最狂最悪で最低なバッドエンド。

〈郊外・廃工場・内部・夜〉


――厭な胸騒ぎがしていた。葉子を救出する為、俺達はまた廃工場へ訪れて……。


そして……何だが皆の様子も、少し違って見えた。


なんだか……妙にピリピリした様な、何とも言い難い、緊張感みたいなモノを感じる。


前回とは全く様子が違って見えるのだ……。


誰も……一言も話さずに広間に向かって――。


〈廃工場・広間〉


――俺達はそのまま広間に到着した。


広間で出迎えたのは……前回倒した連中達と、新規で参加したであろう数名。


そして……その中に“姫乃恋”は居た。


【恋】

「ふぅ……“ちゃんと来てきたんだね”?」


【燈馬】

「来るも何も……お前、“葉子は無事なんだろうな”? 周り見渡しても、葉子の姿は見えねえけど……」


そう……葉子が広間には居なかった。謎にライトアップされた広間には、前回の奴等と新しく参加してきた奴――。


後は厭な笑みを浮かべて、腕を組んでいる恋……。


辺りを見渡しても、葉子の姿はドコにもなかった。


【恋】

「……ふふっ? 心配しないで……“別の部屋で待機してもらってる”から。それに――手は出してないから安心してね?」


【燈馬】

「……ならいいけどよ。で――“お前の目的は何だったっけ”? “お前が勝ったら俺を奪う”とか、なんとか言ってたよな……?」


【恋】

「うん……そうだよ? ふふっ……“燈馬くんも燈馬くんの全てを”……“奪うわ”?」


【燈馬】

「そうかい……」


――スッ……ガサゴソッ――スチャッ……。


……カチッ――ボッ――ジジッ――チリチリッ……。


【燈馬】

「すぅ……ふぅ〜〜。で……コッチがなんだか知らねえが、“勝ったら葉子を返してくれると”?」


【恋】

「えぇ……“そう”。ソレじゃ――“不満かな”?」


【燈馬】

「すぅ……ふぅ……いや、“意味分かんねえし”? お前らが勝手に、葉子を拉致ったんだろ……? ソレじゃ対等じゃねえだろ……」


俺はタバコを吸い始めて、本当にポカーンとしていた。明らかにコッチが不利すぎる条件なのだ。


本当に意味が分からなかった。


【恋】

「いやいや……“対等だよ”? 見てみて……? ほら、“アナタ達にボッコボコにされたみんなを”」


【燈馬】

「いや……知らねえし――マジで意味分かんねえしよ? なんなの? “コッチが悪役なわけ”……?」


【恋】

「えぇ……だって――“燈馬くんが始めた喧嘩じゃない”」


【瞑】

「いや……巻き込まれたって言うか――“止めたんじゃないの”?」


【恋】

「えぇ……“そうかもね”? 実際――“コッチが悪いしね”……? ただ――“燈馬くん達はヤリ過ぎたの”」


【燈馬】

「ハァ……“しょうもな”――“マジでくだんねぇわ”……いや、マジで。そもそも、お前らの仲間が、“月宮をイジメてたんだろ”?」


【恋】

「うん……“ソレは否定しないわ”?」


【燈馬】

「……っすぅ〜〜ふぅ……なら、“先に仕掛けたお前らが悪くね”? コッチはただ止めただけ、くだんねぇコトしやがる……“お前らみたいなチンピラ”を」


【恋】

「“アナタ達も一緒でしょ”? “た〜〜くさん”、“アナタ達に病院送りにされた”……分かってる? “アナタ達も同類なの”」


【燈馬】

「おいおい……“勝手に同類にすんなよ”? 俺達はただ、“お前らみたいな卑劣なヤツ”を、“正しただけだぜ”? “お前らはただの悪でコッチは正義だよ”」


【恋】

「“度が過ぎれば”、“悪になるんだけどなぁ”……? ふふっ……“知ってる”?」


【燈馬】

「――すぅ……ふぅ……“返してやるよ”、“その言葉全部なぁ”……? そもそも、“お前らが月宮をイジメなきゃ”、“そんなコトになってねぇんだよ”!!」


……トントン――。


【燈馬】

