月夜瞑と月宮雅。

〈瞑の自宅・お風呂場・夜〉


――俺達は激しく汚れた体を洗い、ゆったりと湯船に浸かっていた。


瞑を後ろから抱き寄せ、何もせずただ身を寄せ合う。


お風呂場の電気は消され、扉を挟んだ洗面所から漏れ出す、薄明かりだけが俺達を照らし、俺達はとても穏やかな時間を過ごす。


……チャポッ――ピチャっ……。


【瞑】

「ねぇ……燈馬? “アナタは姫乃さんに殺されたのよね”?」


【燈馬】

「あぁ……そうだ。“アイツに”――“ヤリ殺された”」


【瞑】

「ふぅ……月宮さんのトコロに向かう前に、ある程度は教えて? “ナニがあったのか”……」


【燈馬】

「そうだな――まず、“燈馬が死ぬ原因になったそもそもの元凶”が……“姫乃恋”なんだ」


【瞑】

「うん……本当に“厭な話ね”――まさか……“片想いの相手に襲われて”――死ぬなんてね……?」


【燈馬】

「“これは俺の想像に過ぎない”――恐らくだが、アイツはな……ほんっと――長い間、“燈馬に復讐する為に生きていたんだろう”……」


【燈馬】

「色んな男に好意を持たれても、“全て断って綺麗な体のまま”、“今の今まで生きて来た”――」


【瞑】

「ふふっ……“面白い話”よね――体は穢さず……“心だけが穢れていったなんて”――ふぅ……ほんっと――」


【燈馬】

「あぁ……一回目は情けない話だがな、腰痛でダウン寸前のトコロを狙われて――“恋の家”で……その、まぁ……なんだ――“ヤッちまった”んだ……」


【瞑】

「ふふっ……? “月宮さんや私とヤリ過ぎて”?」


――ちゃぽっ……ピチャっ……。


【燈馬】

「あぁ……良く分かんねぇまま、お前らのペースに乗せられてなぁ……それで、腰を痛めて――葉子に腰をシバかれて……ピキっちまったんだよ――」


【瞑】

「……うふふっ? “今は大丈夫なの”?」


【燈馬】

「ふぅ……分かんねぇけど――環境に慣れたのか、なんなのか――今は一切、腰痛はないな」


【瞑】

「それは良かったわ……ふふっ――コレからも、たくさん使うんだもの? 駄目よ――そんなに弱ってたら……うふふっ? 私……“本当に激しいんだから”」


【燈馬】

「分かってる……“死ぬほどお前と愛し合った”」


【瞑】

「うん……“コレからも瞑の事を愛して”――?」


【燈馬】

「あぁ……勿論。それで……“最後どうなったか知りたいか”? “本当に笑えねえ話”だけどよ……」


【瞑】

「うん……聞かせて? “ナニがあったのかを”……」


【燈馬】

「……俺達はアイツの側近である、守や葵に話を着けに行ったんだ。俺達はお前らと関わるツモリはねえと。それで、恋に近付くなと説得しろよと……」


【瞑】

「うん……でも――“駄目だった”んだ?」


【燈馬】

「あぁ……そんな会話を喫茶店でした。だけど……その会話に恋は絡んできやがった――話がまとまって全員一致団結した矢先――俺達は……ハハッ――?」


【燈馬】

「俺達は恋に引き剥がされて……俺は恋の家まで、連れて行かれてだな……手足を縛られて、拘束されたまま――“ヤラれて”……ボロボロにされて死んだ」


【瞑】

「……ほんっと――“厭な話”ね? ふふっ……“たくさん気持ち良くなって”、“殺されたんだ”?」


【瞑】

「あ〜〜んな……可愛くて美しい子にされて、うっふふ……“死ぬまでヤラれて”……“快楽のまま”――あっはは……? あぁ……“燈馬らしいや”――ふふっ?」


【燈馬】

「……あぁ――そうだ。恋に気持ち良くさせられて、そのまま死んじまった……ほんっと、“最悪で最低な終わり方”をしちまったよ……“笑えねえ話”だ――」


【瞑】

