三章 ラウルと王太子
3-1
王宮にある
中央に置かれた応接用の
「で? デートの約束を取り付けたと」
「ええ。
「しかしド派手な
「どんな格好でも、彼女の人となりは
「どこがだよ。
王太子が信じられないものを見るようにこちらを見て言った。
確かに『以前』会った彼女は化粧もしていなかったし、アースカラーの衣装に、
「以前とはまた違う
「確かに、エキゾチックな魅力で男たちが
ジロリと王太子を
彼女が魅力的というのは同感だが、彼女に
「しかし、
「彼女の実際の身長は、昨日の見た目よりも十センチ以上は低いですよ」
ラーガの森で会った彼女の頭の高さと、昨日向き合った時の頭の高さは
王宮の庭園では
「それにしても、僕、舞踏会で女性からレポートなんてもらったのは初めてだよ。内容も専門的で
そう言って、王太子はそのレポートをバサリと机の上に置いた。
「
レポートの上に、博覧会のチケットを置くと、王太子が軽く目を見開く。
「何これ? チケットがどうかしたのか?」
「彼女の
置いたチケットの同伴者
レポート内の、作成担当者のところに『カーティス家 魔道具開発担当者』と書かれているその文字が、同一人物だと示していた。
「なるほど……。これだけの才能があって、あの容姿に財力があれば
「ええ。予想以上の反応で、
「しかし、なんであんな噂が流れているんだろうな。というか『流している』が正しいのか?」
彼女の悪評は社交界でも有名で、彼女の父親や
だが、その噂の信ぴょう性を調べてみても、彼女と交流のある男は貴族にも平民にもいないし、むしろ
「それは俺も不思議に思うところです」
「あれかな? 王都で
「判断付きかねます」
ラーガの森で会った彼女の話では家族とは良好な関係のようだったし、イヤイヤ魔道具のために働かされているという風でもなかった。
「で、結局真意は分からないが、お前は
「予想の
王太子の言葉に、さらりと答える。
こちとら
それでも面と向かって
「ま、
満面の
「ぐっ……、ゲホ、ゴホッ……。な、何をまた。『女装』はあの時一度きりと言ったじゃないですか」
そう、ほんの二週間前、パレンティアに『再会』したあの時、再会すると分かっていたらあんな格好なんて……。
とてもじゃないが、彼女に助けてもらったのが自分だなんて言えなかった。
いくら囮役で令嬢の格好をしていたとはいえ……。
「でもさ、ほら、僕が囮作戦を指示しなかったら、ラウルはパレンティア嬢に再会することもなかったんだから。僕って
「どこに、好きな女性と会うのに、女の格好をしたがる男がいるというんです!」
王太子に舞踏会を
彼女はラーガの森で会った俺のことを『アリシア』だと思っているようだが、なんとか言葉を
『二度と会えない』と思っていた彼女にラーガの森で再会できたのに、あの
「いいじゃないか、それで彼女の安全も守れるんだぞ。……なのに、彼女はお前と
「ゼロから始まるなら
「どんだけポジティブだよ。まぁ、なんにせよお前がこの令嬢と結婚してくれたら貴重な人材の確保ができるな。間違っても他国に流出なんてやめてくれよ」
「彼女の才能と関係なく、俺は他の男に
この
二度と会えないと思っていた彼女と、こうして再び
舞踏会で『ラウル=クレイトン』として再会した時、ひょっとしたら覚えてくれているかもしれないと思ったが、そんな願望は簡単にチリと消えた。
知っているのを隠しているという訳ではなく、本当に彼女の
「かけらも覚えられていないというのは、結構クルな……」
小さくこぼれた言葉は、誰にも拾われない。
なんとしても、どうやってでも彼女の心に『俺』を残すにはどうしたら
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