第32話 夢のハーレム冒険者パーティーでござるよぉお!
賢者の石、それは所持する者に永遠の命を授け、死者をも蘇らせることができると云われている魔法の石。古今東西の権力者たちが求めてやまないものでした。
長らくその存在は、神話や伝説の中でのみ語られるものと考えられてきましたが、最近になってそれが現実にあるものだと考えられるようになりました。
その主な原因は、今は亡きセイジュー神聖帝国の皇帝が、賢者の石を入手するために大規模な兵力を動員していたことにあります。
ドラン会戦で決定的な敗北を喫するまでは、破竹の勢いで多くの国々に侵攻していたセイジュー皇帝。
まもなく大陸の覇者となる皇帝が、賢者の石を探し求めるであろうことは、権力者なら誰もが納得できるものでした。そして、戦略的価値がないある地域に何度も大兵団を送り込んでいたことは、権力者たちに賢者の石が実在することを確信させるのに十分なものだったのです。
「ふーむ。なるほど。そうでござるか(棒)」
賢者の石について、詳しい話をユリアスから聞いたキモヲタでしたが、一切興味が湧かなかったので、生返事を返すのでした。
しかし、そんなキモヲタの様子にユリアスは落胆するどころか、むしら安堵の表情を浮かべていました。そして、キモヲタに顔を近づけて小声で話しかけました。
「これは内密に進めている話なので他言無用でお願いしたいのですが……」
ユリアスの美しい顔が目の前に来たことにドギマギするキモヲタ。その目線は、桃色の愛らしい唇に釘付けになってしまいました。
ガクガク、アワアワとキョドるキモヲタを見て、それを了承と勘違いしたユリアスが耳元で囁きます。
「我が主君であるフェイルーン子爵が、賢者の石が存在する確実な情報を入手され、これを手に入れる決断を下されました。他に悟られることのないよう、あくまで内密で進めていく必要があることから、少人数の精鋭を各地に派遣することになったのです」
ユリアスの話によると、古代の魔導書に、賢者の石が力を発揮する際には激しい青い光を放つと記されており、その光らしきものを目撃したという証言が数多く集まっているようでした。
ひとつは、アシハブア王国の王都ハルバラルトに、突如ドラゴンが出現した「王都騒乱」。ドラゴンの出現の直前に、青い光を見たという多くの証言がありました。
ひとつは、ドラン会戦。セイジュー皇帝が敗走した後の戦場で、青い光を目撃したという人類軍兵士たちの証言がありました。
この戦いにおいては、戦場の大半が幼女に変るという強大な幻影魔法が使われたと言われており、その力の源泉が賢者の石であると考えている者もいるようでした。
またドラン公国と国境を接するアシハブア北部では、度々ドラゴンや巨大なグレイベアが目撃されており、それらが出現する直前にも青い光が目撃されているということでした。
「他にもルートリア連邦中央部の大森林にいる魔神が、賢者の石を所持しているという噂がありまして、私たちはそちらに調査に向い、可能であれば賢者の石を入手せよとの命を受けております」
「その賢者の石の探索に我輩を同行させたいと? 他には誰が参加するのでござるか?」
何ならユリアスと二人きりがいいなぁと思うキモヲタでした。焚火を前に見つめ合う二人、裸で見つめ合う二人、裸で抱き合う二人、裸で……。
「私とキモヲタどのの他に二人を考えております。もし、そちらの奴隷をお連れするのであれば三人ということになりますね」
キモヲタの妄想は、あっさりと打ち砕かれてしまったのでした。
「一人は私の部下でセリア・アルトワイズという魔法剣士です。もう一人ですが、ルートリア連邦の森に詳しいレンジャーの女性を誘っているところです」
キモヲタのエロ感知アホ毛がピンッと立ちました。
(ユリアス殿の部下となれば白バラ騎士団。しかもセリアと言う名前からして間違いなく女性。もうひとりのレンジャーも女性。キーラ殿は女の子。つまり、これは、もしかすると、もしかして、いや間違いない、これは異世界転移者たる我輩が担うべき逃れ得ぬ運命……ハーレムパーティーではござらんかぁああ!)
キモヲタはガシッとユリアスの手を掴むと、大声で自分の決意を述べました。
「承りました! 改めてこのキモヲタ、ユリアス殿のお役に立たせていただきますぞ!」
こうして、男一人に女性四人のハーレムパーティーと勘違いしたキモヲタは、ユリアスの手を握って、賢者の石の探索に参加することを決意するのでした。
「それで? いつ出発でござるか!? デュフコポー」
一刻も早くハーレムパーティーを経験したいキモヲタは、息を荒らげながらユリアスに詰め寄ります。
我を忘れて身体を近づけてくるキモヲタに、ユリアスは顔をポッと赤らめました。
「レンジャーの女性の参加が確認でき次第ということになりますが、おそらく週明けには出発できると思います」
その週末、キモヲタは出発のときをワクワクしながら待ちわびるのでした。
一方キーラといえば、せっかく安定した生活が確保できつつあったこともあって、今回の探索には正直なところ反対でした。しかし、奴隷紋がある以上、キモヲタの意向に逆らうことはできません。
「まぁ、仕方ないか」
せめてもの腹いせにと、その日以降、朝のサービスチラ見せをやめてしまったキーラでした。
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