第二十六話 女神の受難? その1

これは、別の場所で延々と続いていく二人の人物のやりとり……



 バカ息子の手が首に伸びる。


「がはっ……が……く、苦しい……」


「キャハハハ、こうするとより一層具合が良くなる!

 ぶん殴るよりもやはりこれが一番だ!!」


 意識が遠のいていく……こ、こんな……最後……いや……


 ブツン




 美しい女神は、いつもの場所に引き戻された。

 今回の結果は、最近でも特に酷い。

 このループ生活もそれなりに経ってきたが、キーとなる人物と出会えること自体が非常に少ないことは、やはり、無理があると結論付けた。


「なんというか、酷かったね」


 その空間にもう一人の人物が現れる。

 このゲームに女神を縛り付けた張本人でもあり、この世界の創造主だ。


「……あのですね、やり過ぎって言葉知ってます!?」


「少しは反省した。この間の提言を受け入れよう」


「ようやくですか、確かに私は困難のゲームを乗り越えるのは好きですが、無理ゲーは嫌いなんです! あの人と出会えるというのは最低条件にしてください!」


「確かに、少しランダム性が強すぎたか」


「だから、何度も前から言ってるじゃないですか!」


「でも、後一回はやってみようかなーって何度もやったのはそっちだからね?」


「ま、まぁ、確かに、ランダム要素が強くても、なんとかなるかもって思ってた時期も私にもありましたが、もうごめんです。精神耐性があるにしても、あれは酷い、明らかなレギュレーション違反です!」


「確かに、その点は申開きもない。ま、やつにはいつか相応の報いが巡るようになってるさ」


「はぁ、悪趣味な先輩のゲームに巻き込まれて、もう何回目ですか……」


「そういう事言うと、最初の頃に戻すぞ?」


「ソレは勘弁してくださいごめんなさい。あんな生まれ戻っても、反省も対策も出来ないような状態は完全な無理ゲーです」


「お前が泣き叫んで頼むからこうして出てきてやったし、ある程度譲歩してやってるんだ。 感謝してほしいね、そもそもお前が俺のことを不意打ちで封印したのが悪い」


「不意打ちって、私は何度も悪趣味なプレイを止めるように警告しました。

 あの処置は仕方がないことです!」


「封印されるとどうなるか知ってるか? とにかくなにもない場所で何も出来ないまま時間だけを過ごすんだぞ、狂え無いことが憎らしかったよ」


「そのお返しに私をこの世界の内に縛ってるんですから、私もひどい目に合ってますー!」


「……結構楽しんでたときもあったよね?」


「まぁ、困難を乗り越えたときは、嬉しいですから……」


「生粋のゲーマーだなぁ君は」


「先輩に言われたくないです。

 とにかく、きちんと接点を持つまでは固定で、それからは、なんとかしていきます。なかなかメルティは私の思い通りに動いてくれないんですけど、まぁ、そこは他の手も使ってやりますよ」


「ほんと、好きだよね、逆転劇系」


「無理ゲーのギリギリからの逆転が一番燃えますからね!」


「まぁ、彼に開放してもらえるように、頑張って」


「先輩はあんまり過酷なことで邪魔するとまた文句言いますからね」


「僕は基本ノータッチ、いや、あの子は面白いからね、ほんと毎回全然違う物語を見せてくれて楽しいよ。今回はちょっと、君に運がなかったけども……」


「ごめんね、メルティ、次はもっとうまくやるからね。もうちょっとだけ自由度、いや、これ以上やったら操作してるみたいになるからなぁ、このもどかしい中でうまくやるのが醍醐味で……ブツブツ」


「なんだかんだ、ハマってるね。それでは、良い人生を……」


「うっしゃ、やるぞ!!」


 彼女の長い長い旅はまだまだこれからだった。

 しかし、この時の彼女はその事を知らない。

 こんな緩和程度でどうにかできるほど簡単なゲームに彼は招待しない。

 彼の悪趣味を軽く見ていた。

 それが彼女の誤算だった。

 そして、彼女をこの長いゲームに縛り付ける最大の理由が、今、動き出してしまった。

 彼女を永遠の輪廻に縛り付けるもの、ソレは彼女自身の信念ゲーム馬鹿だった。


 もう、クリアをするその瞬間まで、この永遠とも言える輪廻が終わることは無いのであった……


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