「そう……“姫乃さんはどうだった”? “良かったのかな”……? ふふっ……“真面目に答えてね”――?」


【燈馬】

「嘘はつかねえ――“超”……“良かった”――」


【瞑】

「へぇ……“私くらい激しくて”、“メチャクチャだったんだ”? 凄く気になるなぁ……うっふふ?」


【燈馬】

「そうだな――“お前くらいヤベェヤツ”だったぜ……ほんっとうにイカれてた。あんな純潔っぽい奴が、超激しくて……“ド変態だった”んだよ――うん……」


【瞑】

「うっふふっ……? でも――気持ち良くて……とっても悦んで――“楽しんだんでしょう”? そんな激しくて、“美しくて可愛い子にヤラれて”さぁ……?」


【燈馬】

「うぐっ……ま――まぁ……“否定はしない”。でもな、瞑――“俺はお前の事を想いながら死んだ”……」


【燈馬】

「きっと――“本当の燈馬も”……“最後にはお前を想いながら死んだ筈だ”。ソレだけは――なんとなく分かるんだよ。“同じ男して”……きっとそうだろうって」


【瞑】

「でも……本当の燈馬も――アナタも死んじゃった」


【燈馬】

「あぁ……俺も、本当の燈馬も――“姫乃恋に全て壊されて”、“奪われて死んだ”……怖すぎんだろ?」


【瞑】

「えぇ……“本当にホラーね”? 本当に姫乃さんは、燈馬、“アナタに恨みを持っていたのね”……?」


【燈馬】

「分からん……アイツの口から直接聞いてねえんだよ――ただ、“初恋の人”だったってコトしか、知らねえんだ……今でも、“アイツの本心”が分からねぇ」


【瞑】

「ふぅむ……分かったわ。それじゃ前回ナニがあったか教えて?」


【燈馬】

「あぁ……前回はな――“腹痛”でな? 放課後……職員用のトイレで戦っていたワケだ……それはもう、うん……大激戦の大激闘の――負けられない戦いだ」


【瞑】

「ふふっ……? ソレはなに? “私達や別の女の子が原因の腹痛”?」


【燈馬】

「“怒らないで聞いてくれよ”……? まず、ループ二回目になるまで――“俺は様々な女の子を喰った”」


【瞑】

「あら……もしかして――“葉子も”?」


【燈馬】

「あぁ……例に洩れずだ――俺達に関係する、“ほぼ全ての女の子達と”――その……“関係を持った”」


……じゃバッ――グルッッ――ピタッ……。


【瞑】

「うふふっ……そうなんだぁ――」


むにゅっ……ギュっッ――。


【瞑】

「うっふふっ……いっぱい――“シタんだ”……?」


――むにゅっむにゅっ……ギュっッ――。


【燈馬】

「ぐぎっ……お――おん……し――“シタョ”……?」


【瞑】

「ふぅ……まぁ――イイわ? ふふっ……だって、この後――“月宮さんのトコロでも”……ふふっ?」


瞑は俺に抱き着き……耳許で囁く。


ピッタリサイズな湯船の中――。


俺達は薄暗いお風呂でギュッと……抱き合って。


【燈馬】

「だから……“我慢してくれよ”?」


【燈馬】

「その……このままじゃ――ずっと……瞑と過ごして、“朝まで一緒に居そうだし”――」


……ぎゅっ――。


【瞑】

「“ソレもイイかもね”……? 分からないけど……アナタは今まで、“月宮さんの下へ律儀”に行っていたのでしょう?」


【燈馬】

「あぁ……そうだ。一回目は良く分からないまま、俺は雅の下に向かい、“曖昧な関係を続けたんだ”」


【瞑】

「うふふっ……曖昧な関係? ナニソレ……?」


【燈馬】

「……そうだな――ふぅ……もうお前の下には行かないとか、そんな感じのコトを言った気がする……」


【瞑】

「ふぅ〜〜ん……? 本当に曖昧な終わり方をしたんだね?」


【燈馬】