「お前こそ……ふふっ――“分かってる”?」


俺は自分のこめかみ辺りを、指で叩いて魅せた。


こっからはもう――カウンターをブチかますだけ。


【燈馬】

「おいおい……お前らってほんっと――“情けなくてさぁ”……? すぅ……ふぅ……“みっともないよなぁ”……ふふっ――だってよ……“弱いヤツ相手によぉ”?」


【燈馬】

「あ〜〜あ……嫌だねぇ――“お前らみたいなヤツってのは”……ほんっと――“やり方が汚すぎて反吐が出るぜ”……」


【恋】

「ふぅ……まぁ――“その通りだから”、“何も言えないわね”……」


【燈馬】

「だろ……? 一番最初に戻れば、お前らのお仲間さんが、月宮をイジメていたのが悪い話だ」


【恋】

「……“ならどうしたいの”?」


【燈馬】

「あぁ……そうだな、ルールを追加しようか。“俺が勝てば”、“俺達に二度と関わらない事”」


【恋】

「――“勝てればの”……“話だけどね”?」


【恋】

「……まぁ――“イイわ”? “その条件でヤリましょうか”?」


【燈馬】

「あぁ……ソレで頼む。俺達も、お前らなんかと絡みたくもねえし、いい加減ウンザリなんだよ……」


【恋】

「ふふっ……なら、“私は端っこで見てるから”、“戦って頂戴”?」


【燈馬】

「おいおい……“お前は戦わねえのかよ”?!」


【恋】

「えっ……? なんで私が戦うの? 喧嘩なんてした事ないよ? “そもそも私は燈馬くんを奪う為に”、“この子達に協力して貰っただけなの”」


――“ココで全てが繋がった”。


やっぱり――“姫乃恋”……“コイツが全て”――。


“仕掛けた事”なのだと。


温厚そうで優しそうな月宮雅を……。


“イジメる理由も本当は無い”――。


“全て仕掛けられた計画の一部”だった。


月宮雅のイジメを止めさせる様に仕向け、そして喧嘩に発展し、コトが大きくなって行った。


そして……“俺をココまで誘導して潰す為に”――。


――スポッ……チリチリッ……。


――ポトッ……グリグリっッ〜〜。


【燈馬】

「……っすぅ――ふぅ……ハハッ――?! “とんだ悪役もいたもんだぁ”……“恋”――“お前が一番”……“悪役じゃねぇかぁ”……? ほんっと――笑えるぜ……」


俺はタバコの火種を新しいタバコに移し、吸い終わったタバコを地面に落とし、足でグリグリと揉み消した。


――遂に現れた“本当の悪役様”。


“新旧の悪役”が……“今ココで対峙”する。


ほぼ全ての謎が解けたのだ――。


俺は少しだけ嬉しかった。


【恋】

「う〜〜ん……ふふっ――“そうかもね”……あぁ――そうよ……ふふっ?! アッハハッ――!!」


【恋】

「うふふっ……? アァ……そうよ? “ずっと待っていたの”――“この時をずっ――と”……」


【燈馬】

「すぅ……ふぅ……」


【恋】

「そうそう――“今みたいな感じよ”……? あっはハッハッハッ――?! そうそう……ほんっ――と……さぁ……? “興味無さそうにしてたよねぇ”……?」


【燈馬】

「すぅ……ふぅ……あぁ――“お前に興味ねえよ”」


俺は恋に言い放つ。タバコをふかしながら……。


“本当に興味が無いコトを”……。


【恋】

「あぁ……“昔から変わってないなぁ”――燈馬くんはぁ……アッハハッ――? “その目だよ”……“そのダルそうで嫌そうな目”――本当にさぁ……悲しいよ」


【燈馬】

「知らねえよ……なんなのお前? そもそもさぁ……コッチは、“知らねえんだよお前のコト”なんて、マジでよ? “過去の記憶にねえし”……“お前なんて”」


【恋】

「うぐっ……そ――“ソコまで言っちゃうんだぁ”? あははっ――? 凄く傷付くよ……酷いよ燈馬くん」


【瞑】

「無駄よ……燈馬は無いから――“そう言う気配り”」


【瞑】

「そう……“一欠片もね”――?」


――グサァッ……!!


