世界はまたループし、始まりの日へ巻き戻る。
〈???〉
――暖かな温もりを感じる。
それに……“どこか懐かしい匂いがして”……。
俺はソッ――と、目を覚ました。
【燈馬】
「……ははっ――“嘘でしょ”……?」
……モゾモゾッ――しゅりしゅりっ〜〜。
【瞑】
「むぅ……ふぅ――燈馬ぁ……起きたのぉ……?」
【燈馬】
「……あぁ――“起きてるぜ”……?」
俺は目を疑った。
“最後かと思っていたループ”が――。
また――“起こっていた”のだから……。
瞑の長い長い黒髪から香る――柑橘系のイイ匂い。
瞑の温もりを感じながら……布団でぬくぬくしていたあの……“始まりの日へ”――。
【瞑】
「うぅ……燈馬ぁ――“まだ眠いんだけど”……」
……キュッ――。
【燈馬】
「……ふぅ――瞑……少し、“話をしないか”?」
【瞑】
「……んぇ? ちょっと待って……“別れ話”とかじゃないよね……? いやよ――そんな話……」
【燈馬】
「……ちげぇよ――“本当に大事な話をしなきゃならない”――“別れ話じゃない”……“お前の事は愛しているんだから”……」
【瞑】
「ちょっと待って――えっ……? ちょっと理解が追い付かない……」
【燈馬】
「……眠いなら、“このままでもイイ”――でも、お前はきっとビックリして……“怯える事になる”」
【燈馬】
「どうする……? このまま寝ながら聞くのか、それとも……“ちゃんと起きて聞くのか”――」
【燈馬】
「瞑……“お前に任せる”」
――“俺は覚悟を決めた”。運良くまたループしただけかも知れない。
こんなチャンス、“三度目はきっと無い”のだ――。
だから……“最初から全て”を伝える事にした。
内心……とてもビクビク怯えている事は否めない。
でも――ココで言わなきゃ、絶対に伝えられないのだから……。
俺は勇気を振り絞って、瞑に伝えるだけ。
“コレが最終章”だと思って――。
ただ……瞑に真実を伝えるのだ。
【瞑】
「……“このままがいい”。それで……“何を私に話したいの”? “私が怯えるですって”……? 笑わせないで……“絶対にそんなコトはないから”――」
……キュッ――スリスリっ……。
【燈馬】
「そっか……なら、“単刀直入に言う”」
【燈馬】
「“お前の眼の前に居る”……“燈馬は死んだ”」
【瞑】
「……は? あっはは――?! 朝からどうしたのよ燈馬……“ナニ言ってるの”? 燈馬は燈馬じゃない」
【燈馬】
「ふぅ……そして――“俺は燈馬じゃない”……」
【瞑】
「は……はぁ?! 本当にオカシイよ……燈馬? ナニソレ……“意味分からないわ”――?」
【燈馬】
「……“俺も意味分かんねぇよ”――ふぅ……お前の眼の前に居るヤツは――“四季司郎”ってんだよ……」
【瞑】
「し……しき――し……ろう? だ――“誰ソレ”?」
【燈馬】
「ソレに……な? はは……“ソイツはさ”……」
俺はチョットだけ、真実を伝えるのを躊躇した。
でも……もう遅い――瞑が悲しむかも知れない。
だけど……ソレでも――伝えなきゃいけない。
だから俺は“玉砕覚悟”で瞑に伝える。
本当は嫌だけれど……これで瞑に嫌われて、拒絶されて別れるコトになっても――。
俺は伝えなければいけないのだ。
【燈馬】
「……“ただの無職で三十路なオッサンだ”――」
……へにゃあぁ――。
【瞑】
「……なによソレ――ふふっ? 今のアナタは……無職の三十路なオッサン――? あっははっ……ナニソレ……くっひひっ――マジで意味分からない……」
【燈馬】
「ソレに……“俺はこの世界で二回死んだ”――あっはは……“ウケるだろ”? ひひっ――“マジで意味分かんねぇし”……」
【瞑】
「うふふっ……? つまり――“アナタはループしてココまで戻ってきたってコト”?」