「あぁ……そうだ。でも――二回目はちゃんと、“雅に別れを告げた”。“俺には彼女がいる”から、“ココで終わり”にしようって……ちゃんと伝えたんだ」


【瞑】

「うん……ソレは良い決断だね? きっと……いつまでも曖昧なままだと、“月宮さんとアナタは”……」


【燈馬】

「“ソレはないさ”……一回目も二回目も、“雅とはその一回限りの関係だった”――まぁ――ただ、アイツからは、また逢いに来てとか言われたけど……」


【瞑】

「まぁ……行かなくて正解かもね? 月宮さん――凄く綺麗で美しい子だから、あんな子とイチャイチャしてたら、ハマっちゃうわ? きっと……うん――」


【燈馬】

「あぁ……正直に話すと、恋も雅も――メチャクチャ良い女だった。でも……俺はお前を選んだ。それに――瞑……“お前が俺の初めての相手”だった――」


【燈馬】

「俺は……本当に瞑――“お前を特別に想っている”。散々、色んな女の子と関係を持ったけど、瞑以上の女はいない。ソレだけは嘘じゃない――本当だ……」


【瞑】

「うん……アリガト――そんなに私を想ってくれて、とても愛してくれて……ふふっ? 本当に嬉しい」


……ギュっッ――むにゅむにゅっ……ぐっッ――。


【瞑】

「燈馬……? “気にしないでね”……? 分かってるわ……“アナタが本当の燈馬じゃない事”で、気に病んでいるコトも……“私の気持ちを考えてる事も”――」


……パシャっ――ちゅっ……ツッ――。


【燈馬】

「えっ……?」


【瞑】

「大丈夫――もう……“本当の燈馬は居ないの”――」


【瞑】

「“居ないモノをいつまでも悔やんでも”、“前には進めないの”――だからね……? コレから――“一緒に私と作りましょう”? “明るい未来を”――“二人で”」


【燈馬】

「あぁ……本当に“創ろう”――“幸せな未来を”……」


【瞑】

「うん――燈馬……“ずっと一緒よ”? これからも、いつまでも……ずっとずっとずっと――“一緒に居るの”……お互い――“離れず放さないで”……?」


【燈馬】

「あぁ……“今度こそ放さないし離れない”――ずっとずっと……ずっと――“お前と一緒に生きて行く”」


【瞑】

「うん……」


……チャポッ――ぐっッ――チュッ……。


【瞑】

「“約束よ”……?」


【燈馬】

「あぁ……“約束する”」


俺達は薄暗いお風呂で、“誓いのキス”を交わした。


唇をソッ――と、触れるくらい優しいキスを。


【瞑】

「さて……軽く体を洗って、もう行きましょう?」


【瞑】

「早く……“月宮さんのトコロに行かないと”――」


【瞑】

「もう……私――“我慢”……“出来ないの”――」


【燈馬】

「――分かった……すぐに体を洗って出よう」


【瞑】

「うん……“月宮さんのお家で”――“続きしよ”?」


【燈馬】

「お……おん……あんまり、“雅弄るなよ”? アイツもアイツでヤバいんだから――ホントによ……」


【瞑】

「いや、弄るでしょ……無理よ? “あんなにイイ女の子”……“弄らないでどうするのよ”?」


【燈馬】

「そうじゃねえよ……まぁ――イイか……もう」


【瞑】

「あぁ……“そう言う話”?」


【燈馬】

「“そう言う話だよ”――分かんだろ? “俺達はマトモじゃないくらい”……“ヤリ合うってコト”」


【瞑】

「えぇ……まぁ――それで? もっと、“のめり込んだら”どうするんだよって……?」


【燈馬】

「そうだよ……“後で問題起きそうで怖いだろ”?」


【瞑】

「“知らないわよそんなの”……」


【燈馬】

「おいおい……大きく出たなおい――?」


【瞑】

「仕方がないでしょ? アナタも色んな女の子を食べた様に、私も……“アナタが食べた女の子を知りたいの”……」