【燈馬】

「いやいやいや、怖い怖い怖い!! なにその人の心に突き刺す言葉!? コッチもグサッと来たわもう……」


【瞑】

「……“本当は”?」


【燈馬】

「……“無い”」


【瞑】

「よし、そうよね……? “ソレが燈馬なのよ”」


【燈馬】

「まぁ……ね? いやほら――ちゃんと言わなきゃ、伝わらない世の中なんだよ? ほんとね、そうなんだよ? 知ってる?」


【瞑】

「えぇ……知ってるわ? うふふっ……」


【恋】

「ねぇ……“ソッチの世界に行かないでよ”――まったく、“緊張感がないなぁ”……“コレから燈馬くんが奪われるって言うのに”――ねぇ……“瞑ちゃん”?」


【瞑】

「ハァ……本当に勘弁して欲しいわ? 人の彼氏を奪おうとするなんて、“本当に最低だよ恋ちゃん”」


【恋】

「うっふふっ……“コレが私なりのヤリ方なの”。“アナタも一緒よ”? “燈馬くんをたくさん気持ち良くさせて”、“グチャグチャにしちゃってさ”……?」


【瞑】

「ふぅ……なら、“先に落としなさいよ”? “後出しジャンケンはダサいよ”? 本当に欲しかったらさぁ……“一番初めに手をつけなきゃ駄目よ”」


【恋】

「うん……そうだね? でもね……ふふっ――私には出来なかったんだぁ……だから――今更、こうして手をつけに来たんだよ……? “嫌な女だよね”……?」


【瞑】

「えぇ……本当に――“厭な女”。アナタ程、綺麗で可愛い子は居ないのに……“本当に残念な子ね”? ちゃんとアタックしてたら、違ったんじゃない?」


【恋】

「かもね……“昔からそう出来てたら”――いや、でも無理よ……きっと――だって……アナタの方が、燈馬くんと過ごした時間も長いだろうし……」


【恋】

「それにね……? “アナタは分からない”だろうけど、“アナタも十分過ぎる程”、“綺麗で可愛いわ”」


【恋】

「はぁ……だから、“今しかないのよ”――“燈馬くんを奪えるチャンス”は」


【瞑】

「ふぅ……“お互い分からないわよね”、“自分の容姿の良さなんて”――だって、みんな……可愛いんだもの……“嫉妬しちゃうくらい”」


【恋】

「“私も嫉妬してるわ”? うふふっ……“アナタに”」


【瞑】

「“それは私も同じよ”……アナタに嫉妬するくらい、羨ましく思ってるわ? スタイルも良くて、胸も大きくて、綺麗で可愛くて――ふふっ? でもね……」


【瞑】

「うっふふっ……? 一つだけ、“アナタに勝ってるコトがあるんだぁ”〜〜? ふふっ……それはね? “私には燈馬がいるコト”。“コレだけでいいの”」


【恋】

「あぁ……“妬いちゃうなぁ”――ふふっ? でもさぁ……それも――“今日で終わりなんだよね”……ゴメンナサイだけど――“本当に奪うんだから”……」


【瞑】

「だってさ――燈馬? ちょっと、“マジで負けないでよ”? “本当に怖いからこの子”……」


【燈馬】

「お……おん――ま、任せとけ? とりあえず、タバコを一口っと……すぅ〜〜はぁ〜〜っふぅ……さあて――んじゃ、ちゃっちゃと“ヤろうか”?」


俺はナニが起こるか分からず、恐怖で震えていた。


その恐怖を隠す為……俺はタバコを大きく吸い込んで、ザワザワした心を落ち着かせる。


少しだけ、悪い緊張感が溶けて、戦う意思がブワッと湧き上がるのを感じた。


ココから本当に、クライマックスが始まるのだ。


情けなく死ぬのだけは勘弁だった。


どうせ負けて死ぬのならば――派手に散るのみ。


しょうもない死はもういらないのだ……。


――パチンッッ!!


広間に広がる手を叩く様な音――。


そのまま――。


【恋】

「あぁ……そうそう、“燈馬くんはコッチの二人を相手してね”? さぁ……出て来て? “二人共”!!」


【燈馬】

「はっ――?! “別枠用意してんのかよ”!!」


【恋】

「“当たり前じゃない”……ココに居るみんなじゃ、燈馬くんを楽しませられないでしょ?」


【恋】

「――それに……“言ったよね”? “私が勝ったらアナタを奪うって”? だから……“用意したんだぁ”……“本当に強い人達”――うっふふっ……?」


――ガッッ!! 


……タッタッタッタッタッ――ピタッ……。


【???】

「はいはぁ〜〜い、今出てきましたよっと!!」


【凛】

「……こんばんは――“燈馬くん”」


【???】

「あらやだ……この子ぉ〜〜“普通に喋ってるぅ”……一体ナニがあったのかしら――普段ほとんど喋らない子が……“本当に久々に聞いたわよ”?」


【恋】

「あれれっ……? 本当だぁ……初めて声聞いたよ? あっははっ――てっきり、声が出ない病気か何かだと思ってたよ?」


【凛】

「……“そんなコトどうでもいいし”――“コッチはお仕事なんだ”、“さっさと仕事させてよ姫乃さん”」


【恋】

「ふぅ……ハイハイ――でも、“殺しちゃ駄目だからね”? “ちゃんと生かして倒してね”……?」


【燈馬】

「おいおい――マジ? ナニコレ……? 本当に本当に……“ガチの人”用意してきたのかよ……」


【???】

「うっふふっ――ガチもガチよぉ〜〜もう……こう見えてぇ……“おネェさん”――とぉ〜〜っても、“強いんだからねぇ”……? おっほほほほほぉ〜〜〜〜?」


【燈馬】

「おか……“おネェさん”――ねぇ……いやいやいや、あの……その、えと、あ〜〜ん……こう見えてもなにもねぇ……“普通に超強そうで怖いんですけど”――?」


そう……おカマなおねぇさんは超強そうだった。


そりゃもう――スキンヘッドで……ヤーさんみたいな赤茶なスーツを身に纏って……もう――。


“超怖いのだ”……。


俺は得体の知れない、妙な恐怖を感じていた。


恐らく――“コイツにぶっ倒されて”……。


未完のWEB小説に出てくる……。


“悪役である燈馬は死んだ”。


“ココで更新がストップ”して、続きが読めなくなったのだ――。


……そんな“WEB小説最後の更新話”……。


唐突に、燈馬が潰れたであろうシーンから始まり、そして――うまく誤魔化す様に、燈馬が死んだであろう……“断末魔を残して”……終わった。


“まさにそのシーン”まで、辿り着いていたのだ……。


【おネェさん】

「ふぅ……でもねぇ? “アタシは戦いたくないのよぉ”? 服も汚れちゃうし……疲れちゃうし――ふふっ……“本当に殺しちゃうかもだし”――?」


【燈馬】

「い……いや――困ったねぇ……本当にアンタと戦う事になるなんてなぁ――コッチも嫌なんですけど」


【凛】

「……“まずは私から行くわ”? 言ったでしょ? 森燈馬くん……“アナタはもう終わりなの”」


【恋】

「オッケー? じゃあ……みんな〜〜? 三人の邪魔せずに、存分に戦ってね!!」


――パンッッ……!!


