姫乃恋の過去。

〈マンション・瞑の部屋・夜〉


――ナゼか……“俺達四人”は瞑の部屋に大集結していた。


本当は、葵と俺と瞑だけで話をする筈だった。


しかし――“本当にナゼか”……。


巴まで参戦して、“本当にカオスな状況”だった。


前回のパターンから察するに、本来は俺と瞑は秘密の遊び部屋で――色々とあった後……。


朝、葉子が迎えに来て……“更にカオスな状況”へ。


コレが、前回の流れだった。


しかし……その前に――穂村姉妹が参戦している。


ヤヴァイコトが起きそうで、俺は終始ビクビクして、ただただ……呆然としていた。


俺達はテーブルに備え付けの椅子に座り、ただただ静寂な時間を暫く過ごす。


部屋に掛けられた、時計のカチカチ音が妙に耳につく。そんな、なんとも言えない時間を体感しながら……。


そんな――静寂に痺れを切らした瞑は口を開く。


【瞑】

「さて――“ナニから聞いたものか”……ねぇ?」


瞑は俺へ目線をすっ……と、静かに合わせ、そのまま、事の顛末を問い掛ける。


【燈馬】

「……そうだな――まず、“始めに結論から話そう”……」


【瞑】

「えぇ……ゆっくりでイイわ? ちゃんと、ナニも隠さずに伝えて頂戴」


【燈馬】

「あぁ……結論から言うと、“この二人とヤッタ”」


――ガクッ……。


瞑は、ガックリと肩を落とす。


【瞑】

「うぐっ……そ――“そんなストレートに”……?」


【燈馬】

「本当にすまないと思っているが、本当にヤッチまったんだ……嘘はつきたくない――」


この際、俺はガッツリと瞑へ伝えるコトにした。


ヤッタものはヤッタ……それは事実であり、時を戻す事は出来ないコトなのだから――。


ループ後、更に酷い状況になっている事は、俺自身も知っていた。


でも……進み始めたシナリオはもう――止まらない。


本当に……ココで俺は、終わりになるかも知れない。


ハッピーエンドだなんだかんだ、願って思っていても……“薄々は気がついている”のだ――自分でも。


きっと――バッドエンドへ向かっているコトを……。


次、ループ出来る保証は無い。


ソレなのに――自分の優柔不断な部分が招いた悲劇。


いや……違う。自分もきっと――穂村姉妹と色々出来て楽しんでしまった。


調子に乗った結果、バッドエンドを迎えるコトを知っているのに……。


歯止めが効かなくなっていた。


悲劇なんかじゃない――コレは……。


“自分が招いた自業自得”なのだ。


またも俺は……瞑を結果――“裏切る形”になる。


本当に――“最悪で最低な悪役”に成り果てた。


【瞑】

「……ふぅ、それで――なんで、“貴女達”は燈馬にチョッカイを掛けたの?」


瞑のターゲットは俺から姉妹へと移る。


少しの間、攻撃対象が姉妹へと変わり、俺はホッとしていた。


俺は本当に“最低なヤツ”だった――。


【葵】

「……“コレには二つの理由”がある」


【瞑】

「は……はぁ――二つも……ねぇ――」


【葵】

「うん……まず一つは、“姫乃恋と宮原守をくっ付ける為”」


【瞑】

「……それは、“姫乃さんが燈馬を狙っている”から?」


【葵】

「えぇ……そう。それに――恋と仲がイイ私だから、恋には相当効くかなって……」


【瞑】

「いや……普通に、“逆効果”になるんじゃ……」


それには俺も賛同だった。そもそも、葵からそんな提案されたモノを、一発目で蹴ったのだから……。


それに――“姫乃恋は学園一の容姿”を持つ女の子。


そんなヤツが、本気を出せばどうなるか……。


そんなモノ――“火を見るよりも明らか”だ。


【葵】

「えぇ……それは理解してる。でも……“ソレしか私には思い付かなかったのよ”」


【巴】

「ふぅ……お姉ちゃん、そう言うトコ――“本当におバカだからね”……」


【葵】

「うっせえよ――巴、オマエは黙ってろ」


【巴】

「ハイハ〜イ……大人しくしてま〜す」


葵に怒られた巴は、ハイハイと、自分の両手を広げ、降参ポーズをした。


葵の凄んだ顔が怖くて怖くて……。


俺は思わず顔を伏せた。


【瞑】

「……ソレで? “もう一つ”は……ナニ?」


瞑は少し、諦めた様子で葵に問い掛けていた。


諦めたと言うより……呆れた様子に近いのかも知れない……。


【葵】

「……“守への想いを”――“忘れたかった”んだ……」


俺は葵の気持ちをなんとなく、理解出来ていた。


耳にバカほどピアスを着けているが、心はかなり……ピュア寄りなのだと――。


