第40話 黒のニーハイブーツの上に浮かぶ純白の絶対裏領域
キモヲタたちが、そろそろ野営の場所を決めようとしていた頃のことでした。
セリアが空を見上げながらユリアスに語り掛けます。
「ユリアス。陽が傾き始めていますし、そろそろ野営する場所を決めた方がいいかも」
「そうだね。どこか適当なところがあれば……」
セリアの提案を聞いたエルミアナが、
「なら私が先行して、今夜の野営に良さそうな場所を探してきましょう」
そう言って風のように道の先へと駆けていきました。
キモヲタはといえば、キーラに背中を押されつつ、ハァハァと息を荒げながらも、なんとか遅れずに進んでおりました。
(セリア殿の黒のニーハイブーツの上に浮かびあがる純白の裏絶対領域と、ホットパンツの上からでも分かるプルンプルンゼリーのような柔らかくて形のよいお尻が、目の前で揺れていなければ、我輩もう死んでいたかもしれんでござる)
バシッ!
キーラがキモヲタのお尻に力いっぱいケリを入れました。
「うひっ! 何をするでござるかキーラ殿!」
「ちょっと! いまキモヲタが思ってることが全部口に出てたよ! キモイ!」
いつもならキーラに「キモイ」と言われた瞬間、ガックリと凹むキモヲタでしたが、今回は違いました。
「プンスカでござる! それもこれもキーラタソが生シャンティを見せてくれると嘘をついて、我輩を騙したからでござるよ!」
先の休憩時のこと。
生シャンティを見るために頑張って歩き抜いたキモヲタの前で、キーラは約束のご褒美としてスカートを捲し上げてみせたのでした。
そのときのことを思い出したキモヲタは、血涙を流しながらキーラに不満をぶつけます。
「スカートの下に、もう一枚スカートを重ね履いていたなんて! 詐欺でござる! これはもう消費者センターに電話して行政指導を入れてもらわねば、我輩、我輩、我輩は悲しくて悔しくて夜も眠れなくなりそうですぞぉおおお!」
「ちょっ、キモヲタ、変な呻き声あげて泣かないで! 魔物が寄ってきちゃう! 分かった! 分かったよ! それじゃ行くよホラッ!」
ササッ!
キーラは素早い動きで、もう一枚のスカートも含めてたくし上げ、すぐに降ろしました。
その時間、僅か0.03秒。
あらゆる動作においてノロノロ動くことを信条とするキモヲタ。しかし、ことエロに関しては神速で動くことが可能。キーラの一瞬のたくし上げは、キモヲタの脳内録画にとっては十分な時間なのでした。
「ふぉおおおおおおお! キーラタソの生シャンティいただきましたぞおぉお! ちょっとシミがあるところまでバッチり拝見いたしましたぞぉおお!」
「えっ!? シミ!? そんなのあった?」
慌ててスカートを
すかさずキモヲタはキーラの前にしゃがみ込んで、下からスカートを覗き込むのでした。
「ふぉぉお! 女神の白布セカンドショットをゲットですぞぉ! ふぉー--!」
「あっ! 騙したな!」
騙されたことに気づいたキーラは、大いに腹を立ててキモヲタの身体をゲシゲシと蹴りまくるのでした。
「騙したのはお互い様ですな! これでチャラで我輩は構わんですぞぉお!」
「うるさい! うるさい! この変態!」
ゲシッ! ゲシッ! ゲシッ!
そんな茶番に、ユリアスとセリアが苦笑いを向けているところへ、
「はぁ……はぁ……ユリアス殿、大変マズイことになった」
風のような速さで駆け戻ってきたエルミアナが、息を切らしながら真っ青な顔で告げるのでした。
~ エルミアナの報告 ~
「マズイこと? この先に一体何があるというのですか?」
エルミアナが息を整え終えるのを待つことなく、セリアが問いかけました。それほど緊迫した表情をエルミアナが浮かべていたからです。
「い……ハァハァ……ロル……です……ハァハァ」
「岩トロル!? この先にいるのか!」
エルミアナの途切れ途切れの言葉を、ユリアスは正しく聞き取っていました。
ユリアスの言葉を聞いた、キモヲタを除く全員の顔に緊張が走ります。
「岩トロル? なんでござるか?」
それが何かを知らないキモヲタだけは、呑気な顔をしていました。
「岩トロルだよキモヲタ! どうして知らないの!?」
危機感を抱かないキモヲタをキーラが怒鳴りつけます。
「いや、そう言われましても、我輩はしがない
「キモヲタが言ってること全然わかんないけど、キモヲタが全然わかってないことだけは嫌になるくらいわかったよ!」
キモヲタに噛みつこうとするキーラを宥めながら、ユリアスが岩トロルについての説明をはじめました。
「岩トロルは、古代の暗黒魔術によって生み出された魔物です。昼間は身体が岩のように固くなってその場に留まっているのですが、陽が落ちると動き出します。キモヲタ殿には、あのサイクロプスよりも遥かに恐ろしい魔物と言えば、お分かりいただけるかもしれませんね」
まだ岩トロルの恐ろしさを理解していなさそうなキモヲタを横において、エルミアナがユリアスたちに話を続けます。
「ここで無駄に時間を浪費するのは良くない。急いで岩トロルのところへ! 話はそこでしましょう」
エルミアナの提案に、ユリアスたちは頷きました。
その結果、キモヲタはもう暫く走り続けることになるのでした。
「ハァハァ……セリアタソのお尻……ハァハァ」
キモヲタの前を走るセリアの長く美しい黒髪が風になびく様子を――
見ずに、その下でフリフリと揺れるセリアのお尻に心を集中して、頑張って走り続けるキモヲタなのでした。
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