【恋】

「それじゃあぁ……“開始ぃいぃ”――ッッ!!」


遂に始まってしまった――。


“悪役の最終章”が。


みんな一斉に乱闘をし始めて……。


ザワザワした広間の中で――俺と凛は対峙する。


……スッ――チリチリッ……。


――ポトッ……ぐりぐりぐりぃ〜〜。


【燈馬】

「ふぅ……そんじゃ――まぁ……“やりましょうか”」


【凛】

「“新しいタバコに交換して”、“随分余裕だね”?」


【燈馬】

「バッ――お前……“余裕がねぇからタバコ吸うんだよ”……“バカだなお前は”――“赤ん坊からやり直せよお前みたいなヤツは”」


【凛】

「ふふっ……“凄く口が悪いんだね”? “燈馬くんさ”……? “そんな性格だったの”――? なんだかね……“前とは様子が違って見えるよ”――」


【燈馬】

「悪いな……“口しか悪くねぇんだわ”――それに教えてやるよ……“ガキのお前に”……人はなぁ――“環境に応じて性格も変わんだよ”……“覚えときな”?」


【おネェさん】

「おほほほっ――まぁ……そうね? ふぅ〜〜ん……ほんっと――“変な子なのねぇ”……? 恋ちゃんからは聞いてたけども……どんな子なのか――」


【おネェさん】

「まさか……おほほ――“こんなオッサンみたいな子だなんて”、知らなかったわよぉ……?」


【凛】

「ちょっと……“口を挟まないでよ”――“コッチは仕事で来てるんだから”……」


【おネェさん】

「おっほほ……怒られちゃったわぁん――あぁ怖い怖い……ソレじゃちゃちゃっと終わらせてね? お仕事終わったら、“ご飯でも食べに行きましょ”?」


【燈馬】

「お……おネェさん――この時間からご飯食べたら、“美容に悪いですよ”……?」


【おネェさん】

「あらぁ……やだぁ〜〜っ……そうよねぇ――でもねぇ……私達――あまりご飯食べられてなくてねぇ? いいのよぉ……今日くらいは夜遅くでも!!」


【凛】

「ちょっと――本当に邪魔……もう止めてよ……」


【おネェさん】

「おほほほっ……いやねぇ? 面白くってねぇ……この子ったら――ツイツイ長話したくなっちゃうのよぉ……やだぁ〜〜もぅ……うふふっ?」


【凛・燈馬】

「うげっ……」


おネェさんは超怖かった……それはもう――本当。


俺はタバコを口に咥え――。


【燈馬】

「おい……掛かってこいよ? 潰してぇんだろ? 仕事だかなんだか知らねえけどよぉ……なら――サボってんじゃねえよ? こいって……おいごら!!」


――シュッンッッ!!


ブワッッ――グンッッ――!!


凛から超速のパンチとキックが飛んできた。


俺はそれをシッカリと避ける。


【燈馬】

「……ヒュウゥ〜〜? やるねぇ……危ない危ない」


【燈馬】

「へへっ……“タバコがぶっ飛ばされるトコだったぜぇ”……?」


【凛】

「チッ……スカしたか――あぁ……うっとおしい……タバコ咥えて物凄く、余裕そうだし――ムカつくなぁ……」


【燈馬】

「うっせぇよ……すぅ……ふぅ……お前も鬱陶しいんだよ――“無口キャラなら”……“黙って攻撃して来い”」


【凛】

「あぁ……もうっッ!! イライラするわねぇ……クソッッ――“無口キャラじゃないってのに”……」


【燈馬】

「そ……そうなの? おネェさん……?」


【おネェさん】

「うぅ〜〜ん……でも普段、この子――喋らないんだけどね? アタシにも分からないわぁ……? “そんなに長く一緒にいないしね”? おほほ……?」


【凛】

「“余計なコト喋らないで”……“何も知らないくせに”……あぁ――どいつもこいつも……イライラさせる……本当に燈馬くん、ぶっ潰すから――」


【おネェさん】

「そうして頂戴? おほほほ……“手を汚したくないしねぇ”……凛? やっちまいな!!」


【凛】

「……分かったわ――“いまからぶっ潰す”!!」


【燈馬】

「いいねぇ……“ちびっ子ちゃん”――こいよ」


【凛】

「あぁあ”ぁ゙〜〜っッ!! もう――切れちゃった……アハハハッ?! あはひゃひひっ――“マジで殺すわ”――“燈馬くんのコト”……」


【燈馬】

「“効いてる効いてる”……ふっははっ!! イイねぇ……その顔――マジでソソるわ……ひひっ?! あぁ……怖い怖い――」


【おネェさん】

「ちょっとぉ〜〜やめてあげて? あの子、背が小さいコト――超気にしちゃってさぁ? たまに牛乳ガブ飲みしてるのよぉ? “健気よねぇ”……?」


【凛】

「……ちょっと――ねぇ……ひひっ? “アンタも殺そうか”……? あぁ……本当に頭きたなぁ……二人共私のコトバカにしちゃって……あははひゃはは!!」


【おネェさん】

「ひぃ……怖いわぁ〜〜? それじゃ――アタシは邪魔しないようにぃ……と、後ろで見てるからガンバってね!! おっほほほほほぉ〜〜ほぉ〜〜う」


【燈馬】

「あ”ッ――?! ずりぃッッ――おいお前――?!」


――シュウゥンッッ!! ブワッッ――!!


――バッッ!! ガッ――ズササッ……!!


【凛】

「チッ……“なんで当たらないのよ”――今の蹴り避けるなんて……?」


【燈馬】

「知らねぇよ……“お前が弱いからだろ”? あとお前……牛乳ガブ飲みしても、“背は大きくなんねぇし”……やるだけ無駄だぜ――悪いけどよ?」


【凛】

「あぁ゙……あぁ゙ア”ァ”っッ゙!? うっさいうっさいうっさいっ!! シネ殺すブチ殺すぅぶち壊すうぅ゙うぅ゙うぅ゙あぁ゙あ”ぁ゙ア”ァ゙ア”ァ゙〜〜〜〜ッッ゙!!」


――ヒュンッ……!! ブンッッ!! ビュンッ!!


ズバババババババッッ!! シュシュシュッ!!


