第65話 和解したら即プロポーズ!? 魔神の思考は分からんでござる  

 結果的に、全ての村人たちが【お尻かゆくな~る】の影響を脱するのは24時間が過ぎた後のことでした。


 しかし魔神ウドゥンキラーナだけは1時間で痒みが収まり、その後、キモヲタたちは魔神ウドゥンキラーナと和解を結びました。


「まさか妾にまで状態異常のスキルを発動させるとは、キモヲタは見た目によらずたいした男よのぉ」


 村の中心にある大きな木の下でキモヲタたちは、睡眠薬が入っていないラッシーを飲みながら、魔神ウドゥンキラーナと話をしていました。


「いやいや、こうして近くでよく見れば、なかなか良い男ではありんせんか」


 そう言うと、ウドゥンキラーナはキモヲタの隣に腰かけ、キモヲタの腕をとって身体を寄せてきます。


(おぉ! 見た目と違って意外に……)


 ウドゥンキラーナの胸(の形をしたもの)が、キモヲタに押し付けられてプニュと形を変えました。


(ふぉおおお! なんでござろう! この湧き上がる喜び! 我輩の腕が女性の胸に接胸したと喜んでいるでござる!)

  

「人のおなごとそう変わらぬであろう? 温もりも、柔らかさも……」


 耳元で囁くウドゥンキラーナからは、金木犀のような香りが漂ってきました。


「主の身体に溢れておるこの神気……なるほど、おそらく主も異世界のものであるな?」


 ウドゥンキラーナから漂う花の香を吸うたびに、キモヲタには魔神の身体が木や蔓ではなく、人間の女性の素肌に見えるような気がしてくるのでした。


「わ、我輩など、し、しがない転移者でござるよ……」


「なるほど転移してきたでありんすか。ならばと同じ世界から来たのかも……のぅ、主よ、我と契りゃんせ?」 


「ちちちち契り? 契りというのは何のことでござるか?」


「むぅ。おなごの口から言わせるものではありんせん。男と女の契りと言えば、アレしかなかろう?」


「ああああ、アレ……といえば、アレがアレしてアレアレするアレでござるか」


「もちろんそれでありんす❤」


 ウドゥンキラーナの手がキモヲタの股の付け根をスリスリし始めると、キモヲタは思わず声をあげました。


「おうふっ!」


 緊急DT対策委員会ぃぃぃ!!!


 突然、キモヲタの脳内で警報が鳴り響き、そして何かが始まりました。


――――――

―――


委員長:「只今、キモヲタ氏にDT卒業チャンスが緊急襲来しました。よって、これより緊急DT対策委員会を開催します」


DT党:「委員長! 初体験は同じ人族か、もしくはそれに近い種族にすべきだというのが、我々DT党の基本方針です! 犬耳族やエルフはともかく、完全な人外はレベルが高過ぎると考えます」


モン娘党:「委員長!」


委員長:「モン娘党くん」


モン娘党:「今の発言は多文化共生の理念に反する危険な思想です! DT卒業においてあまりそこにこだわりすぎると、大事なDT卒業の機会を喪失してしまう恐れがあるだけでなく、人類至上主義に染まりかねない危険が危い恐れがあります!」

 

DT党:「委員長! 人類至上主義などという発言は、オールラウンダーな性癖をもつ当人に対して、極端なレッテルを貼っているだけでしかありません。これは本来守られるべきDT卒業時における心の安寧と充足を脅かすものです! モン娘党の謝罪を要求します」


委員長:「発言を認めます。モン娘党くんは、謝罪の上、以後は注意して発言するように」


モン娘党:「委員長、先の発言に行き過ぎた点があったことをお詫びします。とはいえ、現在のキモヲタ氏が、性癖のストライクゾーンの幅が広がり過ぎてもはや端っこが見えないこと。また前世ではDTを拗らせて魔法使いの称号を得て異世界転移してきたいま、もはや穴があれば何でも良いというレベルにまで達していることを踏まえれば、もはや相手が魔神であれ女性の形をしているのであれば、何も問題があるはずがありません。DT党の主張は、初手の相手にこだわるあまり、今後キモヲタ氏にどれだけあるか、そもそもあるかどうかも分からないエッチの機会を明らかに損失するものです」


DT党:「委員長! 我が党は、その理念である『DT卒業は初めの一歩。持続可能な子作りライフ』を一貫して訴えてきました。もはや穴さえあれば何でも良いキモヲタ氏の初めての相手が木の女で、万が一にでもそれに溺れてしまうようなことになれば、今後、持続可能な子作りライフの実現は難しいものになることでしょう!」


モン娘党:「魔神とまぐわって、子供が作れないというエビデンスがあるのか! データを出せ! データを!」


委員長:「モン娘党くん、私の許可なく発言するのは止めてください!」


DT党:「委員長!」


委員長:「DT党くん」


DT党:「逆にモン娘党にお尋ねしたい! 魔神と人間が交わって子をなしたという事例があるのでしょうか! もしあるなら……」


モン娘党:「いくらでもあるわ! なんだったら前世界では神話にもなってるし、漫画やあアニメやWeb小説で神との間に生まれた子があちこちで無双しとるわ! エロ同人界隈に溢れとるわ!」


DT党:「同人!? ふざけんな! こっちは真面目な話をしてんだよ!」


委員長:「あっ、おふた方! 暴力はいけません! お互いに冷静になりましょう!」


DT党、モン娘党:「うっせぇええ! 結局は暴力! 暴力こそが全てを解決するんだよ!」


 そして委員会は大荒れに荒れてしまいました。


 全員がズタボロになって、最後に立っていたのは……


新委員長:「えーっ、前の委員長が倒れてしまっため、急遽、代理を務めさせていただくモン娘党です。当委員会で紳士的に話し合った末の結論を申し上げます。魔神ウドゥンキラーナとのエッチ、ありやなしや……」


新委員長:「”あり”ということに決定いたしました。以上!」


――――――

―――


(よっしゃぁあああでござる! 我輩もモン娘党を支持していたでござるよ!)


 キモヲタは、ウドゥンキラーナの手を取ると、魔神の木の顔を真剣に見つめて、


「それでは末永く我輩と契りを……」


「キモヲタ! 駄目ぇええええ!」


「ぶごぼぁっ!」


 キーラの全身タックルをお腹に受けて、ゴロゴロと激しく地面に転がるキモヲタでした。




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