【燈馬】

「そうかい……ただ、“ぶっ壊さないでくれよ”?」


【瞑】

「さぁ……どうかしらね? うっふふっ――“それも込みで調べなきゃね”……? 月宮さんがどんな女の子なのか――興味があるのよ……普通に」


【燈馬】

「ふぅ……“雅がどんな女の子”かって? 簡単に言えば――瞑……“お前と似てる”のかもな?」


【瞑】

「ふふっ……? “私と似てるの”?」


【燈馬】

「あぁ……激しさを除けば――どこかねっとりしていて、“キュンキュンさせる”って言うか――なんだろう……? うん――“燈馬を愛してんだなって思う”」


【瞑】

「そんな子を――“燈馬はコレから振るのね”?」


【燈馬】

「……そうだ。“手遅れになる前に”な――間違いなく、“月宮雅は絡み過ぎると危険な女”なんだよ……」


【瞑】

「アナタも少し、“未練があるのかしら”?」


【燈馬】

「言ったろ――瞑、お前と似てるかもって? “分かるだろ”……今はまだキュンキュンする時期かも知れない。でも……いつか――“アイツも過激になる”」


【瞑】

「そうなれば……“混乱すると”――?」


【燈馬】

「そうだ……きっと――“アイツはお前みたいに”、“過激でガンガン来る女に化ける”だろう……」


【燈馬】

「そんな状態になったら……“断れる自身が無い”」


【瞑】

「……ふふっ? “余計に気になっちゃった”――」


【燈馬】

「勘弁してくれよ……“これで最後にしたいんだ”」


【瞑】

「駄目よ……“そんな簡単に”、“ハッピーエンドには辿り着けないわ”?」


【瞑】

「“分かるでしょ”? “アナタこそ”……ふふっ?」


【燈馬】

「あぁ……結局、“巻き込んで巻き込まれながら”、最後まで行けって言うんだろ?」


【瞑】

「そう……きっと――アナタを取り巻く、“このセカイは”……“そう出来てるの”」


【瞑】

「“なるようにしかならない”……そうでしょ?」


……ピチャ――チャポッ……。


【燈馬】

「あぁ――“その通りだ”。そんじゃま……」


【燈馬】

「体洗って、歯磨きして――行きますか……」


【瞑】

「えぇ……“お互い泡だらけになって”、キレイにしてから行きましょう?」


【燈馬】

「……“今は駄目だぞ”――“分かってんな”?」


【瞑】

「ふふっ……“分かってるわ”?」


【燈馬】

「そんじゃ……ま――体洗おうか」


【瞑】

「うん……」


……ザバッ――ポタポタポタ……。


〈マンション・エレベーター内〉


――結局……“何も無いハズがない”……。


瞑は分かってると言いながら……やっぱり――。


【瞑】

「ふぅ……“サッパリしたわね”?」


【燈馬】

「いや……“コッチはゲッソリ”なんですけど……?」


【瞑】

「うふふっ……? “嘘は言ってないわ”? ちゃんと、“体をキレイにする為に洗った”んだもの」


【燈馬】

「あぁ……そうだな。しかし――外は寒そうだ」


【瞑】

「大丈夫……“私と月宮さんで”――“今日はホッカホカよ”?」


【燈馬】

「そう……だな――“間違いねぇ”……」


……チンッ――一階です。


【瞑】

「さてぇ……一旦、寒い外に出るわよ?」


【燈馬】

「あいよ――これくらい遅れたら、“コンビニで恋と遭遇しなそう”でイイや……」


【瞑】

「“前回の話”……?」


【燈馬】

「あぁ……“前々回の話だ”」


【瞑】

「その前に――出ましょう?」


【燈馬】

「あぁ……そうだな」


俺達はエレベーターから離れると、マンションの外へと出た。


〈マンション・入口前〉


――ヒュウゥ〜〜ブワッ――!!