スカッ――スカスカスカスカスカスカッ――。


……ズササァ――。


【凛】

「……ぜぇ、ぜぇ、はぁ、ハァ、ぐぅぬぬぅ!! なんで当たらないのよぉ!! 全部避けられたし……クソっ――クソクソクソクソッッ!!」


【燈馬】

「おいおい……メチャクチャだなぁ――パンチも蹴りも……全部大振り過ぎて、止まって見えらぁ……あっははは――“お前マジで雑魚いわ”……」


【凛】

「んなっ――?! ざ……“雑魚い”……ですって?」


【燈馬】

「あぁ……全部――“お前の攻撃見えてるもん”」


本当に燈馬の体は凄かった。チートかよと思うほど、超高速で動ける謎の反射神経の良さ。


そして――とにかく目が良かった。


俺はなんとなくで、凛の超速の攻撃を見切って、避け続けて……。


“悪役らしく振る舞い続けた”。


【燈馬】

「それじゃあぁ――まぁ……“コッチから攻撃しに行こっかなぁ”〜〜?」


……タッタッタッ――。


【凛】

「うぐっ――“そんなに近距離でイイの”……?」


【燈馬】

「あぁ……? 勿論――そんじゃ……コッチから仕掛けるわぁアァあ”ぁ゙ッッ゙!! ふぅ……」


……ぶわぁ〜〜〜〜っッ!!


【凛】

「――キャッッ!?」


【燈馬】

「“ボディが”――“ガラ空きだぜぇ”? むんっ!!」


シュッ――どゴォっッ!! めりめりめりぃッ!!


【凛】

「ガッ――ぶっ……ゴッ――ぁ゙――――」


……ゴッ――バサッ――。


【おネェさん】

「あらあらぁ……“随分姑息な手を使うのねぇ”?」


【燈馬】

「んっまぁ……“喧嘩はスポーツじゃないんで”? それに……“そっちも随分汚い手”を使って来たんだぁ……“コレでチャラにしましょうや”……ははっ?」


【おネェさん】

「……ふぅ――“恋ちゃんも”……“とっても悪い子だけど”……“アナタもとっても悪い子ねぇ”……?」


【燈馬】

「まぁ……一応、“悪役やらせて貰ってるんで”。コレくらいはしますわなぁ……」


俺は凛の顔にタバコの煙を吹き掛け、思いっ切り凛の腹に重たい一撃を与えていた。


凛はそのまま蹲り、ピクリとも動かない――。


途中で起きられても困るので、俺は本気でぶん殴って沈めたのだ。


瞑より小さいヤツに本気で叩き込んで。


チョッピリ心が痛かった。


でも、コレは喧嘩なのだ――本気で掛かって来た相手に手を抜いたら、ソレこそ失礼に値する。


本気でやれない、なれない事は良くはない。


相手が捨て身の覚悟で来るなら、コチラも容赦はしない……。


世の中は食うか食われるかの、弱肉強食な世界なのだ……。


情けは掛けない。“ココはもう戦場なのだ”。


“生きるか死ぬか”……“そんな場面なのだから”。


【恋】

「ふぅ……倒されちゃったなぁ……ざぁんねん――ふふっ……さてぇ――“こっからが本番だよぉ”?」


【恋】

「ねぇ……“ちゃんと生かしておいてね”? 駄目だよぉ? “殺したりなんかしたらぁ”……恋が燈馬くんを奪うんだから……ふひっ――それじゃよろしくね?」


【おネェさん】

「ハイハイ……ごめんなさいねぇ? “コッチもお仕事でねぇ”? “タダで報酬を頂くワケにはいかないのよぉ”……」


【おネェさん】

「アナタには恨みはないけれど……ふぅ〜〜、まぁ……“アタシが出るしかないわよねぇ”……他の連中も、結構倒れるみたいだしぃ〜〜はぁ……シンド」


【燈馬】

「…………」


ポイッ――グリグリ〜〜ッッ!!


……スポッ――カチッ……ボボッ……ジジッ……チリチリッ――。


【燈馬】

「ふぅ……そんじゃまぁ――“最終決戦”といきましょか……」


【おネェさん】

「えぇ……余裕ぶっこいてタバコ吸ってられるのも――“今のウチだからねぇ”……?」


……パキッ――ポキポキッッ――!!


【燈馬】

「おいおい……指パキポキすると、手悪くなんぞ? やめとけやめとけ……んなこ――?!」


――パシュッ!! パンッッ――!!


【おネェさん】

「はぁ〜〜い……“喫煙タイムはオシマイ”。うっふふぅ〜〜? コッチに集中してくれないと駄目よ?」


【燈馬】

「おいおい……タバコ――蹴り飛ばすなよ……貴重な貴重な一本をお前……“たけぇんだぞ”――おいごら」


……ピキキッ――プッツーーン……。


俺は本当にピキピキしていた。新しく取り出したタバコを、蹴り飛ばされたのだ……。


それはもう……ブチギレを超えたバチギレだった。


【恋】

「おわ……ふふっ――燈馬くんの吸ってたタバコだぁ……どれどれぇ〜〜? あむっ……すぅ〜〜んっ……ん? ゲホッ――ゴホッ――うげっ……“凄い味”……」


【燈馬】

「おいおい……火消えてんだわぁ……? それに、勝手に人のタバコ吸ってんじゃねえよ――後、“それプロ用のタバコだから不味い”ぞ普通に……」


【恋】

「ケホッ――“なんでこんな不味いもの”……吸ってるのよ……? うげっ……苦くて辛いよぉ……」


【燈馬】

「なにっ……“惰性だよ”。それに――“ただの依存さ”」


そう……プロ用のタバコとはナニか?