しかし――それで俺を利用するのは、かなり癪に障る。


だけど……守は恋に惹かれている。


もし仮に、葵が守にアタックしたとしても――。


きっと、守は葵を断るのだろう。


世の中そんなモノなのだ……。


恋は盲目とか言ったもので、一度興味が湧いたモノにはお熱になり、ずっと――追っかけ続ける。


それが、自然な事で普通のコトなのだから。


【瞑】

「ハァ……それで、“燈馬とヤッタんだ”……」


【巴】

「えぇ……そう。ただ――アハハッ……コイツ……“凄く良かった”よ? “ムカつくほど”――ね?」


【燈馬】

「やめてくれ……超恥ずかしいし、超気まずいだろうが――」


まさか瞑の前で、そんなコトを言われるなんて、俺は思ってもみなかった。


【葵】

「いや……事実、本当に良かったよアンタ」


【燈馬】

「は……はぁ……」


【瞑】

「全く――“コッチ”は、“そんな楽しそうなコト”まだ出来てなかったのに……」


【燈馬】

「いや、なんかゴメン……瞑――」


きっと……俺がすり替わる前まで、燈馬と瞑は、そんなに深く繋がっていなかった。


そう思うと、胸が苦しくなる。


本当の彼女より――他の女の子とイチャイチャしているのだ……。


本当に終わっていた。


【巴】

「さて……“巴の番”ね? 簡単に言うとね〜〜」


【巴】

「お姉ちゃんが燈馬に手を出す前に、“私が最初に手を出した”んだよ?」


【瞑】

「ふぅ……アナタはナニ? “燈馬を襲った感じ”なのかしら?」


【巴】

「うん、そう。クヒヒッ――お姉ちゃんも言ってたけど……燈馬は凄く良かったよ? なんか……凄く心が満たされて……“相性が良かった”」


【燈馬】

「ウゲッ――言うなよ……いらねえって、んな情報……誤解されんだろバカがよ?!」


【巴】

「いや、だってお姉ちゃんも言ってたけど、事実だしソレが」


【燈馬】

「うぐっ……ま――まぁ……そうなのね?」


瞑の前で俺は、穂村姉妹から特大ダメージを受けていた……。


本当に心にグサグサと刺さるモノを感じる。


遠慮もヘッタクレもない、強い攻撃に思えた。


【瞑】

「うっふふ……“モテモテじゃない”――燈馬……?」


【燈馬】

「は……はぁ――ぃ……」


瞑はどこか、薄ら笑いを浮かべ――。


目を細め……スッ――と、赤い瞳を俺へ向けた。


ニヤァ……っと――厭な笑みを浮かべる瞑を見た俺は、背筋をゾクゾクさせるのであった……。


【葵】

「それと……瞑さんだっけ? 本当にごめんなさい……“燈馬を使ってしまって”――」


【瞑】

「ううん……イイのよ? ふふっ……むしろ――“良かったわ”? ちゃんと、“燈馬はそんなコトを出来るくらい”、“元気で”……ね?」


【燈馬】

「は……はぁ……い――とっても、元気ですぅ……」


事実――俺は元気なモノだった。


前回を乗り越えた? いや、ループした俺は確実にタフになっていた。


“姫乃恋との”……“アレに比べたら”――雲泥の差を感じる程、楽なモノなのだから――。


【巴】

「私も謝るよ、本当にごめんなさい。でも……“後悔はしてないよ”――? “燈馬から学んだコト”が沢山あったから……」


【瞑】

「うっふふ……“本当に面白い子”ね――アナタ」


【燈馬】

「……瞑、マジで許してやってくれ――全て、俺が悪いんだから……」


【瞑】

「ううん……? 私が、“個人的に二人に興味が湧いたの”――だって、“面白そう”だし……?」


なんとなく……次の展開は読めていた。


どうせ、瞑は――“姉妹をオモチャ”にするのだ。


コレはもう……“確定事項に近いモノ”だった。


“イイオモチャ”が見つかれば、ツバをつけないワケが無いのだ……。


瞑はきっと……そんな女の子なのだから。


【葵】

「……ソレで、“まだ話し合うコト”はあるよ?」


【瞑】

「話し合うコト……? ナニかしらそれは?」


【燈馬】

「……“姫乃恋のコト”だろ――?」


俺はすぐに頭を切り替えた。


アイツだけは本当に、距離を取らないとイケない女なのだ。


そう……この未完のWEB小説の中で――。


“一番重要なポジションにいるヤツ”。


それが――“姫乃恋”なのだ……。


【葵】

「そう……“恋のコト”だ。あの子、“マジでアンタを狙ってる”っぽいし、恐らく……いや――」


【葵】

「“必ず”――“アンタと今後”……“接触するだろう”」


――ゾワゾワッ……!!


