幸せな日常は終わりを迎え、クライマックスへ。

〈瞑の自宅・お風呂場・朝〉


――俺達は朝からお風呂に入っていた。


明け方まで、俺と瞑は深く深く愛し合い、身を寄せ合って眠りについて……。


……朝、俺達を迎えに来た葉子に発見されて――。


――チャポ……パシャパシャ――!!


【瞑】

「ふぅ……汚れ切った体にはイイわぁ……ふふっ?」


【燈馬】

「あぁ……“間違いねぇ”――あぁ゙〜〜染みるぅ……」


【瞑】

「ハァ……それにしても――“葉子に邪魔されたわね”……もう少し――楽しみたかったのに……」


【燈馬】

「いや……まぁ――学園サボるのも駄目だしな……」


【瞑】

「うん……だから学園から帰ったら、またシマしょう……?」


【燈馬】

「あぁ……そうだな――」


――俺達はそのままゆっくりとユッタリと……。


何もせずに湯船に浸かっていた。


お風呂場には俺達しか居らず、一方の葉子はと言うと……。


汚れるからと……真っ裸になって、瞑の秘密の遊び部屋を掃除している。


俺達があまりにも、暴れ散らかしたせいで、部屋はメッチャクチャ、ぐっちゃぐちゃに汚れて、見るも無惨な光景だった。


そんな光景に呆れた葉子は、すぐに制服や下着をぶん投げて、遅刻覚悟で遊び部屋を自発的に、掃除してくれていたのだ……。


俺は葉子に感謝すると共に、申し訳ない気持ちで一杯だった。


俺達が体を洗い、呑気にお風呂に入っている間に、葉子は汚し切った部屋を、掃除してくれている。


それなのに俺達は……湯船に浸かり、ウットリしているのだから……。


――ガチャッ……バタンッッ――。


【葉子】

「アンタ達……いつまでノンビリお風呂入ってんの? ハァ……急いで掃除したわよアンタの部屋」


【瞑】

「ふふっ……ごめんごめん、朝から変な場面見せちゃってさ? ソレに……掃除もありがとうね?」


【葉子】

「……ホントよもう――アンタ達は抱き合って寝てるし、部屋は汚れまくってるし……酷かったんだからね?」


【燈馬】

「いや……俺からも謝るよ。本当にごめんな? ちょっと――まぁ……その? ハハッ――うん……」


【葉子】

「――んなっ……なによ? 続きはドコ行った!?」


【瞑】

「……つまりは、“ソレだけ私達は愛し合っていたってコト”――それも、“深く深くね”……?」


【葉子】

「あっそ――まったく……朝からアンタ達の惚気話とか、聞きたくないっての……」


【瞑】

「葉子も分かるよ――きっといつか……“本当に愛する人が出来たらね”……?」


【葉子】

「いやいやいや……分かんねぇし?! “アンタ達が特別なんだよ”……あそこまで普通はしないって……」


【燈馬】

「とりあえず、風呂場……冷やっとしてんだから、さっさと体洗えよ? “寒くねえのお前”……?」


【葉子】

「……寒いわよっッ!! ――へくちっッ!! ふぅ……あぁ〜〜もう――そのまま体洗うから!!」


【燈馬】

「あぁ……そうしてくれ」


【瞑】

「全く……葉子は朝から本当に元気よね? 羨ましいわ……ふふっ――“私達は朝からグッタリだもの”」


【葉子】

「……ほんっとアンタ達はぶっ壊れてるわ。“お互い潰れるまでヤッてんでしょ”? それに、潰れても続けてさ? 私にはあり得ないわ……」


【瞑】

「“葉子がピュア過ぎるんだよ”……私には葉子の考えが分からないよ……」


【瞑】

「だって――“私達は綺麗な事も汚いコトも”、“全部受け入れて愛し合ってる”から……ね?」


【燈馬】

「あぁ……そうだ。その方が、”お互いにとってもイイコト”なんだ。後からやっぱり違うとか思うよりは、全部さらけ出して、知り尽くす方がイイのさ」


【瞑】

「そうそう……だから激しくヤリ合って、“お互いを確かめ合ってるの”――お陰で知れたわ? “コレくらいしなきゃ分かり合えない”と……」


【葉子】

「ふぅ……ほんっと――“羨ましいよ”……“アンタ達見てると”。本当に仲が良くなって、“本当に深く愛し合ってるのが分かるし”――」


【葉子】

「私には、そんなイカれたコト出来ないし……?」


――ジャバッッ……!! ザブブッ……!!