それはいっちゃん安くて、重くて苦くて辛い。


安タバコのコトを指すのだ。


金欠の時にお世話になったり、おじいさんやおばあさんしか吸わない、究極のプロ用タバコ。


安い!! 不味い!! 辛い!! 苦い!!


この四拍子揃った完璧なタバコが安タバコなのだ。


そして、煙が吸えれば何でも良いヤツは、安タバコで十分なのだ……。


本当は好きなタバコはある。


黒い箱に金色の刻印な洋モクだ――。


しかし、現実世界の俺は無職になってしまい、その黒い箱なタバコを封印したのだ……。


ほんのり甘くて、他のタバコにはない、謎の芳醇な薫りを漂わせるあのタバコを……。


大好きだった……今でも忘れない――。


一番好きなタバコはなんですかと聞かれたら、間違いなく、黒い箱に金色の刻印なタバコと答える。


結局……“洋モクがいっちゃん美味いのだ”――。


【おネェさん】

「……ちょっとちょっとぉ〜〜タバコぶっ飛ばされたショックで、宇宙まで行ってなぁい?」


【燈馬】

「あぁ……“昔の思い出を思い出しちゃってな”?」


【おネェさん】

「なによぉ〜〜それぇ? それに、惰性だの依存だのって……“アナタ二十歳よね”? ほんっと、“おじさん臭い”ったらありゃしないわぁ〜〜?」


【燈馬】

「“精神年齢はオッサン”なんだよ……わりぃけどよ」


そう……燈馬の中身は三十路なオッサンなのだ。


――どうにもこうにも、若く偽れないのだ。


コレが最後なのだ……全力でオッサンを出していく。


【恋】

「クンクン――んっ……はぁ〜〜? でも……燈馬くんの咥えたタバコだと思うと……興奮するぅ……えっへへ? あむぅ……んっふふぅ……苦いにがぁ〜い」


【燈馬】

「なぁ……おネェさん――“アイツヤバくね”?」


【おネェさん】

「えぇ……“あの子は本当にヤヴァいわよぉ”……?」


【おネェさん】

「そんなあの子に依頼されたの……アナタを潰してねって……? だから――燈馬くん、アナタをさっさと倒して、報酬をいただくわぁ〜〜?」


【燈馬】

「なら、やろうぜ――コッチもイライラしてんだわぁ……タバコぶっ飛ばされてよぉ!! 本気で潰しに行くから覚悟しろよ……」


【おネェさん】

「えぇ……来てきてぇ? ほらほらぁ……“ソッチから来なさいよ”? “遊んであげるわぁ”〜〜?」


……ブチッ――。


俺は本当に頭に来ていた。


だから――。


【燈馬】

「そんじゃ――先手必勝だぁあぁ゙ッッ!!」


――ヒュウッッ!! ブンッ――!!


スカッ……。


【燈馬】

「あららぁ〜〜?!」


ぐらっ――。


【おネェさん】

「ふぅ……駄目よぉ? “そんな大振りのパンチ”……それこそ止まって見えるわ? それじゃ……おネェさんもぉ――ふんっッ!!」


――スッ――ブワッッ!!


ピシッッ――!! ピシャッ――!!


【燈馬】

「んなっ――?!」


ポタッ……ポタッ……ポタッ……。


【おネェさん】

「ふぅ〜〜ん……“避けたのねぇ”? あっはは? 流石にクリーンヒットしたと思ったんだけどぉ……」


【燈馬】

(全然……パンチが見えなかった――何が起きたんだ? 頬が……かすっただけで――少し裂けやがった……?)


……ずっッ!! ピシャッ――!!


【おネェさん】

「あぁ……いいじゃなぁい……さっきより、ずっと男前よぉ? ふふっ……頬を血で染て――」


【燈馬】

「くっそ痛ぇや――あぁもう……ヒリヒリすんなぁ……ったく――しゃあねぇ……」


ガサゴソッッ――スッ……めりめりっ……ブチッ――グッ……グリグリ〜〜ッッ!! グッグッ……!!


【おネェさん】

「あら……やだ――おっほほほ? まさか、ふふっ? “タバコで止血してるのね”?」


【燈馬】

「あぁ……そうだよ。“ニコチンのパワーで無理矢理止血してやった”」


【おネェさん】

「おっほほほ……本当に面白い子ねぇ――まさかタバコで応急処置するなんてねぇ……知らないでしょアナタくらいの歳の子は……」


【燈馬】

「昔……どっかで止血に使えると、どっかで見てなぁ……ハハッ――それより、“戦おうぜ”?」


【おネェさん】

「えぇ……戦いましょう? ほら、来なさいよ!! 相手してあげるから!!」


【燈馬】

「あったりめぇだ……コッチは大切な一本失ってるんだよ……いや――二本だな? だから……まずは二発はぶっ放してやんよ!! おるぅあッ――!!」


――ぶうぅうぅンッッ!! ブワッッ――!!


……ドゴッッ――!! メキキィイィ〜〜!!


【おネェさん】

「ガッ――ッッ?! アガッ――ぐぎっ……ぐぐっ――うそ……で――しょ? な――なん……?!」


【燈馬】

「はぁ〜〜い……次――“お顔に”――パーーン!!」


――シュウゥ……ゴッッ――グリメギギィイィ!!