【燈馬】
「あぁ……そうだ。“本当の燈馬はもういない”」
【燈馬】
「“信じられないだろうけど”……本当の燈馬が死んで……タイミング良く――“俺がすり替わった”」
【瞑】
「……ソレじゃ――“過去の私達の思い出も”、“なにもかも”……“空っぽってコトなの”――?」
瞑は少しだけ声を震わせて、俺に問い掛けた。
【燈馬】
「あぁ……“ねぇよ”――“一欠片もねぇさ”……“本当に俺は過去のお前を知らねぇんだ”――わりぃな……?」
【瞑】
「ふふっ……“過去の記憶がまっさらなんだ”――」
【燈馬】
「あぁ……“本当にゴメン”――“俺が知っているコトはただ一つ”……“ココから数週間”、“お前と過ごした記憶だけが残ってる”……」
【瞑】
「うっふふっ……? “中身オッサンの燈馬と私の記憶だけ”? あっはっはっはっ――あぁ……面白いなぁ……“朝からバカみたいな話をして”……ふふっ?」
【燈馬】
「あぁ……“お前と逢うのはコレで三度目になる”」
【瞑】
「へぇ……? “面白そうじゃない”――教えて、“二回目までの私達の物語を”――」
【燈馬】
「そうだなぁ……“過去のお前に”、“申し訳無い”んだけどさ――ソレでもイイか?」
【瞑】
「えぇ……イイわ? 私にはそんな記憶無いし? その過去の私と、アナタがどんな風になってても、問題無いわ?」
【燈馬】
「そっか……なら、“初めに謝らせてくれ”」
【瞑】
「えぇ……“お好きにどうぞ”?」
【燈馬】
「まず……二回とも――俺は……瞑、君に“俺がすり替わったコトを、伝えられずにいた”……」
【瞑】
「でしょうね――私がアナタでも話せないかもだし……だって、気がついたら女の子と寝ているんだよ? あっははっ――そりゃ怖いって……本当」
【燈馬】
「あぁ……でも、“ドコかのタイミング”で、言おうとは思ってた――でも、“出来なかったんだよ”」
【瞑】
「“その二回目までの私と”……“仲良くなったの”?」
【燈馬】
「あぁ……不本意――いや、“本当に愛し合った”」
【瞑】
「うふふっ……そうなんだ――“燈馬と私は本当に愛し合ったんだね”……?」
【燈馬】
「あぁ……ソレで――ドンドン……過去の君に言い出せなくなってな――ハハッ……最低な話だ」
【瞑】
「ふぅ……でも、アナタは今、“どんな状況なのか分かっている”のでしょ……?」
【燈馬】
「あぁ……“知ってる”。“本当の燈馬は”――“君のコトより”……“月宮雅に惹かれて落ちかけていた”」
もう……三回目なのだ。“ほとんどのコトを知っている”。
――“最後のピース”……。
夢(む)月(つき)凛(りん)を除いた全てを。
【瞑】
「そうそう……月宮さんにアナタ――“惚れていたんでしょ”? あ――“本来の燈馬は”……ね?」
【燈馬】
「あぁ……そうだ。瞑……“君にも話しておこう”」
【燈馬】
「どうして……本来の燈馬が、“月宮雅とデキてしまったのか”――そんな……“君にとって厭な話を”――」
【瞑】
「イイよ……“そんな堅苦しく話さなくて”――好きな様に教えて頂戴? まだ……信じられないけど、話だけは聞きたいから……」
【燈馬】
「あぁ……そうかよ。なら、“黙って聞けよ”?」
【瞑】
「ふふっ……凄い口が悪いのね? ちょっと怖いわ……うふふっ?」
【燈馬】
「……仕方がねぇだろ? 中身、三十路なオッサン何だからよ――“若さがねぇんだよコッチには”」
【瞑】
「ふぅ……ふふっ? それで? 続けて頂戴」
【燈馬】
「お……おん――なら、教えてやるよお前に」
【瞑】
「うん……」
……キュッ――。
瞑は俺の体を少しだけ強く抱き締める。
なんだか……本当に瞑は淋しそうに見えた。
【燈馬】
