』


「ふーむ。ふーむ。ふーむ」


 キモヲタは、商品の説明文を読みながら、考え込んでいました。普段なら、こんな怪しい高額商品には目もくれないのですが、何せ今はショゴタン討伐の報酬がまだ十分残っているので、決して手に入れられないことはなかったからです。


「ふーむ。ポイントがいくら沢山あっても、どうせこの商品ラインナップでござる。買うものといったら、みんなのコスプレ衣装くらいしかないでござるしなぁ」


 結局、何も買わずに画面を閉じようかと思ったキモヲタ。以前、カレーを購入することができた「その他のカテゴリ」を覗いてみました。


 するとそこには、また「店長のやらかし誤発注」の文字が踊っていたのです。


 しかも、今回は前回のカレーに加え、さらに業務用ビーフカルパスが追加されていたのでした。商品のメッセージ欄には「巨乳アルバイト雫のお願い」というタイトルの下に、怪しげな文言が……。


『うちの店長がぁ、またやらかしちゃってぇ~。だから買ってね❤』


「くっ! どうせ、むっさいおっさんの作文でござろうな。だがあえて、買ってやろうではござらんか!」

 

 ピコッ!


 そしてキモヲタは、誤発注商品をお買い上げしたのでした。


「おっ!? 生理用品も扱ってござったか、なるほどというかなんというか、まぁ、キーラたんに買っておくでござる」


 もちろん、あとでキーラから物凄くキモがられました。




~ ショップ「ナイトタイムラバー」~


 昼間はほぼ客の訪れないアダルトショップ「ナイトタイムラバー」。


 その受付カウンターでは、暇を持て余してパソコンで猫動画を楽しんでいたアルバイトの遠野雫(22歳)が、注文が入ったことを知らせる通知メッセージを開きました。

 

「店長ぉ~!」


「あぁ、雫どうした! もうちょっと待ってくれ、今は、商品テストでいそがしんだわ!」


 バッ!


「ぬおぁあああ! いきなり開けんじゃねーよ!」


「店長ぉ~! 佐藤隆作(45歳)脱サラして収入半減させて、奥さんに見限られて独身生活6年目の店長! そんなおもちゃでばっか遊んでないで、仕事してくださいぃ~!」


 店長はいろいろと片付けながら、雫の言葉に反論しました。


「うっせぇ! これは商品テストだって言ってるだろ! お客様には責任もって商品を提供するのが俺の仕事なんだよ!」


「意味わかりませんが、また注文が入りましたよぉ~! 誤発注のやつですぅ~! それもカレーとカルパス両方、ぜ~んぶ捌けましたぁ~」


 誤発注品が全部売り切れたと聞いて、店長は飛び上がって喜びました。


「マジか! まさかに引っ掛かってくれるとは! 上客を掴んだなこれ!」


「とりあえず前を隠してくださいぃ~! セクハラですぅ~」


「おう! だがその前に売り切ったことをお祝いだ! 万歳三唱!」


「バンザーイ!」


 店長(45歳)の前のロケットがふるんふるんと回転しました。


「ばんざーい❤」


 雫(巨乳ほぼGよりのFカップ)の胸がバルンバルンと揺れました。


「バンザーイ!」

 ふるんふるん!


「ばんざーい❤」

 バルンバルン!

 

「バンザーイ!」

「ばんざーい❤」

 

 この、やることなすことが変態なセクハラ店長と、チラッと視線を向けただけでもセクハラが成立しそうな巨乳美人の雫。


 未だこの二人の関係が清いものであることを、ときおりマスクで顔を隠して買い物に訪れる支援精霊は知る由もありませんでした。

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