【燈馬】

「ひゅうぅ〜〜さっぶっ――終わってらぁ!!」


【瞑】

「えぇ……お風呂から出たばかりだから、凄く寒く感じるわ――うぅ……ふふっ? でも気持ち良い」


【燈馬】

「……き――切り替え早いなお前……コッチは寒くて死にそうだぜ――いや、ガチのガチで本気で……」


【瞑】

「ふふっ……そうね? それで? さっきの続き教えて? コンビニで姫乃さんがどうとか……?」


【燈馬】

「あぁ……コンビニにある、“コンドーさんコーナーに目を奪われて”だな……? お恥ずかしい話だがね……眺めてたら、“恋に絡まれてさ”――?」


【瞑】

「うわっ――ほんっとタイミング悪いわね? ソレに、なんでそんなに眺めてたのよ……」


【燈馬】

「言ったろ……? “俺は経験したコトが無いって”」


【瞑】

「あぁ……ソレでか――まぁ……本当の燈馬も――そんなに私とシテ無かったわ? ほんっと――軽い軽い……“遊びみたいなモノだったわ”――」


【燈馬】

「……ふぅ――“コレから向かう場所は”……そんな本当の燈馬が……“ガッツリと絡んだ女の場所”だぜ?」


【瞑】

「ほんっと――“最低なヤツだわ”……“今考えると”」


【燈馬】

「まぁ……本当の燈馬がどんな展開で、死んだのかは知らねえが――十中八九……“恋ともヤッてるよ”」


【燈馬】

「じゃなきゃ――“本当の燈馬は死んでねぇよ”」


【瞑】

「でも……アナタも燈馬の体で、“関係するほぼ全ての女の子とヤッた”んでしょ? ふふっ……“もっと酷いじゃない”――“本当の燈馬より”ずっ――と……」


【燈馬】

「……そうです。でも――知らねえんだよ……瞑、お前が初だったんだから……どうやって、断るのかも分からなくてな――女性経験が無いってのは怖いよ」


【瞑】

「ふふっ……分かってる。ちょっと、からかってみただけ。アナタも本当の燈馬もきっと、同じコトになっていただろうし、仕方がないわ……?」


【燈馬】

「あぁ……“だから怖いんだよ”――一歩間違えば、いや……一歩間違わなくても――燈馬の周りにいる女の子達は、“魅力があり過ぎんだ”……冗談じゃなく」


【瞑】

「でも……“ずっとアナタは私を見てくれたんでしょ”? ソレだけで十分よ……ふふっ?」


【瞑】

「だって、これからは……“ナニがあっても”、“ずっと一緒なんだから”。それに――“アナタが他の女の子と仲良くなっても”、“絶対に取り返すわ”……?」


【燈馬】

「あぁ……“俺もそんなコトにならない様にする”」


【瞑】

「ふぅ……まぁ――“そんなコトにはならないでしょうね”……? “私達はお互い好き合ってるの”。“私は受け入れたのよ”――“アナタのコトを”……」


【瞑】

「そして――“アナタはオカシクなった私を受け入れたの”。あんな私の姿を見ても――アナタは私を受け入れて、“愛してると言ってくれたの”」


【燈馬】

「……そうだ。他はどう思うかは知らない。でもな……“お前がソレを普通だって思うなら”、俺はただ、受け入れるだけだ」


【燈馬】

「安心しろよ? どうせ……“俺達は離れられない”」


【瞑】

「そうね……“だから私はちっとも不安じゃない”」