俺は葵から飛び出た言葉に、背筋を凍らせた。


【燈馬】

「うぅ……なんか寒くなってきたわ――クソッ……」


【瞑】

「ふぅ……どんだけアナタは“トラブル体質”なのよ」


【燈馬】

「知らねえよ……んなもん、神様にでも聞いてくれ――マジで、困ってんだからコッチは……」


本当にスンナリ行かないモノだった。


そもそも……“悪役は死ぬ運命”なのだ――。


それを半分諦めながら、半分期待もしている……。


そうして俺は一歩ずつ進んでいる。


答えが見つからない……道をずっと俺一人――。


【葵】

「私が出来る対策は、アンタと関係を持ったから、近寄るなと忠告する事くらいね……?」


【巴】

「う〜〜ん……無理でしょ? 私も、チラッと学園で姫乃さん見掛けるけど、あの子――超可愛いし、超キレイだし……なにより――“手強い”よきっと……」


巴が畳み掛けながら、早口で語る様に……。


俺自身も姫乃恋の手強さは知っていた。


ある意味ホラーの様な、怖さも強さもあるのだ。


【瞑】

「確かに……彼女――喫茶店で私に絡んできた時、正直……凄く怖かったもの……」


【瞑】

「なんと言うか……“底が見えない”――怖さ? そんなモノを私も感じたわ?」


【燈馬】

「はぁ……なんなんだよ、その姫乃恋とか言うヤツは……」


本当に俺達は頭を抱えていた。


しかし、そんな状況を崩すのは――。


【巴】

「なら、“いっそ姫乃さんもコッチに入れて”、“囲っちゃえば”?」


【葵】

「んな……“ハーレム”じゃないんだから……」


【瞑】

「……う〜ん――どうだろう……私には難しい話に思うけど……」


【燈馬】

「――俺も、瞑と同感だ。恐らく……姫乃恋とか言うヤツは――“独占したい様なヤツ”だろう……」


前回言っていたのだ……初恋の人だと。


そして……前回俺は姫乃恋に拘束されて、身動きが取れず……死んだのだから。


【瞑】

「困ったわね……一応、“私がアナタの彼女なのに”」


【燈馬】

「……悪いね――俺も“記憶が無い”から、ナニがなんだか分からんのよ」


【葵】

「ちょっと待って――“記憶が無い”ってナニそれ?」


【瞑】

「あぁ……ソレね? なんだか知らないけど、今の燈馬はナゼか……記憶がぶっ飛んで消えてるらしいのよ……」


【巴】

「ナニソレ……“面白い”じゃん? 記憶が無いまま、彼女いるのに、私達とシタとかマジでウケる」


【燈馬】

「……なんも、面白くねえよ……トホホ――」


本当に笑えない冗談だった。


俺は本当に、悪役に成り下がってしまった。


笑えないほどに――。


燈馬のコトをナニも言えないのだ。


【葵】

「そりゃ……なんだか、災難だね……いや、マジでゴメン……」


【瞑】

「イイのよ、燈馬は“いつもこんな感じ”だし……」


【燈馬】

「ったく――俺は一体、どんだけ酷い人生を描いて来たんだよ」


現実世界でも、ろくでもない人生を――。


こんなイカれた異世界の中でも同じコト。


本当にイカれ散らしていた。


【葵】

「しかし……変だね本当に。だって、“アンタと恋はほぼ接点無い”でしょ? いや……ほぼも無いな」


【巴】

「そもそもさ……その恋さんとか言うの、“どんな人なの”? ちょっと、気になっちゃった」


【葵】

「そうだね……恋と出会ったのは私達が、“中等部の時だった”かな――?」


【燈馬】

「中等部……? あぁ……そう言うことか――」


中等部とは、恐らく……中坊の頃の話なのだろう。


この世界の設定は、確か……。


義務教育が超長くなった、日本の話だった。


大人向け作品によくある、無理矢理設定を捻じ曲げた世界。


それが、この未完のWEB小説の世界だった。


【葵】

「ソレで、“私と守はシャッフル合宿で出会った”のよ――」


【巴】

「あぁ……巴もあったな――シャッフル合宿……」


【燈馬】

「ナニソレ……シャッフル――合宿……?」


俺には聴き馴染みの無いモノだった。


【葵】

「う〜ん……良く分からないけど、全然知らないクラスの人達と、ランダムで旅行しながら色々と学ぶイベント……?」


【燈馬】

(修学旅行?! それも……ぜんっ――ぜん知らないヤツと……? 絶対にヤバいヤツじゃねえか!!)