「……まずなぁ――燈馬って奴は本当に、情に厚く、そして……“とっても優しいヤツだった”――らしい」
【瞑】
「うん……」
【燈馬】
「……“そんな燈馬に惚れた雅は”――ある日……」
【燈馬】
「ふぅ……“燈馬を襲って”――“お前から奪った”」
【瞑】
「――そうだったんだ……“月宮さんが先に襲ったんだ”……ふふっ――まぁ……“燈馬らしいや”?」
【瞑】
「……だって、“私も”――半分……“燈馬を襲った形でヤッたんだもの”――ふふっ……我慢できなくてね?」
【燈馬】
「……ソレは別に良いだろ――お前らが、ドレだけ長い月日重ねて来たか、コッチには知らねえけど、ソレなりの関係値があったんだろ……?」
【瞑】
「うん……“小学くらいの頃からの付き合いかな”?」
【燈馬】
「超幼馴染じゃん……“そりゃ襲って正解だぜ”?」
【瞑】
「ふふっ……でも、ソレも――“一年も経ってないんだぁ”……付き合ってまだ日も浅くてね……ふふっ――ソレなのに――“途中で月宮さんが現れたの”……」
【燈馬】
「あぁ……アイツはイジメを受けていた。ソレでイジメた奴等をボッコボコにして、ショックで視力が弱まった……雅の下へ通って――デキてしまった」
【燈馬】
「ふぅ……俺も何度か体感したから分かるが、月宮雅は――“普通に美しくて可愛かった”……いや、ココで話す内容じゃねぇか――?」
……ぎゅっッ!!
【瞑】
「ううん……“教えて欲しいなぁ”〜〜? “月宮さんのコト”……“怒らないから教えてよ”……?」
【燈馬】
「……ワカリマシタ――んじゃ、簡潔に教えてやるよ。まず、病的な程肌が白く、透き通って見えてだな……おっぺぇも大きくて――すんごいの……」
【瞑】
「ソレでソレで? うふふっ……教えて?」
【燈馬】
「……その、あの、えと、あっと――雅はなぁ……うん……スンゴイ――激しくて……うん――あぁ見えてな? “グイグイ来て”――とっても……美しかった」
【瞑】
「へぇ……“凄くおとなしい子だと思ってた”――そんなに激しく、グイグイ来る子だったんだね……?」
【燈馬】
「ふぅ……“お前程じゃねえよ”――あ、“過去のお前の話だけどよ”……」
【瞑】
「ふぅ〜〜ん? “知ってるんだぁ”……私が――結構、グイグイして……“激しいコトも”――?」
【燈馬】
「言ったろ――“今のお前は三回目の瞑”なんだよ」
【燈馬】
「“お前の秘密の部屋の存在も知ってるし”、“中がどうなってるのかも知ってる”」
【瞑】
「じゃあ……教えてよ? “秘密の部屋のコト”……」
【燈馬】
「あぁ……イイぜ? お前の秘密の部屋はなぁ……もうめっちゃくちゃ、ぐっちゃぐちゃで、色んなオモチャが散乱して、“とにかく汚れて穢れた部屋だ”」
【瞑】
「……ふぅ――“どうやら本当みたいだね”? アナタにも、葉子にも……入れさせなかったし、アナタ達が入った形跡もないし……ね?」
【燈馬】
「当たり前だろ――あんな部屋、開けた瞬間、臭いでバレるだろ……」
【瞑】
「そうね……間違いないわ? ふふっ――なら本当に、“アナタは無職で三十路なオッサンなのね”?」
【燈馬】
「あぁ……寒い夜の外でタバコ吸って、家に戻ろうとして……心臓がクラッシュして――そのまま、しょうもない死を迎えたオッサンだよ……」
【瞑】
「ソレで……“死んだ燈馬と”――“すり替わった”?」
【燈馬】
「あぁ……そうだ。そして今は“二度目のループだ”」
【瞑】
「分かったわ……“真面目に話を聞くわ”?」
【燈馬】
「イイだろう……まず一回目は、“姫乃恋に”……殺されたんだ」
【燈馬】
「“二回目も”……“姫乃恋に”――“殺された”」
【瞑】
「どうして……“姫乃さんに殺されたの”?」
【燈馬】