【おネェさん】

「ガッ――ぁ゙――ゔッ――嘘――こ……こんな――あっさ……り――?! あ”ぅ゙――――お”ッ゙――ぁ゙――――」


ぐらぁ……ゴッッ――バサッ……。


【燈馬】

「あれ……? えっ? も……“もう終わり”?」


――それはそれは一瞬で終わっていた。


タバコ二本を失った、悲しみと怒りと憤りを思いっきり、蹴りとパンチに込めたら……。


普通に蹴りがおネェさんの横腹に、超絶クリーンヒットして……顔面パンチも――。


そのまま突き刺さって……おネェさんは膝から崩れ落ちた……。


【おネェさん】

「……は――ぁ゙……や――やるじゃな――ぃ……ぐっ――ふっ……ココまで――強いと……は――ぐふっ――ゴホッ……ゲホッ――わ……“アタシのまけよぉ”――」


おネェさんは虫の息だった……。脂汗を顔に浮かべ、今にも崩れかけ寸前だった。


【燈馬】

「ふぅ……コレが“タバコを失った怒りのパワー”だよ!! 覚えとけ…………」


【おネェさん】

「ふっ……本当に――強かったわ……でも、はぁ……フフッ――“終わりみたい”……ね――“アタシは負けたけど”……フフッ――“サヨウナラ”……“燈馬くん”」


【燈馬】

「は……?」


……すぅ――ゴッ――。


【凛】

「ゴメンネ……“お仕事だから”――ソレじゃ――」


……バヂバヂバヂバヂバヂィイィイィッッ!!


【燈馬】

「カッ――ァ――ッッ?!」


ビクビクビクビグビグゥウゥ〜〜〜〜ッッ!!


【凛】

「動かないで――“コッチに近付いたら”……ずっとずっとずっと――燈馬くんにスタンガン押し続けるから……」


【瞑】

「やられたわ……クソッ――」


【茂】

「あぁ……ハハッ――マジでな……」


【松之助】

「やらかしたな俺達――“倒すのが遅過ぎた”……」


【瞑】

「えぇ……まさか“途中参加のヤツが大人とはね”」


【茂】

「あぁ……通りで“しぶといと思ったんだよ”……」


【松之助】

「あぁ……“倒しても倒しても起き上がるしな”」


【凛】

「さっ――みんな? “全員拘束して”? 抵抗したら全員でスタンガン押し当てて!!」


【燈馬】

「あぐぐがががっ――ご……め――みん――なぁががががぎぎぎぎぎっッ゙?! ガギギギッ―――がへぇ」


そのまま俺達は――呆気なく“全員捕らえられた”。


まさか……凛が復活するとは思ってもみなかった。


思いっ切りボディーブローをブチかまして、完全に倒したと勘違いをして……。


そのまま――俺は油断して……。


〈廃工場・休憩所・敗北後〉


――隔離されていた葉子と、俺達は再開を果たす。


葉子は廃工場の休憩所らしき場所に居た。


広間よりずっと狭い部屋の中、椅子に拘束され、黒い目隠しと猿ぐつわをされて……。


【恋】

「あぁ……瞑ちゃんは、後ろの後ろで拘束しといてね? 後、“絶対に手は出さないで”? “燈馬くんと約束したからね”? 分かったらさっさとやって」


【恋】

「あぁ……それと――葉子ちゃんはちゃんと、“手出ししてないから”、“ソコは安心して”?」


敗北してしまった俺達は、黙って恋に従っていた。


俺は負けて“恋のモノ”になった。


【恋】

「……燈馬くん――“ちょっと屈んで”?」


【燈馬】

「……あぁ――」


……カタッ――ぐっ……。


【恋】

「ふふっ……んっ――チュッ……んっ――れろっ、んっふふっ――っ……ふぅ――“約束通り”燈馬君は……うふふっ? “恋に奪われちゃったね”――?」


恋は屈んだ俺にキスをした。軽く舌を絡ませて。


【瞑】

「くっ――“なんでこんなコトに”……クソッ――」


【恋】

「あぁ……“瞑ちゃんにも猿ぐつわ”しといてね? うっふふ――なんかキャアキャア……騒ぎそうだから」


……カチャカチャッ――カポッッ!!