――そんな修学旅行が現実世界になくて、俺は心底ホッとしていた。


その知らないヤツが地雷で、ヤバいヤツだったら……。


多分、俺は泣いているコトだろう……。


【葵】

「それで、そん時に恋と出会ったんだけどさ? そん時の恋は、今の赤髪じゃなくて……“黒髪だった”」


【燈馬】

「……なんだソレ? 喫茶店でチラッと見掛けた時、赤髪だったぞ?」


【葵】

「あぁ……そん時の恋は、“超暗くてさ”――“超地味だった”」


【瞑】

「なんだか――今の姫乃さんとは、想像がつかない話ね……?」


【瞑】

「だって――姫乃さん、超美人で、超……可愛かったわよ? 直接、眼の前で話をしたけれど、本当に凄かった」


【燈馬】

「なんだか知らねえけど……“学園で一番”なんだろ?」


【巴】

「うぐぐっ……悔しいけど、姫乃さんの話は結構聴くよ? みんな口を揃えて可愛いだの、綺麗だの胸がデカイだの、そんなのバッカリだよ!!」


巴は超悔しそうにしていた。


正直……俺はザマァ!! と……心のソコでは感じていた。


ナゼそう思ったのかは、自分でも知らない……。


なんとなく……ウザかったのだろう――。


巴は、ウザ可愛いヒロインの代表格なのだ。


そんなヤツが悔しがるのは、心がスカッとして、なんだか清々しい気分になる。


【葵】

「うん……恋は今では魅力的で可愛いし、愛嬌もあるし、ソコソコ社交性もある子だよ?」


【葵】

「でも……前はそうじゃなかった。なんて言うんだろう……とにかく――“超が付くほど暗かった”……」


【燈馬】

「ふぅ〜〜ん……? なんか変なヤツなんだな」


【瞑】

「いやいやいや……燈馬――“アナタほど”、変なヤツ中々居ないわよ……」


【燈馬】

「うげっ――まぁ……そぅ……だょ――ね?」


【葵】

「フフッ――まぁ、ね? でも……“アンタと恋は似た様なもん”かもね?」


【瞑】

「でしょうね……なんか――姫乃さんは怖かった」


【葵】

「うん……ソレはあるよ。それで、昔の恋の話に戻るけどさ? あの子は、ほんっ――と、無口でさ」


【葵】

「……今でも、ナニ考えてるか分からないけど、異様な程……“不気味”だったよ」


葵はなんだか、昔のコトを思い出し、ゾッとした様子を見せていた。


自分の体を抱き締める様な姿を見せて……。


【巴】

「なんだか、“闇が深そうで怖いよ”……お姉ちゃん」


【葵】

「そうよ……あの子は合宿中、私達と会話はすれど、どこか……上の空だったし、ナニより――」


【葵】

「合宿中……一人でどっかに行って、“単独行動”とかしまくってたっけ――」


【燈馬】

「――っだよそれ……“協調性の欠片もねぇヤツ”じゃねえか……」


【瞑】