【燈馬】

「それでイイ――それに……前回、俺は一歩前進したんだ。 ちゃんと……“月宮雅を振ってやった”」


【燈馬】

「“お前同様”――“とっても燈馬を愛している女へ”俺は……ちゃんと“最後”だと告げて――“別れたんだ”」


【瞑】

「“心苦しかったでしょう”……それは――」


【燈馬】

「あぁ……“メチャクチャにな”――だから、最後だからと……“一日だけ”――“本当の彼女の様に接した”」


【瞑】

「月宮さんは……“納得したの”?」


【燈馬】

「……結局――アイツは“一つだけ要求”してきた」


【瞑】

「んな……ナニを――?」


【燈馬】

「――“視力が回復したら”……“アナタの姿をちゃんと見てみたい”とか……確か、そんな感じのコトを言われてな……そのまま――関係を終わらせたんだ……」


【瞑】

「それで……アナタは渋々了承したと――?」


【燈馬】

「そうだ……どうしても断り切れなくてな……」


【瞑】

「ふぅ――まぁ……私でも断れないかもね? 色々とあったんだもの……月宮さんは――そんな彼女の最後の願いがそれなら……私もきっと――断れない」


【燈馬】

「言ったろ……だから怖いんだと。瞑、お前は分からないだろうが、お前も雅も――キュンキュンするタイプなんだよ……ムカつくほどな?」


【瞑】

「ナニその……“ムカつくほど”って――?」


【燈馬】

「“最大限の褒め言葉であり”、“皮肉だよ”――ソレほど、お前達はな……“魅力的でイイ女過ぎる”って事」


【瞑】

「そうなんだ? 燈馬がそう思うなら、そうなんでしょうね……? 私にとっては当たり前のコトであり、“当たり前の接し方”なんだもの――」


【燈馬】

「そのある意味、“病的な部分も含めて魅力的であり”、“超危険なのよ”……? “本当に男を駄目にするのよ”――“アナタ達みたいなタイプはね”……?」


【瞑】

「ふふっ……“なら楽しみだなぁ”――私から燈馬を奪った……女の子のお家へ行くんだもの……“本当に変な気分になっちゃうよ”……うっふふっ――?」


――歩きながらコンビニを目指す俺達は、コンビニの直ぐ側まで辿り着いていた。


俺は隣で歩く瞑へ視線を向けると……。


案の定――瞑は悪い顔をして……嗤っていた。


【瞑】

「ねぇ……燈馬? “今日はコンドーさん”――“使うのかな”?」


【燈馬】

「い……いや――? 多分……“使わないんぢゃないカナ”? うん……アナタ達そんなの使わずに、メチャクチャにするんだもの――ほんっと……ウン――」


【瞑】

「えぇ……そうね? うっふふっ――使わないわ? そんなモノより、お茶とか軽食買いましょう?」


【燈馬】

「お……おん――そうだな。全く――“ハードな夜”になっちまうぜ……カロリー高そうだから、ちゃんと買い込んで行こう」


【瞑】

「そもそも……“アナタが私を誘ったのよ”? 覚えてるよね? “お前も月宮のトコロに行くかって”?」


【燈馬】

「おう……俺が誘ったょ……?」


【瞑】

「でしょ……? まぁ――でも、今回は“私も勝手に着いて行ったと思う”。なんとなくだけど、何だかんだで、私も月宮さんのお家まで行っていたわ?」