【瞑】

「葉子……とりあえず風邪ひいちゃうから、体洗って? ほら……ふふっ――私も手伝ってアゲル……」


【葉子】

「んなっ――?! イイって――自分で洗えるし、ソレに……コイツも近くにいるんだし――」


【瞑】

「……ふふっ――だからよ? “特別なサービスシーン魅せてあげましょう”……?」


【葉子】

「あっ――ちょっッ――?! 抱き着くなって!!」


【燈馬】

「………………」


結局……俺達は風呂場で、ナニかが起きない筈もなく、“色々とあった”。


本当に色々ありまくりの時を過ごして――。


〈瞑の部屋・昼前〉


――スリスリぃ〜〜シュシュ――ぐねぐねぇ〜〜。


葵は瞑のベッドに横たわり、自分の腕で目元を隠しながら、ぐねぐね体を揺れ動かしていた。


【葉子】

「うぅ……疲れた――学園サボろっかな……もう……」


【瞑】

「駄目よ……? 私達を迎えに来たんでしょう?」


【葉子】

「いやいや――“アンタ達のせいでしょうが”……」


【燈馬】

「ごめん……色々と――“ヤッちまって”……」


【葉子】

「本当だよ……ハァ――“頭オカシイわアンタ達”」


【瞑】

「まぁ……“頭のネジは何本かぶっ飛んでるわね”」


【葉子】

「ハァ……何本じゃなくて、“全部飛んで外れてるっての”……ほんっ――と……“朝から疲れたわ”……」


……シュリシュリッ――ぐねぐねぇ〜〜。


葵は仰向けのまま、暫くグネグネモゾモゾしていた。


【瞑】

「まっ……葉子じゃ私達のペースは無理ね――多分こんなので疲れていたら、きっと身が持たないわ」


【燈馬】

「まぁ……“昨日のレベルでヤッたら無理だな”――」


【瞑】

「えぇ……きっと、“本当に壊れちゃうわ”……?」


穂村姉妹と激しくヤリ合った後も、止まらず俺達はヤリ続けた。本当に俺達はぶっ壊れている。


そんな俺達のペースに巻き込んだら、葉子はきっと頭をヤる事だろう……。


人格が崩壊する危険性も十分あるのだ。


俺達はとっくにぶっ壊れて、コレが当たり前のセカイになっていた。


……モゾモゾ――スリスリィ〜〜シリシュリッ……。


【葉子】

「あぁ……学園行きたくない――本当に無理……キツイ……“マジで疲れてるわ”――私……ハァ……」


【瞑】

「……ふふっ? なら、“ココにずっといる”……? “本当にマジで疲れるコトになるけど”……ふふっ?」


【燈馬】

「まぁ……家に帰るか素直に学園行くか、どっちかにした方がイイぞ……? 多分、ココに居続けたら、お前――“瞑に襲われて壊されるよ”……マジで」


【葉子】

「うぅ゙……なら学園行こっかな――超しんどいけど……ハァ――仕方がない、もう起きるわ!! ふぅ……よし、アンタ達――サボってないで行くわよ?」


……シュシュ――ドンッ!! フラッ……。


【燈馬】

「おいおい、大丈夫かよお前――そんなにフラついて……?」


【葉子】

「“大丈夫なワケあるかよ”――しんどいっての!!」


【瞑】

「ふふっ……なら、“肩貸してあげよっか”――?」


【葉子】

「イイって――その内、良くなるだろうから……」


【燈馬】

「なら、今から学園行こうぜ? 多分、今から行けば、昼休みくらいには着くだろうし」


【葉子】

「あぁ……そうだね。とりあえず――アンタ達、学園サボってないで、ちゃんと来なさいよ?」


【瞑】

「分かってるわ? ちゃんと毎日行くから、葉子は朝からあまり、様子を見に来ないでね?」


【瞑】

「……多分暫くは、“私と燈馬は一緒に居るから”」


【葉子】

「へいへい……分かったよ。全く――コッチも朝っぱらから、アンタ達の絡みなんて見たくないっての」


【燈馬】

「そんじゃ――行こうぜ?」


【葉子】

「あいよ……ハァ――ダルい……」


【瞑】

「うふふっ……“コレもイイ経験よ”? その内……“コレが良く思える時が来るわ”? きっと……ね?」


【葉子】

「ハイハイ……そうならイイわね本当に――」


――やっと俺達は会話を終えて、学園に向かう。


フラフラした足取りで、葉子が辛そうにして……。


瞑はどこか嬉しそうに微笑んで――。


俺は今後の展開をただ考えていた。


恋がそのまま引き下がるとは思えない。


“必ず”……今後――“俺と恋は対峙する”。