「……ハァ――“本当にバカげた話だがよ”……“姫乃恋は幼稚園時代に”、“燈馬に振られて”……そのコトをだな――“今までずっと憎んで恨んでる”のさ……?」
【瞑】
「……“重たい話ね”――そんな昔のコトをずっとずっと、覚えているなんて……“普通覚えてないって”」
【燈馬】
「だろ……? どうせアイツ、自分が可愛いから周りから、チヤホヤされたんだろう? で、だ……本来の燈馬は思いっ切り振ったんだろ……知らねぇが」
【瞑】
「まぁ……そうだろうね――アナタはトラブルメーカーだもの」
【燈馬】
「でな……? アイツ言ってたんだよ……ははっ? “本当に興味無さそうにしてる”って……確か、そんな感じのコトを言ってたぜ?」
【燈馬】
「マジでウケるよな……“今も昔も”……素っ気ない態度されてるってさ? でな……お前が言ってたんだ……なら先に燈馬を落とせばイイとかなんとか」
【瞑】
「……あははっ――?! そりゃイイわね――確かにそんなコト私言うのかも……だって、実際そうなんだもの――“先に手を出したもの勝ちでしょ”……?」
【燈馬】
「あぁ……“そう言うコトだ”――欲しいものがあるのなら、“行動しなければ手に入らない”。だから、瞑は正しいぞ? “自分で燈馬を落としたんだから”」
【瞑】
「まぁ……その後、コロッと――月宮さんに落とされちゃったんだけどね? ふふっ……ウケるわね?」
【燈馬】
「全く――“どうしようもねぇな”……俺達は――」
【瞑】
「えぇ……本当の燈馬は月宮さんに奪われ、最後に姫乃さんに殺されて? 今のアナタは燈馬じゃない……? “本当に笑えないほどウケるわ”――」
【燈馬】
「……で、どうする? “俺達”……“別れるか”?」
【瞑】
「えっ……? なんでそんな話になるのよ?」
【燈馬】
「ふぅ……いや、中身……“無職な三十路なオッサンだし”――? どう考えても、嫌だろうよ……そんなの」
【燈馬】
「ちなみに俺だったら怖くて怯えてるよ……そんな知らないオッサンと、寝てたらお前――ビビるだろ普通に……?」
【瞑】
「まぁ……そうね? でも――なんだろう……凄く落ち着くんだよね――ふふっ……“変なかんじだなぁ”」
【燈馬】
「そりゃ……たまに遊びに来る、“親戚のねぇちゃんに会った時の様な”、“刹那的感情”だよ……」
【燈馬】
「最初はなんか久し振りにあって、ホッとするけど、すぐにウザくなってだな……早く帰ってくんねえかって思う――“あれと同じだよ”……分かるお前?」
【瞑】
「ふふっ……スンゴイ早口ね――ほんっと……アナタがどんな人なのか――“透けて見えてくるわ”……?」
【燈馬】
「ワリぃな……俺は――頑張っても……社会に馴染めなかった、情けないオッサンなんだよ……ふふっ、マジで笑えねぇっての――“マジで終わってる”……」
【瞑】
「だからなのかな……なんか色々と、頑張って失敗して、色々と学んできた……“そんな雰囲気を感じたの”……うん――ソレが落ち着くのかな……ふふっ?」
【燈馬】
「いや……まぁ――ソレなりに……社会に馴染もうとはして、頑張ってたさ――でも、社会に馴染む才能が無くてな……“気がついたら無職になってた”――」
【瞑】
「ふぅ……“そのままアナタも死んじゃったんだ”?」
【燈馬】
「そうだよ……仕事探さなきゃなって――思ってた頃にな……マジでアホみたいな死に方して、そのまま死んだ燈馬の体に、“命が宿りやがったんだ”……」
本当に妙な話だった――。
まさか俺が未完のWEB小説の中に入り……。
悪役である燈馬にすり替わるなんて――。
本当に意味が分からない話だった。
【瞑】
「そう……でも、大丈夫よ? この世界はね……無職なんて、“ほとんど居ないセカイ”なんだもの……」