瞑は大人しく、前回ボコった奴等に猿ぐつわをハメられていた。


包帯を巻いた者や、アザだらけの者――。


本当にみんな……ボロボロだった。


でも……みんな恋に文句も言わず、黙々と作業感覚で色々と準備をしている。


【恋】

「さて……燈馬くん? “疲れたでしょ”……?」


【燈馬】

「あぁ……“本当に疲れた”――」


凛にスタンガンを当てられて、全身に電流を浴びせられ……呆気なく捕らえられて――。


作中のラストとはちょっと、展開は違うだろうが……きっと――“最後にはココに行き着く”。


“この展開へ辿り着き”……“燈馬が何らかで死んだ”。


【恋】

「はぁ〜〜い……あ〜〜んして? “お水飲ませてあげるからね”? あぁ……“拒否したら”、“全員スタンガン浴びせちゃうから”――うふふっ?」


【燈馬】

「……分かった。“飲ませてくれ”――」


【恋】

「うん……はいどうぞ――うっふふっ、“全部飲み干してね”?」


【恋】

「はぁ……い――どうぞ? そうそう……あ〜〜んして、飲むの……くふふっ――?」


……コプポプコプッ――。


【燈馬】

「……んっくっ、んっくっ、んっごくっ、ゲホッ……ゴホッ――んっくっ、んっぐっ、んっ――ふぅ……」


……さわさわっ――スリスリぃ〜〜さわさわぁ……。


【恋】

「うっふふっ――“もうすぐよぉ”……?」


【燈馬】

「うっぷっ――クソまずい水だな……苦いし――塩っぱくてなんか――酸っぱいし……」


【恋】

「うん……ふふっ――? でも……大丈夫――“すぐに気持ちよくなるわぁ”……くひひっ――うっふふっ……」


……さわさわぁ〜〜スリスリぃ〜〜むにゅうぅ……。


【燈馬】

「うグッ――ヤバ……頭が――超クラクラ……す――」


俺は謎の濁った水を飲まされ、恋に後ろから抱き着かれながら、胸元を優しく擦られていた。


全身が熱くなり……全身が気持ち良くなる。


そして――なんだか……頭がぽ〜っとして……。


一気に全身が気だるくなっていく――。


【恋】

「うっふふっ――そのまま……“おねんね”しましょうねぇ……うっふっ……起きたら……“最高なセカイ”を“魅せてアゲル”――」


……グラグラッ――ぐたぁ……ゴッ――。


【恋】

「くひっ……? “効いてきた効いてきた”――あっふふっ……それじゃあぁ――またね? 燈馬くん……」


【燈馬】

「……ぁ――――ぁ――――――」


もう俺の意識は持たない……。


強烈な快楽と――猛烈な眠気に襲われて……。


そのまま――ブツッ……と――。


意識が……ドコかへ飛んで行く――。


〈廃工場・休憩所・絶望の光景〉


――“目を覚ますとソコはもう”……。


【瞑】

「……むぐぅ〜〜もぅひゃめひぇッッ――!! とうひゃ……うぐぐっ――もふぅ……やめひぇっっ!!」


俺の目の前には――猿ぐつわを着けられた瞑の姿。


……椅子に縛られて――涙で顔がグッチャグチャなって――俺達をずっと、ずっと……見ていた。


辺りをソッ――と……見渡すと――。


【茂】

「グガッ――もう……やめてくれ――死んじゃう……」


【女A】

「あっヒャヒヒッ――無理無理無理ぃ……あっひゃははっッッ!!」


【茂】

「ぐがっ……ぐっ――ふっ――ぐぅ……ぐきぎっ――」


【松之助】

「ガッ――ぁ゙……ぐぬぬっ――クソッ――ぐぬぬぬぅうぅ……ぐぅあぁ゙――ガハッ――ぐがっ――?!」


【女B】

「……ふぅ〜〜ん? “そんなにガタイイイのに”……ふっひゃはは――“弱いねぇ”……?」


【松之助】

「ぐっ――うるさい……ぞっ――ぐぅ……ガッ――」


茂も……松之助も――ヤラれていて……。


“一番最悪なコトに”――。


【葵】

「……むぐぐっッ!! やめひょおっッ!! れんっッ!! あんひゃ……ばかひゃなのっッ? しょんなこひょ――しひぇっッ!! やめりょっ!!」


【守】

「むぐっ――グギギッ――ふぅ、ふぅ、ふぅ――なんひぇ……こんにゃこと――あグッ――?! むぶぐぐっ――ぐぶっ……もう――やめりょおぉ……ぐぇ――」


【女C】

「はいはぁ〜〜い……ふふっ――アンタはコッチに集中しなよ? あっはは……ひひっ――あぁ、イイ顔してる……あひゃひひっ――泣いてボロボロぉ……?」


葵も――“本作の主人公である”……“守も”――。


ナゼかこの場所に呼ばれて……もう――。


……ボソッ――。


【恋】

「ふふっ――“安心して”……“瞑ちゃんには手は出さないから”……ちゃんと……んっ――ふふっ……“恋は約束を守るから”――ね?」


【燈馬】

「……むぶぅ――たのむひょ……ひょれだけは……」


俺の耳許で囁く恋……。


――そして……葉子の感触――。


【葉子】

「むぶぅ……むぶぶぅ!! むぶぅ〜〜〜〜!!」


【恋】

「ふぅ……葉子ちゃん――“大悦びだねぇ”……?」


【葉子】

「むぶぶぶっ――おごごっ――ぶぶびっいぃ!?」


【恋】

「ソレじゃ……あ――“寒いし”……“暖まろうか”?」


【恋】

「あっひゃはは?! “燈馬くんはぁ”……」


【恋】

「……ぜぇ〜〜んぶ――“恋に奪われてオシマイ”……」


俺は椅子に拘束されて――葉子と一緒に……。


そのまま――ずっとずっとずっと……。


〈廃工場・休憩所・バッドエンド〉


――心臓の鼓動が遅くなる……今にも止まりそうで、もう――心臓のリズムがオカシイ……。


葉子は崩れ――茂や松之助と同じ場所に捨てられ……。


“完全に壊れた顔をした”――“瞑の姿”がチラつく。


そして……“前回同じく”――“俺は恋に”……。


【恋】

「あぁ……えらいえらい――“みんな崩れたのに”……燈馬くんだけは――ふふっ……“生き残ってる”――」


【恋】

「ふふっ……でも――“コレで終わりだね”……?」


【恋】

「さようなら――“私の初恋の人”……」


――ズッッ……!! カタッ……。


――ドックっンッッ!! ドッッ――クッ…………。


――ふわっ……バサッ……。


そのまま――俺は……“恋に二回ヤラれる”。

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