作中、“悪役である燈馬のラスト”――。


作中に何も記載がなく、ただ……。


燈馬がくたばったであろうシーンで――。


更新がピタリと……止まったのだ。


だが……俺には恋がナニかを、手引きしてる様にしか思えない。


恋は幼稚園の頃から、燈馬と面識があった。


しかし――当の本人である燈馬は、その事を知らない様子だった。


幼稚園の頃の記憶なんてものは、とっても曖昧なもので、良く思い出せないものだ。


でも……恋はずっと燈馬に執着している。


恋が絡まないワケが無いのだ――。


きっと……“この幸せな偽りな日常も”――。


“ソロソロ終わりを迎える”。


そんな厭な予感が俺の脳裏に過った。


〈空発学園・屋上・昼休み〉


――今日はなんだかクソムカつく程、天気が良くて、気温も少しだけ高く感じる日だった。


本当に快晴で、柔らかな風が屋上に流れて……。


――カシュッ……。


【燈馬】

「……んっく、ンっくっ――ふぇえぇ〜〜ぃ!!」


【燈馬】

「……すぅ〜〜〜〜っふぅ…………ひゅうぅうぃ!!」


本当に最高に良い日だった。


片手に持った缶コーヒーをグビッと飲み、タバコを深く吸って吐いて……。


それはもう――極上で至福な時間を過ごす。


【燈馬】

「あぎゃぎゃ……危ない危ない――イクところだったぜ……あぁ――危ない……」


暫く振りのタバコとコーヒーは、脳ミソをグッチャグチャにして、ズキンズキンッ――と、あり得ない刺激と快楽を提供する。


本当にイッてしまいそうになるくらい……。


うまくて、美味くて、旨くて――堪らない……。


誰も居ない屋上でただ一人――。


こうしてコーヒーを飲みながら、タバコを吹かせるだけ……本当に幸せだった。


……ただ――この場に、“一匹紛れ込んでいるコトを除けばの話”だ。


――俺は察していた。前回感じた視線を……。


【燈馬】

「おい……“またお前がいんのかよ”――」


【燈馬】

「……っすぅ〜〜ふぅ……“ナニしてんの”? 塔屋に乗って、立ち尽くして……?」


俺はタバコを吸いながら、謎の薄汚れた美少女……夢月凛へ声を掛けた。


ソイツは、黒髪ポニーテールを少しだけ靡かせ……。


ボーっと……俺を眺めていた。


【凛】

「………………」


【燈馬】

「ったく……前回もそうだったけどよ、お前マジで無口だな……? もっと喋れや――前回、お前……最後に喋ってたじゃねえかよ?」


そう……俺はコイツに忠告されていた。


姫乃恋には気を付けろと……。


まさか……またバッタリ逢うとは思わなかった。


【凛】

「ふぅ……“あまり関わりたくないけど”――仕方がない……」


【燈馬】

「なんだよ……喋れんじゃねえかよ? 病気かなんかで、喋られねえんだったらまだしも……喋られるなら喋りやがれってんだ――」


人の事をジロジロ見てくるのだ、俺は思いっ切り凛に食って掛かった。


【凛】

「……言ったでしょ? “姫乃恋に気を付けてって”……まぁ――“もう遅いだろうけど”……」


【燈馬】

「もう……“遅い”? おいおい――お前、“ナニを知ってんだ”? そもそも……“お前は何者なんだよ”?」


【凛】

「……ソレも――“もうじき分かる”」


【燈馬】

「……っはは?! つまり、“俺に危機が迫ってると言いたいのか”?」


【凛】

「うん……きっと――“アナタは終わり”」


【燈馬】

「んな……なんでだよ? 意味分かんねぇし……」


【凛】

「……私が――“姫乃恋サイドの人間だから”」


――俺は背筋をゾワゾワさせていた。


“ナニかオカシイ”と思っていた。


燈馬を巻き込んだヤツは恋だけじゃない……。


“複数”――“関係している”。


“ココでほぼ全てが繋がった”気がした。


燈馬の最期――“その原因を作り出したのは”……。


やはり――“姫乃恋”だった。


俺はそう……“確信”していた。


全ては……“燈馬をハメて”――“全部潰す為に”――。


【凛】

「そうだな……“来週までかな”?」


【燈馬】

「なんだよ……“ソレが俺のタイムリミットかよ”?」


【凛】

「そうそう――それが“アナタに残された猶予”」


【燈馬】

「そうかい……ははっ――“俺も偉くなったもんだ”」


【凛】

「そう……“アナタは最期”――“喰われて終わる”」