【燈馬】
「知ってるよ……“お前は知らねぇコトだけどよ”、俺は、“携帯電話やスマホがある時代で生きてた”」
【瞑】
「……そ――“そんな時代に”?! 今じゃ禁止されてるのよ? “仕事以外は使えない世の中で”、“一般人は全員所持は出来ないの”……」
【燈馬】
「もし、“ソレを破るとどうなる”……?」
【瞑】
「“一発で刑務所行きよ”? それに、“業務以外は使えないシステム”なのよ。 基地局なんてないし、全部が衛生で管理されてね? 凄いのよもう……」
【燈馬】
「なんだっけ……? 政府いわく……“携帯端末は使うとバカになるから”、禁止にしたとかだっけ?」
【瞑】
「そうそう……そんな感じよ? 本当に端末毎に登録が必要でね? 用途以外で使うとか、第三者に渡るとかは、“衛生で一発でバレるわ”?」
【瞑】
「それに――不正検知したら、遠隔で端末を一発ロックするとからしいわよ? あと、“セキュリティ破ったら”、“死刑らしいわ”……」
【燈馬】
「ひぃ……!? こ……こわひぃ――なら、俺達の住んでた時代は……“もれなく全員死刑レベルだわ”」
【燈馬】
「スマホで動画見たり、ライブ中継見たり、友達にメールや電話も出来て、なんでも出来たんだから」
【瞑】
「へぇ……イイわね――そんなセカイも……」
【燈馬】
「“だからだろ”? このセカイは――“あまりにも良過ぎたテクノロジー”は、“危険だと判断した”」
【燈馬】
「世の中そんなもんだ……あまりにも、“良すぎても毒になるんだ”。“適度な不便さは必要なんだよ”」
【瞑】
「うん……そうだね? そんな便利なモノがあったなら、毎日電話して、メールもしちゃうし……」
【燈馬】
「そうだ……気軽すぎて、“どっぷり浸かったら最後だよ”――“戻れなくなるんだ”……“無い生活に”」
タバコもスマホも一緒なのだ――。
ずっと、ずっと……寄り添っていつでも、どこでも一緒だった。
ある日、ソレが全部禁止になったと思えば……。
どれだけ恐怖する事か――。
考えたくもないコトだった。
そうなる前に、政府は手を打ったのだ……。
国民が依存してバカになる前に……。
あまりにも、“便利な世の中は文明を滅ぼす”。
ドンドンと良くなれば良くなるほど……。
人は考えなくなる、“全てナニかがやってくれる”。
そうなれば……“人が人じゃなくなるのだ”。
少し不便な世の中の方が、ありがたみも幸福度も上がる事だろう。
昔は漫画の新刊が出たら、チャリンコを漕いで、ワクワクしながら向かったり……。
レアな商品が欲しかったら、1日中走り回って探しに向かったり……。
色んなコトがあった――。
本当に不便だった時代だった。
でも……“今よりずっと”――“幸せだった”……。
自らの足で欲しい物を手に入れる為に、必死になって、駆け回った日々……。
そんな当たり前の日常も――“突如終わった”。
読みたい漫画はネットで読めて、欲しいレアな商品は大抵、ネット通販で一発注文……。
欲しいものがすぐに手に入る便利な世の中。
“その代償として”……“感動や幸せは薄れて行く”。
それでも……“現実世界はもう”――“戻れない”。
“知ってしまったが最後”――誰も戻れない……。
薄れ行く感動や幸せに気付かず――。
“人々は今を生きている”……。
【瞑】
「ふぅ……随分――“考え込んでるわね”?」
【燈馬】
「あぁ……本当に――“異世界に迷い込んじゃったなって”……な?」
【燈馬】
「でも……“良いセカイだ”――ココは」
【瞑】
「ふふっ……? “なんでそう思うの”?」
【燈馬】
「ふぅ……“携帯電話もスマホも無いセカイだからだよ”――このまま、発展し続ければ、“いつか終わりはやって来る”。その前にヤメたのは正解だよ……」