「アナタも……“モラルが一切無い”けどね……?」


【燈馬】

「ちょっとヤメて!! 分かってるから!! うん……自分でも知ってるの!!」


【葵】

「アハハッ――ナニその“夫婦漫才”みたいなの……」


【燈馬】

「イイって……次行って頂戴? 続きが知りたいですわ……うん……」


俺はこれ以上、ダメージを受けたら死んでしまう。


これ以上のダメージは本当に駄目だった。


胸が張り裂けそうなのだから……。


【葵】

「ハイハイ……それでね? 無事……? シャッフル合宿は終わって、”次は学園編に入るわけ”」


【燈馬】

「は……はぁ……それで?」


【葵】

「そしたら……黒髪じゃなく、赤髪になって、“超イメチェン”して、私達の前に現れたのよ」


高校デビューみたいな……感覚なのだろうか?


地味なヤツが高校に入って、垢抜けた。


俺には良くある話に聞こえた。


【葵】

「それで、まぁ……性格もなにもかも……変わってて、モテるモテる――それはそれはもう、死ぬほどあの子はモテまくりよ……?」


【燈馬】

「は……はぁ……そんなに一気に言うくらいなら、本当にソイツはモテるんだな……」


【葵】

「で……まぁ――“全部断ってた”けどね?」


【燈馬】

「で……ナゼか、そんな“高嶺の花”が、俺に好意を寄せてると……?」


【葵】

「――そう。意味分からないでしょ? でも、ソレが事実なのよ」


【瞑】

「ソレで――? “今の彼女はどんな感じ”なの?」


【燈馬】

「ソレだよソレ……俺も気になるわ」


本当に俺は気になっていた。


一気にナニかが、変わる気がして。


【葵】

「そうだね……結構、私達は遊んでる方だけど、“昔と変わらないコト”はある」


【葵】

「例えば……たまに――ふらっと、“ドコかに行ったり”、遊びの誘い断るコトも多いかな?」


【燈馬】

「は……はぁ――つまり、“昔からミステリアスな部分”は、“なんら変わってない”ってコトか……?」


【葵】

「まぁ、端的に言えばそうなるね? 未だに、あの子のコトは、良く分かってないのが現状よ?」


【燈馬】

「クッソ厄介じゃねぇか……ぜんっ――ぜん、核心的なコトが分からねぇ……」


【巴】

「フゥ……“乙女にも秘密はある”のよ? まったく、分かってないなぁ〜〜燈馬は……ほんっと――」


【燈馬】

「……そうだな」


恋に秘密がある様に……。


俺にも――“超ドデカイ秘密”があった。


死んだ燈馬にすり替わったヤツが――。


ただの……“無職なオッサン”なのだから。


――本当に笑えない、大きな秘密だった。


【葵】

「ソレと……多分……」


【葵】

「“アンタは逃さない”……と――思うよ?」


――ゾゾゾッ――ゾクゾクッッ!!