【燈馬】

「……ま、“そんなコトだろう”と思ってな? 俺もなんとなく……お前を誘ったんだよ――瞑」


【瞑】

「だって気になるじゃない……アナタと月宮さんがナニをしているのか――ずっとずっと、気になっていたのよ? “アナタは知らないと思うけど”……」


【燈馬】

「……“知ってるよ”。お前が燈馬を気にして、朝方に雅の家まで迎えに来たコトも……まぁ――“前回のお前の話だけどな”? “きっと不安だったんだ”――」


【瞑】

「そうよ……“不安だった”――“私から燈馬は心が離れて行くのが”……“分かったから”」


……ポンッ――。


【燈馬】

「おら……“着いたぜ”? 寒いし、入ろうぜ……?」


【瞑】

「あ……うん――入ろうか? “燈馬”」


【燈馬】

「あぁ……“瞑”」


――俺は優しく瞑の頭を叩いた。


なんとなく……湿っぽい空気を感じて。


気分が沈みそうになったのだ――。


俺は……悲しそうな瞑を見たくなかった。


これ以上、重苦しい話は懲り懲りなのだ……。


〈コンビニ・店内〉


――チラッとだけ気になって、俺達はコンドーさんコーナーを覗いた。


でも……ソッ――と、目を逸らし、俺達は素早く買い物を済ます。


【瞑】

「燈馬はあと“何を買うの”……?」


【燈馬】

「んあ……? んなもんお前――“ヤニ”に決まってんだろ……バッ――言わせんなって……ったく……後はそうだな? でっけぇ――“コーヒーでも買うわ”」


【瞑】

「ふふっ……絶対、“本当の燈馬が選ばないモノね”」


【燈馬】

「ワリぃな……“オッサンなんだ俺は”……ハハッ――」


【瞑】

「ふふっ……“本当に変なの”――」


【燈馬】

「あぁ……“ソレでいい”――」


【瞑】

「えっ……? “ナニが”?」


【燈馬】

「いや――ナンでもねえさ? “コッチの話”」


【瞑】

「うん……分かったわ。さ――姫乃さんと遭遇しないように、早く買い物済ませましょう?」


【燈馬】

「おう……そうだな? 用心は必要だ本当に」


そのまま素早く会計を済ませて……。


《住宅街・道中》


――俺は用心して、コンビニ前でタバコを吸わずに、周りに誰も居ない事を確認し、タバコを吹かしながら歩いていた。


ユラユラ……。


【燈馬】

「すぅ〜〜ふぅ……あぁ――“脳がシャキッとすらぁ”……軽くじゃなく――“重くイッちまいそうだ”」


【瞑】

「なんだか――“凄く様になってる”わね……?」


【燈馬】

「ったりめぇよ――“何年吸ってんだって話”」


【燈馬】

「“タバコ吸うくらいしか“、“楽しみが無かったんだ”……俺はな――タバコが吸えて、飯が喰えたらそれで十分なんだ」


【瞑】

「うん……そんな気がするよ。“アナタが透けて見えるもの”――ほんっ――と、うふふっ……?」


【燈馬】

「瞑――“お前に教えてやる”……“人生に於いて一番ナニが大切なのかを”――」


【瞑】

「うん……教えて?」


【燈馬】

「ふぅ……“ソレはナニか”――」


ユラユラ……ヒュ〜〜〜〜ッッ!!


ブワッ――――ッ!!