【瞑】
「そうかもね……便利なアイテムがあったら、ずっとソレに夢中になっちゃうわ?」
【燈馬】
「あぁ……俺達の時代はな――みんなスマホに夢中になってた。若いクソガキから……死にかけの爺さん婆さんまで……スマホ三昧よ――終わってる」
【燈馬】
「ドコにいようが、ナニしてようが……スマホ三昧の日々。一年間ずっと……スマホと戯れて、バッテリーが切れそうだとソワソワして……もう中毒だ」
【瞑】
「それも……“ほぼ全ての人々がでしょ”?」
【燈馬】
「あぁ……そうだ――“ほとんどが中毒だ”……」
【瞑】
「“凄い時代に生きてたのね”……アナタは――」
【燈馬】
「あぁ……“終わりの始まりな世界にいた”……」
【瞑】
「それじゃ……“このセカイで楽しまなきゃ”」
【燈馬】
「……あぁ――ソレで? “俺と別れなくてイイのかよ”? さっきも言ったけどよ、俺は燈馬の皮を被った、“別人のオッサンだぜ”……?」
【瞑】
「ふふっ……? “イイわよ”――別に。だって、“本当の燈馬は月宮さんに”、“取られちゃったんだもん”」
【瞑】
「結局――“私もアナタと一緒”。“負けたのよ”……」
【燈馬】
「あぁ……“前回のお前からも”、“似た様なコト聞いたぜ”……? マジでウケる……マジで、“お前はイカれてるよ”――“頭のネジ全部飛んでるレベルで”」
【瞑】
「ふふっ……そうよ――“既に壊れてるの”。“燈馬が好きで好きで好きで”……もう――一人で暴走しちゃって……ふふっ――“オカシクなってるのよ”……?」
【燈馬】
「言っとくけど……“俺は燈馬じゃねぇからな”?」
【瞑】
「うん……“イイよ”? だって……“燈馬はもうこの世に居ないんでしょ”――?」
【燈馬】
「そうだよ……“だから俺がすり替わった”」
【瞑】
「ほんっと――災難だね……“二人共死んじゃって”」
【瞑】
「でも……さ――?」
【燈馬】
「なんだよ……言い淀んで……?」
【瞑】
「“コレが三度目なんだよね”……? すり替わったアナタと、“私が出逢ったのは”?」
【燈馬】
「そうだよ……今が三度目で――ループは二回目だぜ……」
【瞑】
「それじゃ……“死ぬ未来を変えなきゃ”――」
【燈馬】
「分かってる――“これで最後にしたい”。ソレにさ……“もう一度ループ出来る保証は無いんだ”」
【瞑】
「なら……“終わらせましょう”? “そんな悲しい結末を”……アナタも――“ソレを望んでいるんでしょ”」
【燈馬】
「あぁ……“瞑”――“お前と幸せな未来を夢見てた”」
【瞑】
「そう……“本当の燈馬は死んでココには居ない”」
【瞑】
「でも……イイよ? “付き合ってあげる”。どうせ本当の燈馬が生きていても、月宮さんにガッツリと心奪われて、終わってたしね……?」
【燈馬】
「本当にイイんだな? こんな無職で三十路な、どこの馬の骨かも分からねぇヤツでよ……?」
【瞑】
「えぇ……イイわ? 興味が湧いちゃったし……ねぇ――アナタ……“四季司郎さんだっけ”……?」
【燈馬】
「ヤメてくれ――“ソイツは死んでる”。今の俺は一応……“燈馬なんだよ”――“一応な”?」
【燈馬】
「……だから、“燈馬でいい”――その方が“慣れちまってんだ”……」
【瞑】
「そう……なら、“新しい燈馬”? “これからよろしくね”? “終わった者同士”――仲良くしましょ?」
【燈馬】
「あぁ……コチラこそヨロシク――“瞑”」
こうして……俺達はまた出逢う。
どこか――楽しそうな瞑と、少し困惑した俺。
奇妙な関係はコレからも続く……。
【瞑】
「それじゃ……“秘密の部屋で遊びましょう”?」
【燈馬】
「ウゲッ――ま……まぢ?! いやいや……ループしたばっかりなんですケド……?」
