第64話 魔神ウドゥンキラーナ
地面に降ろされたキモヲタたち。周囲には、村中の小人が思い思いの方法でお尻を擦りつけて痒みと戦っていました。
またキモヲタたちを吊るしていた木が、女性の形に変わって、今は別の木にそのお尻を擦りつけています。
つまり、キモヲタたち以外の全員が、お尻をどこかしらに擦りつけているのでした。
「ンメェェェェェエエエ!」
キンタの声が聞こえたので、キモヲタがそちらの方に目を向けると、キンタがお尻を向けながら、こちらに近づいてくるのが見えました。
「キンタ! 何をしてござるか!?」
キモヲタがキンタに駆け寄ってみると、キンタはキモヲタたちの服が入れられた籠を口にくわえて、引きずろうとしていたのでした。
「おぉ、キンタ! 我輩たちの服を取り戻してくれたのでござるな! エライでござる!」
キモヲタはキンタを褒めながら頭を撫でると、籠を取り上げてその中にある服をみんなのところへ持っていきました。
「スンスン、キーラ殿、体操服でござる」
「ありがと、キモヲタ! って匂い嗅がないでよ!」
「スンスン、エルミアナ殿、OLスーツでござる」
「ありがとう。キモヲタ殿。後で殺します」
「クンカクンカ、セリア殿、ミニスカセーラー服でござる」
「後で殺す。マジ殺す」
そして最後にキモヲタは、ユリアスの傍らに膝をつくと、籠から黒のゴスロリメイド服(男の娘用)を取り出しました。
キモヲタは手にした黒ゴスロリメイド服を、しばらくジッと見つめた後、
「スーッ……」
それを鼻に当てて息を吸い込みました。
「キ、キモヲタ様!?」
「はい。ユリアスきゅん。黒のゴスロリメイド服でござる」
「でも……私は……」
コスプレ衣装を受け取ることをためらうユリアスに、キモヲタはニコリと笑って言いました。
「女の子がむやみに肌をさらすものではござらんよ。それとユリアスきゅんのゴスロリメイドはとても似合ってござるからな」
「キモヲタ様……私、私は……ぐすっ」
キモヲタの優しい気遣いに、それ以上の想いを口にすることができないユリアスは、ただ涙を流すことしかできませんでした。
そんな上司の健気な姿に、胸を打たれたセリアが思わず声を上げます。
「キモヲタ聞いて! ユリアス姫隊長は受け専なの! 本当よ!」
「お主は黙れぇぇい!!」
「えっ!? もしかしてあなたも受け専……」
「違うわ!!」
「プッ!」
キモヲタとセリアのやり取りに、ユリアスが思わず吹き出しました。
ようやく笑顔を見せたユリアスに、キモヲタとセリア、そしてエルミアナとキーラは、安堵の表情を浮かべるのでした。
それからキモヲタたちは、村長を縛り上げて尋問することにしました。
「うひぃい! 頼む! 縄を解いてくれ! 解いた縄をそこの犬耳とエルフで端を持ってロープを張って、その間にわしの股を入れたら、両方で交互に引っ張ってお尻を掻いてくれ!」
「我輩の質問に答えたら、そうしてやるでござる」
「えっ? ボクは嫌だけど!」
「わたしもお断りだな」
即答する二人にキモヲタは苦笑いを浮かべながら、村長に向って言いました。
「あの木の化け物は一体なんなのでござるか!?」
「痒い痒い痒い! 化け物ではない! ウドゥンキーラナ様じゃ! 痒い! 痒い!」
「あれが魔神ウドゥンキラーナだと!?」
ユリアスが驚いて声を上げました。
「そうじゃ! 我らが森の守り神! いや、痒い! 痒い! 痒い! まじ痒いんじゃ! ひぃ! ひぃ! ふぅ!」
白髭小人村長の呼吸がヤバい感じになってきたので、慌ててキモヲタはロープを解いてやりました。自由になった瞬間、村長は近くの建物に駆け寄ると、その壁に無心でお尻を擦り付け始めるのでした。
「まぁ、あとはその魔神本人から話を聞けば良いだけでござるからな」
キモヲタがつぶやくと、他の仲間たちと一緒に、魔神ウドゥンキラーナの下へ向かいました。
魔神ウドゥンキラーナは、お尻を木に擦り付けるのに夢中で、キモヲタたちに周りを取り囲まれても気づく様子がありません。
スリスリッ!
「あへぇぇぇ❤ お尻が痒い! 痒いのじゃぁぁ!」
スリスリッ!
「おほぉおお❤ 木のゴリゴリ気持ちい! お尻が掻けて気持ちいいのぉお❤」
お尻をグリグリと木に擦りつける魔神ウドゥンキラーナの姿を、キモヲタがジッと見つめていました。
(これが魔神ウドゥンキラーナでござるか……)
魔神ウドゥンキラーナは、身体こそ木であり、その髪は蔓や柳の枝葉のようなものではあるものの、その形は顔も含めて美しい女性のそれでした。
(あの腰のくびれ、その上にある豊満な乳房……腰を擦り付けているから揺れているように見えるのだけなのでござろうか)
そしてキモヲタの中でひとつの結論に到ります。
(
「ちょっとキモヲタ! この化け物を見て、綺麗な胸の形してるからおkとか考えてない!?」
キーラがキモヲタの思考を的確に言い当てました。
「おおおおい! マネキン女! おおおおお、お前が魔神ウドゥンキラーナで間違いないか!」
キーラに内心を当てられたキモヲタは、動揺を隠そうとして大声を上げたものの、思い切り噛みまくってしまいました。
「お尻が痒い! そ、そうじゃ! わ、わ、妾が女神ウドゥンキラーナ! あへぇぇぇ❤ 痒いのじゃぁぁ!」
女神様は尻を擦りつけながら、キモヲタたちに向ってそう言い放ちました。
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