【燈馬】

「それはな――“些細な幸せに気がつけるコトだ”」


【瞑】

「あぁ……うん――“間違いないね”?」


【燈馬】

「“現代人はな”――“贅沢なんだよ”……ほんっと」


【燈馬】

「すぅ……ふぅ……息吸えて、生きてるだけ儲けもんで、“とてつもなく幸運なコト”だ」


【燈馬】

「分かるか……? “幸せ過ぎて”――“ソレが分からなくなって”、“不幸だと思い始めるアホが多い事を”」


【燈馬】

「こうして――お前と話を出来て、タバコをふかせりゃあぁ……“超幸運だってんだよ”――」


【燈馬】

「“いつまでもあると思うな”? “人生ってのは刹那的なんだ”。お前もソレが分かったら、“どんな些細なコトでも幸せだと思いな”――“ソレが本質だ”」


【瞑】

「“さすがオッサンだね”……? そんなコト、絶対に燈馬は言わないもん? うふふっ……マジウケる」


【燈馬】

「だろ……? ウケんだよ、オッサンの話は……ほんっと――お前……。“なんかあったら思い出せ”」


【燈馬】

「息吸って、生きてるだけ儲けもん。雨風凌げて飯も喰えるだけ超幸せで、超幸運なんだと……」


【燈馬】

「誰も教えてくれねえぞ? んなコト……」


コレは俺の持論だった。でも……物事の本質を捉えれば、息吸って生きてるだけでも凄く、幸運でありがたいコトなのだ。


くたばったら最後――這い上がるコトも出来ない。


喜ぶ事も悲しむ事も――何もかも……出来ない。


死は全てを破壊し――無に返す。


だからこそ、“ただ生きてるだけ儲けもん”なのだ。


【瞑】

「ほんっと――“今のアナタは自由よね”?」


【燈馬】

「あったりめぇよ……せっかく若い体を授かったんだからお前……自由にしないワケがない!!」


【瞑】

「そうね……アナタは一度――いや、“何度も死んでまた戻ってきた”んだもんね?」


【燈馬】

「そうだ……だから、“ありがたく足掻かせてもらうだけだ”。“コレを無駄には出来ねぇんだ”……」


【燈馬】

「言っただろ――“コレで終わらせると”」


【瞑】

「うん……“だから連れて行ってよ”?」


【瞑】

「“本当に幸せな未来へ”――」


【燈馬】

「あったりめぇだよ――“ヤラれっ放しは”、イケナイぜ? 必ず……“この絶望の未来を変えてやる”」


【瞑】

「なんだか――“アナタは熱い男なのね”?」


【燈馬】

「……熱い? バカを言うな――“灼熱だよ”」


【燈馬】

「“男って生き物は沈んでからが本番”なんだ。ボロボロになっても、立ち向かって解決まで向かう」


【燈馬】

「ソレが、“男の習性”であり“終生だ”――」


……ポンポン――。


【瞑】

「はぁい……“とうちゃ〜〜く”――うっふふ? さあて……“魅せてもらおっかなぁ”――“そんな灼熱な男なアナタの姿を”……ふふっ――?」


【燈馬】

「おぉふっ――“遂に来ちまったか”……ハァ――」


【瞑】

「“気が重いなぁ”〜〜って? うっふふっ――“心と体が着いて来てないじゃない”……?」


【燈馬】

「バッ――そ……ソレも――お……“男の習性”なんだよっッ――!!」


……グイッッ!! ドッ――!!


【瞑】

「ハイハイ……玄関に行きましょうね?」


【燈馬】

「ちょッッ――?! まっ――まって? 押さないでよぉ!! ちょっとほらそのぉ……アレじゃん?」


【瞑】

「なによ? “最初の導入どうしよっかな”って?」


【燈馬】

「ふぅ……分かってるよ。“男なら出たトコ勝負”だろ? ハイハイ……任せてくださいよぉ!! おおん……行きますから、押さないでね? うん……」


【瞑】

「よし……っと――ふぃ〜〜っ……寒いし、早く入ろ?」


【燈馬】

「ふぃ〜〜っじゃないよ――全く、“コレだから若いヤツは駄目だねぇ”……あぁ――ヤダヤダ……もう」


【瞑】

「ハイハイ……行くよ?」


【燈馬】

「ふぅ……そんじゃ――ま……行きますか――」


【瞑】

「えぇ……“燈馬を誘惑した女の子のお家へ”――」


【燈馬】

「うぐっ――“言い方よ”……」


【瞑】

「だってそうでしょ? “事実だし”――?」


【燈馬】

「まぁ……ね――?」


――そんなワケで、俺達は月宮雅の自宅へ足を運んでいた。


何事も起きなければイイ……。


そう思っても、きっと――起きまくるのだ。


俺はビクビクと震えた手で……玄関の鍵を開ける。


……ピタッ――キュッ!!


【瞑】

「うっふふっ……ほらぁ? “支えてあげるわ”?」


【燈馬】

「……お――おう……そんじゃ――“開けるぞ”?」


【瞑】

「うん……寒いから早くして?」


【燈馬】

「あいよ……それ――!!」


……カチャカチャ――ガチャンッッ!!


【瞑】

「はい、“ミッションクリア”〜〜!!」


【燈馬】

「おい……騒ぐなって――“夜遅いんだから”……」


【瞑】

「うふふっ……? なんだか――“駄目なコト”してるみたいでさ? 少しワクワクしちゃったのよ……」


【燈馬】

「へいへい……もっとワクワクするのは、“この先だよ”――“お前がたくさん悦ぶコトが溢れてる”ぜ……」


【瞑】

「うん……“たくさん悦ぶわね”? さぁ……行こ?」


【燈馬】

「あぁ……」


――俺達は、ほんっと……ゴタゴタしながら雅の自宅へとあがった。


本当に予測不能なコトが起きそうで、内心……。


俺は超ドキドキしていた。


でも……もう後戻りは出来ない――。


俺は彼女である、瞑を連れて雅の下へ来てしまったのだから。


このまま俺達は新展開へとひたすら――。


突き進んで行く……。

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