【燈馬】

「ハハッ――“ココまで泳がせてくれてありがとう”」


【凛】

「……? “なんで笑ってるの”?」


【燈馬】

「いや……“悪役らしい最後で最期だなって”――」


【凛】

「うん……ソレもいいでしょ? “アナタはたくさん楽しんだ”――ふふっ……“月宮雅とも”――ね?」


【燈馬】

「――あぁ……そうだよ。“死ぬ程”、“楽しんでやったさ”――?」


【凛】

「だから――“その対価を貰うわ”」


【燈馬】

「まったく――困ったもんだぜ……どうしてこうなったのか――」


【凛】

「……さあね? それじゃ――」


……ふわっ――タンッ……。


【凛】

「“来週”――“また逢いましょう”?」


【燈馬】

「あぁ……“凛”」


【凛】

「んなっ――?! “なんで名前知ってるの”……?」


【燈馬】

「……悪いけど、“ちょっと調べたんだよ”」


【凛】

「……そうなんだ。フフッ――まぁ……“どうでもイイや”――それじゃあね……? “森燈馬くん”」


【燈馬】

「あぁ……“夢月凛”」


……そのまま凛は、スタスタと屋上を後にした。


【燈馬】

「ふぅ……なんかもう――“バッドエンドっぽいや”」


俺は半分以上――諦めていた。


ループ一回目で、何一つ問題は解決されていない。


“また別の展開で俺は死ぬ運命”――。


【燈馬】

「――すぅ……ふぅ……“参ったなコレは”――」


俺は何も出来なかったのだ。そう――“何一つ”。


魅力的なヒロイン達と、楽しくて気持ちの良い事ばかりして……。


何一つ――“俺は現状を変えようとしなかった”。


きっと――変えられた筈なのに……。


俺は……“変えなかった”。


瞑と一時の幸せを……感じ続けて――。


溺れたまま――俺はズブズブ沈んで行って……。


きっと――“変えたくなかった”。


一度知ってしまった愛情や烈情……。


そんなものを……失いたくなくて。


俺はまた失敗して間違い続けた。


誰かに踊らされて、最後は喰われて終わり。


本当に好き勝手やらかした悪役には……。


“相応しい運命だ”。


来週のドコかで、俺はまた死ぬのだろう……。


ループする保証がドコにもない……。


そんな未完のWEB小説の中で――。


俺はまた……“無様で情けなく死ぬ”。


【燈馬】

「そうだな……どうせ死ぬなら――最後の最期まで……“楽しんでから死のう”……」


幸せな未来には届かなかった。


なら――今を全力で楽しみ、生きるしかない。


俺はそのまま……“本当に残された時間を楽しむ”。


〈空発学園・翌週・金曜日・朝〉


――遂にその時は来てしまった。


朝っぱらから、茂が俺の元へ駆け寄り……。


――ピラッ……プルプル……。


【燈馬】

「……“果し状”――ね?」


【茂】

「おいおい……マジかよおい――“葉子が”……“拉致られたっぽいぜ”……?」


【燈馬】

「あぁ……これって、俺の机の上に……置いてあったんだよな?」


【茂】

「そうだ……たまたま、朝早く学園来ちまってな? そしたら――こんな手紙が置いてあったんだ」


【燈馬】

「随分……“可愛い果し状”だな? ハートマークまで書いてやがるしよ……なんだよこれ……?」


ただの白い封筒に果し状と書かれてあり、ピンク色のハートマークを書き残し……封筒をピンク色のシールで止めて……。


物凄い果し状を俺は受け取っていた。


【茂】

「わ……ワリぃ――勝手に開けて見ちまったわ。どうにも……気になっちまってな?」


【燈馬】

「イイって……別にラブレターじゃあるめぇし……」


【瞑】

「いや……“ラブレターでしょこれ”――」


【瞑】

「だって……“手紙の最後に”……“姫乃恋って書いてあるもの”――」


【燈馬】

「あぁ……そう――だな……」


手紙の内容はこうだった……。


今日の夜九時に郊外にある廃工場に来て。来ないと葉子ちゃん、どうなるか分からないから。


葉子ちゃんは無事だから絶対に来て。あと、私が勝ったら、燈馬くんを奪うわ。あと、燈馬くんだけじゃなく、残りの三人も連れてきてね? 姫乃恋。


本当にマズイ事になっていた。


葉子は拉致られ……今日になるまで、俺達に一切姿を見せなかった恋――。


ソイツが遂に……俺達に――いや、“俺に牙を剥く”。