【瞑】
「だって……“前回の私とたくさんシタんでしょ”?」
【燈馬】
「……正直言うと――“超絶”……“シタ”」
【瞑】
「ふひひっ――なら、“教えてよ”……“アナタの味”」
【燈馬】
「……分かった。“お前が満足するまで”、“付き合ってやる”……」
【瞑】
「うん……お部屋暖めて、“いっぱい”……“しよ”?」
【燈馬】
「うぐっ……やっぱお前は、前回も今回も、“何も変わってねぇや”……」
【瞑】
「うん……瞑は――“変態さんなんだもん”」
【燈馬】
「知ってるよ……“死ぬほどな”――」
……ぎゅっ――。
【瞑】
「ふぅ……楽しみぃ――うふふっ? 燈馬だけど、燈馬じゃない……燈馬と遊ぶのは……ふふひっ?!」
【瞑】
「あぁ……“本当に変な気分だなぁ”――ふふっ……」
【瞑】
「なんだか――“本当にゾクゾクしてるよぉ”……」
【燈馬】
「俺も……“ドキドキしてる”――」
【燈馬】
「やっぱ……“お前が一番好きだなって”――」
【瞑】
「うん……“コレから新しい燈馬を好きにさせて”」
【燈馬】
「分かった――ソレじゃ行こっか……秘密の部屋に」
【瞑】
「うん……“たくさん瞑を愛して”――」
――こうして俺達は……“深く深く繋がる”。
真実を語った今もなお……瞑は変わらなかった。
〈瞑の秘密の部屋・二人のセカイ〉
――二人共……クッタクタになるまで愛し合った。
もう――体が動かない……。
最初から最後まで、本当に瞑はぶっ飛んでいた。
【瞑】
「ふぅ……“疲れたね”――燈馬……ふふっ――?」
【燈馬】
「あぁ……やっぱり――お前は……“最高の女だ”……」
【瞑】
「うん……新しい燈馬も――“凄く良かった”……」
【燈馬】
「……瞑――“お前も来るか”……“月宮雅の元へ”」
【瞑】
「うん……“行く”――離れたくないし……私も――あの子に説明したいし……“アナタのコトを”――」
【燈馬】
「そうだな……ちゃんと――“説明しよう”……」
【燈馬】
「そして……“断るんだ”――俺は……はは――?」
【瞑】
「うん……そうして――“私が居るんだもの”……」
【瞑】
「ふふっ……もう――“戻れないでしょ”……」
【燈馬】
「あぁ……“コレを知ったら”……もう――」
【瞑】
「えぇ……“戻さないわ”――“私のセカイからは”」
【瞑】
「うっふふっ――もう……“逃さないから”……ね?」
【燈馬】
「“逃げねえし”……逃げらんねぇ……よ――こんなの」
【瞑】
「うん……“お互い”……逃げないし――逃げられない」
【瞑】
「もう……“私達は”――“ずっとずっとずっと”……」
【瞑】
「“一緒なの”……“負けた者同士”……ずっと――ね?」
【燈馬】
「あぁ……いつまでも――“傷の舐め合いをしよう”」
【瞑】
「うん……“それも一つの愛だもの”――ふふっ?」
【燈馬】
「あぁ……そうだな――あぁ……疲れた――」
【瞑】
「……少しだけ眠りましょう? “夜は月宮さんのトコロに”……“行くのだから”――」
【燈馬】
「あぁ……どうせ――“俺達はヤルんだ”……寝ないと」
【瞑】
「えぇ……勿論――うふふっ……“ヤルわぁ”……」
【燈馬】
「おやすみ……瞑――」
【瞑】
「うん……おやすみ――燈馬……」
――俺達は眠りに着く。
そして――“コレが最終章”……。
“ココで姫乃恋と”――“決着を着けるのだ”。
“今度こそ”――“俺は瞑と”……。
――“ハッピーエンドへ向かって行く”。
もう……バッドエンドは懲り懲りなのだ――。
“偽りの幸せ”から“本物な幸せ”へ――。
俺達は向かって行く。
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