第33話 こここ、これはデデデデデートというあの幻のイベント!?
ここ数日、早朝のキーラタソ・ハスハス・クンカクンカタイムが確保できずにいたキモヲタは、目に見えて元気を失っておりました。
それはキーラがキモヲタよりも早く目を覚ましてしまうようになったためで、それは賢者の石の探索行に不満だったキーラのささやかな嫌がらせだったのでした。
(ううぅ……キーラ殿の目覚めが早くなってしまったために、朝のキーラタソ成分の吸収ができなくなったでござる)
「キモヲタ! さっさと朝ごはんに行こう! ボクお腹ぺこぺこだよ」
そう言ってキモヲタをぐいぐい引っ張るキーラ。本人は気付いていませんでしたが、立ち上がったキモヲタは、シャツの上からチラッと覗いているキーラの真っ白で小ぶりの乳房に目を奪われていました。
(ふほぉおおおお! キーラタソのパイオツキタァアァアア! REC! REC! REC! い、いかん……)
数日振りのラッキースケベイベントに、鼻から出血の恐れを感じたキモヲタは、己に課している紳士協定限界深度ギリッギリのところに自分がいることに気付きました。
(これはいかんでござる! このままではキーラたんにエロゲスマホタッチしてしまうかもしれないでござるよ! もし衝動に任せてキーラタソにツンツンなどやらかしてしまったら、通報されて、逮捕されて、電気椅子行きでござるぅぅ!)
バッ!
「えっ!? キモヲタどうしたの!?」
キモヲタはその場に跪くと、両手を合わせて二次元ロリ紳士教の祈りを始めました。
「イェス・ロリータ・ノータッチ
我は紳士なり、故にロリに触れず、ロリを汚さず、ただ心で愛でるのみ
イェス・ロリータ・ノータッチ
我はロリに手を触れぬ、手で触れるもの、紳士の誓いを忘却せり。
我は脳内で触れる。
イェス・ロリータ・ノータッチ
我はリアル幼女を嗜まぬ、リアルを嗜むものは、通報・刑務所・即処刑。
我は二次に生きて二次に死ぬ。
イェス・ロリータ・ノータッチ
我は三次でイタさぬ、三次でイタすもの、リア充なり。
我は心でリア充を殺す。
イェス・ロリータ・ノータッチ
我は紳士なり、故にロリに触れず、ロリを汚さず、ただ心で愛でるのみ……」
そして、キモヲタはしばらく沈黙したあと……
「喝ぁああつ!」
大声を上げて立ち上がりました。
「なっ!? キモヲタどうしたの!? 頭大丈夫!?」
驚いてキモヲタを見上げるキーラは、その表情に何か物凄い覚悟を感じとったのでした。
もしかすると今回の探索行には、キモヲタにとって何か重要なことがあるのかもしれない。そう考えたキーラは、もうキモヲタに対する不満を抱くことはありませんでした。
(キーラタソのハスハスタイムがなくとも、あと数日もすればハーレムパーティが実現するでござるし、ここは踏ん張りどころでござるな!)
キモヲタの心の中では、ハーレムパーティの夢がどんどん膨らんでいくのでした。
~ お買い物 ~
朝食が終わった後、キモヲタとキーラは、賢者の石の探索行に向けての装備を調達するために、市場に買い物に出ていました。
初めてきた市場に興奮したキーラは、キモヲタの手を引っ張って、あちこちと店を回ります。
「わぁ! キモヲタこれ見て! 魚がまだピチピチ跳ねてるよ! あっ、あっち! 綺麗な石を売ってる! ほらこっち!」
キラキラの笑顔の女の子から手を握られて、引っ張り回されるなんて自分には縁のないことだと思っていたキモヲタは、頭に血が昇ってフットーしそうになっていました。
(こ、これはもしかしてデデデデデートというものではないのでござろうか!?)
「ねぇねぇ、キモヲタ! このペンダント綺麗だね! 賢者の石ってこんな感じなのかな!?」
それは銀の装飾が施された枠にトルコ石のようなターコイズブルーの宝石がはめ込まれた小さなペンダントでした。
「店主! このペンダント買ったでござる!」
「毎度!」
そう言って店主に言われるがまま銀貨二枚を手渡したキモヲタを、キーラが大慌てで声をあげます。
「ええっ!? ちょ、ちょちょっと待ってキモヲタ! ボク、買って欲しいなんて言ってないよ!」
別に自分はねだったわけでもないのに、いきなり購入を決めてしまったキモヲタに驚いたキーラ。
「ぬっ? 欲しくないでござるか!?」
「えっ? いや、欲しい……かも……。で、でもせめて値段交渉くらいはしようよ!」
値段交渉と言う言葉を聞いた店主が、ササッと受け取った銀貨を懐にしまい込みます。そして、キモヲタに向って、
「嬢ちゃんの言う通りだ! もし俺が悪徳商人で高い値段を吹っかけてたらどうすんだ!」
「そ、それは……ジィィィ」※キモヲタ
「ジィィィ」※キーラ
二人から見つめられた店主は、仕方ないなという顔をしながら、
「まぁ、今度から気を付けるんだぜ! 返品は受付ねぇが、おまけでもう一個つけてやる、ホラよ!」
そう言って、店主はキーラに同じペンダントをもう一つ渡しました。
「旦那、いい奴隷を買ったな、大切にしてやんな!」
こうしてキモヲタとキーラは、同じペンダントを身につけて市場を後にするのでした。
「似合うかな?」
道中、ペンダントを首に着けたキーラは、ペンダントをブレスレットにして腕に巻き付けているキモヲタに尋ねました。
「とてもとても似合ってござるよ! 首元のアクセサリは玉のように白い肌をよりいっそう白く感じさせますな。それにキーラ殿の艶やかなブラウンの毛並みには落ち着いたターコイズブルーが相性ピッタリでござる。少女の見た目に大人の淑女の雰囲気が見事にアウフヘーベンして、思わず我輩キーラ王女殿下と呼んで、跪きたいという衝動に駆られましたぞ。そのおみ足をペロペロさせていただけたら、我輩一瞬で昇天してしまいますな!」
早口でまくしたてるキモヲタの言っていることを、キーラは半分も理解できていませんでしたが、とりあえず自分の魅力的になったということと、それをキモヲタが喜んでいるということだけは分かりました。
キーラはニッコリと笑顔をキモヲタに向けて、
「そっか! ありがとねキモヲタ! これ大事にするよ!」
そう言ってキモヲタの腕にしがみ付くのでした。
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