【松之助】

「――マズイ事になったな。“あの葉子が拉致られた”……? おいおい……燈馬――“本当にヤバいぞ”」


松之助は青ざめた表情で、果し状を見ていた。


そう――あれだけ強い葉子が呆気なく……。


拉致られたのだから。


【燈馬】

「クソッ――ワリぃ……みんな――ちょっと付き合ってくれるか?」


【茂】

「……ったりめぇだろ――一人で行かせるかよ」


【松之助】

「あぁ……なんだか知らねえが、喧嘩でもすんだろ? 行くしかねえぞ……燈馬」


【瞑】

「……そうね――葉子を助けに行かなきゃ」


【燈馬】

「みんな……ゴメン――“俺のせいでこんな”……」


コレも何もかも……俺のせいなのだ。


半分は本当の燈馬のせいでもあるが、もう半分は俺のせいなのだから。


もし――“もっと前まで時が戻せれば”……。


“ナニかを変えられたかも知れない”――。


でも……最初もループ一回目も――。


“最初の朝にしか時は戻らない”――。


何かの強制力が働いているのか、“燈馬が死ぬ数週間前から始まる”。


赤ん坊まで遡り、転生をする物語じゃないのだ。


この物語は……“死ぬ数週間前から始まる転生物”。


燈馬の魂は消滅し……“俺がすり替わって”――。


最悪で最低なバッドエンドへ向かって行く。


そして……もう一回ループ出来る保証は無い。


本当に本当に本当に……最悪な状況だった。


【瞑】

「……仕方がないわ? 巻き込まれたアナタも悪いけど……“巻き込んだ奴等はもっと悪い”――」


【茂】

「あぁ……そうだぜ――燈馬……お前を巻き込んだ奴等が悪い」


【松之助】

「ふむ……そうだな、ここまで極端に大胆に悪意を向けるのは、正直なところ……“正気じゃない”――」


【瞑】

「えぇ……ちょっと悪趣味が過ぎるわ――“本当にイかれてる”……」


【燈馬】

「ふぅ……とりあえず夜九時に、またあの廃工場に行こう――“流石に終わらせてぇぜ”……“つまんねえ喧嘩なんて”――」


【茂】

「あぁ……“ココで最終決戦と行こうぜ”?」


【松之助】

「うむ……その方がいい――“燈馬には瞑がいる”。いつまでも、喧嘩ばっかしていられないだろう?」


【燈馬】

「あぁ……そうだな。出来るコトなら――“お前らと穏やかに学園生活を送りたいぜ”……」


【燈馬】

「ハハッ――? “楽しく穏やかに”……さ?」


【茂】

「あぁ……“俺もだよ”」


【松之助】

「“同意だ”――」


【瞑】

「そうね……“私もそうしたい”」


【燈馬】

「……“なら決まりだ”。なんだか分かんねえけどよ……“そろそろ終わらせようや”?」


【燈馬】

「“諸悪の根源をぶっ潰して”――」


【茂】

「あぁ……」


【松之助】

「おうよ!!」


【瞑】

「えぇ……“終わらせましょう”」


――こうして俺達は、恐らく……“最終決戦になるであろうシーン”まで進んで行く。


不安と期待が入り混じった、厭なザワザワした気持ちを抱えて、“俺達は最後の一歩を踏み出す”。


“展開不明の未知のルートへ”……。


〈郊外・廃工場・夜九時〉


――“コレが最後になるかも知れない”……。


そんな――“クライマックスシーン”。


“その最前線へと”――俺達は辿り着いていた。


【燈馬】

「さて……行こうか――“最終決戦へ”……」


【茂】

「あぁ……行こう」


【松之助】

「“全員”――“生きて帰ろうぞ”……」


【瞑】

「えぇ……」


【燈馬】

「…………そんじゃ、行くぞ!! 野郎共ッッ!!」


【茂・松之助・瞑】

「――おうっッ!!」


こうして俺達は――。


クライマックスへ進む。


全員……分かっているのだ。“タダでは帰られない”。


“そんなコトを”――。


でも……そんなバカな俺に……。


みんなは着いて来てくれた。


だから最期は――“せめて格好良く散る”。


俺は震える体を抑える様に、強く拳を握る。


情けなく、死んでやらないと決めていた。


悪役の最期――派手に散りながら悪役として終わる。


“この物語は”――“ドコまで行っても”……。


“悪役のままで終わるのだから”――。

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