呪いじゃなくて神の加護！？世界を救った残りの人生は好きに生きろと言われたので、一目惚れした人と幸せな家庭を築きたいので国盗りします！~女神様は無限ループしてるけど廃ゲーマーだから逆に燃えています！？~

第二十七話 女王

「アレス！　貴方、怪我はないの？」

「メルティ、王の椅子を用意したぞ」

　久方ぶりに見るメルティは、相変わらず美しかった。

　面と向かって会うとわかる。やはり俺は彼女のために生きている時が一番生を感じられる。

　「アレス、そちらの皆さんは？」

「ああ、紹介が遅れた、今回の作戦で協力した仲間たちだ。

　これからはメルティ、もう呼び捨ては出来ないな、メルティ女王陛下の臣下としてその手腕を発揮してくれること間違いない」

「噂は本当だったのね……本当にレイクバックを、取り戻してくれたの？」

「メルティ陛下、私はカインと申します。

　現在王都の混乱を収めるために私の手のものが動いております。

　女王陛下に置かれましてはどうぞ王都にお越し下さい」

「……いいのかしら私なんかが」

「メルティ陛下、私なんて、などとおっしゃらないでください。

　それはアレス殿の命がけの行動を無為にする言葉です」

「はっ、そう、よね。ごめんなさいアレス」

「気にしないでくれ、いや、ください。

　私は、メルティ陛下の剣、どのようなこともお命じください」

「うーん、な、なんか距離を感じちゃうのよね……アレス、前みたいに話してほしいんだけど」

「どう思うカイン、俺は構わんが（死ぬほど嬉しいが）」

「救国の英雄に与えられた特権と考えれば、問題ないと思います」

「よかったわ。

　そう、私は、お父様の意思を継いでこの国を建て直さなければいけないわ」

　立派だぞメルティ。今、君は最高に輝いている。

「でも、村のことどうすれば……」

「しばらくはジフに任せていずれは領主を置けば良い」

「そうね、なんだか、あまりにも急で頭が回らないわ」

「大丈夫だ、皆が支えてくれる」

「そうね、皆でやれば怖くない」

「領土内の平定はどうぞ私にお任せください」

「わかりました。カイン殿、頼りにしています」

　ぎりっ……

「い、いえ、なんといってもアレス殿の名を利用させていただくだけですので、この国の、いや、王女の傍に立つアレス殿が柱、国を、民を、そして女王陛下をお支えするのです」

「そうですね。アレス、これからもよろしくね」

「ああ、任せておけ」

　カインは配下の者と素早く村を出る準備を進めていく。

　村人たちに多少の混乱は在ったが、ジフが残ること、この国の女王にメルティがつくことを知ると歓声が上がる。

　それはそうだろう、村長が突然国王になった。

　当然村は良い扱いを受けることは疑いようもないわけだ。

　先見の明のあった村人たちは自分たちの選択を喜んでいる。

　未開の村への転居という勝負に出たものだけが、この賭けの報酬を得ることが出来るのだ。

「それは、出立しよう」

　カインはきちんとした上等な馬車を用意してくれた。

　村を守る最低限の兵以外は女王陛下の凱旋に同行する。

　少しでも、泊をつけたいのだ。

　各町によって、随行員は増えていく、早くに味方になった街の責任者も、この賭けの勝者だ。

　誇らしげに女王の傍を歩く名誉を賜っている。

　いずれは国でも発言権を持てる立場につけるのだ。

　　こうして俺達は、自分たちの国の首都であるレイクバックに戻ってきた。

「メルティ女王陛下バンザイ！！」

「ピース王国に繁栄あれ！！」

　メインストリートには人が溢れかえっていた。

　皆新たな支配者を喜んで迎えてくれた。

「英雄アレス様バンザーイ！！」

「悪逆非道なギャベルに正義の鉄槌を下したアレス様こそ救国の英雄だ！！」

　なにやら俺を賛美する声も聞こえる。まぁ、その力をメルティのために利用する、その分サービスぐらいはしておく。大剣を高々と掲げると、大歓声が起こった。

「メルティ女王陛下にこの剣を捧げる！！」

「うおおおおぉぉぉ！！　これでこの国は安泰だ！！」

　国民が喜んでくれれば何よりだ。

　そのまま俺達は歓声を受けながら城へと入ったの……だが……

「申し訳ありません、まだ復旧作業が……」

　中央の部分はすっかり開放的な状態になっているので、これは、もう、建て直ししかない。

　新たな王の誕生と、イメージ刷新のためにもこの作業はできる限り急ぎたい。

「アレス殿、ご相談が」

　その日の夜ケインから相談を受けた。

「金が足りません。ギャベルや親衛隊から徴収した金だけではとても復興には足りません。　国庫からヴェヴェヴェインへ金が流れすぎています」

「ふむ、金か……解った。なんとかしよう」

　俺の力で、国規模の金銭の問題を解決する方法は一つしかない。

　ダンジョンの制覇しかない。しかも、それなりの規模のダンジョンを制覇する。

　そして、最奥の宝箱を得る。

　全冒険者の夢でもあり、多くの犠牲者を産む甘い罠だが、俺の力をメルティのために使える絶好の機会だ。

「このあたりでそれなりの規模のダンジョンだと、北のヴァテン山脈の大風穴か。

　ちょっといってくる。俺が居ない間頼んで良いな？」

「任せてくれ、それまでに、色々と、終わらせておく」

　俺が王都を離れることはあまり知られないほうが良い、特に、初期にギャベルについた輩はいつでも寝首をかこうと虎視眈々と狙っている。

　出来る限り早く、俺もカインも動かなければいけない。

「うちの村の奴らなら、良い力になってくれる。頼んだぞカイン」

「お任せください。メルティ様には指一本触れさせぬよう大切にお守りいたします」

「もし……そんな奴が現れたら……」

　ギリリっ、拳が骨を軋ませ音を出す。

「だ、大丈夫です、お任せください、それとこれをお使いください」

　カインから手渡されたのは袋、ただの袋ではない、魔道具の一つで収納袋と呼ばれる。

　こんな小さな袋一つで大量の物資をいれることの出来る魔道具で、非常に価値が高い。

「宝の中にありました。ぜひメルティ様のためにお役立てください」

　俺はうなづく、全てはメルティのために。

「あとは任せた。では、行ってくる」

　俺はすぐに馬にまたがり城を出た。

　目指すは北の地、ヴァテン山の麓にあるダンジョン街、クレスタール！