俺は思いっ切り、背筋を凍らせていた。


前回の記憶がフラッシュバックしてもう……。


【燈馬】

「勘弁してよ……なんで、“彼女いる俺狙ってくんのよ”……」


【葵】

「“だからでしょ”……多分。あんだけ、“色んなヤツの告白断って来た恋が”、“アンタを狙ってんだ”」


【葵】

「きっと……彼女がいるとか、いないとか――」


【葵】

「そんなの、“最初から気にしてないと思う”……」


【瞑】

「ふぅ……そうね? 私が姫乃さんだったら、そんなの気にしてないかも?」


【瞑】

「だって、全員断ってでも、“本当に自分が欲しい相手をみつけた”んだもの……」


【瞑】

「それはもう……“奪ってでも欲しい”でしょうね?」


【巴】

「そうそう……私もそんな感じだったし? クヒヒッ――彼女いる燈馬をそんな感じで、“襲ったの”」


【葵】

「まぁ……私も――人のコト言えないけどさ……」


【燈馬】

「どうしてこうなった……本当に――あはは……」


俺は笑うしかなかった。


登場人物、全員もれなく――イカれていたのだ。


それはもう……笑うしかない――。


【瞑】

「本当に困ったな……多分、このままじゃ、本当に燈馬は、姫乃さんに襲われちゃうだろうし……」


【燈馬】

「とりあえず……俺達は、ソイツと遭遇しない様に行動するしかないな」


【葵】

「うん、私も協力するよ。“見える範疇では”」


【燈馬】

「葵……暫く、“姫乃を監視しといて”くれよ?」


【燈馬】

「おりゃあぁ……やだよぉ? そんな、危なそうな女と接触するのは……うん」


【巴】

「そうだね、多分――本気で避けた方がイイよ? 姫乃さん、私の勘だけど……ガチで奪いに来るから」


【瞑】

「えぇ……間違いなく来ると思う。あの子の眼差しはガチだったわ……紛れもなく――」


【瞑】

「それに……“厭な気配”もしたし……危険すぎるよ姫乃さんはやっぱり」


【葵】

「うん、マトモに対応するだけ無駄。こう言う時は“逃げるが勝ち”なんだよ」


【燈馬】

「そうだな、間違いねぇな……」


問題は、“逃げられるか”だ……。


“強制イベント”みたいなヤツを、どうやって掻い潜るのか……。


今の俺には考える余地もない。


そして――“大問題がもう一つ”ある……。


それは……“作中の本当の主人公”が本当に――。


“人畜無害”で……終わっている点だ。


普通はもっとこう――ドコかで見せ場の一つはある筈なのだが、一向にそれは訪れない……。


一体、この物語を書いたヤツの構想は、どうなっているのか。


本当に分からないまま、飛ばれた……。


本当に思い付きで書き始め、途中で迷走し始めて、途中で書くのを止めた。


そんな未完のWEB小説なのだろう。


一体、この物語をどうゴールさせたかったのか……。


誰も知る由もない――。


【瞑】

「さて……“この話はココまで”にしましょうか?」


【瞑】

「うっふふ……ココからは――“私の秘密”を解放するんだから……」


【巴】

「えぇ〜〜ナニソレ!! なんか面白そう!!」


【葵】

「秘密……? ナニソレ本当に……」


【燈馬】

「…………」


俺はソレについて一言も語れない……。


だってソレはもう――。


【瞑】

「ふぅ……とりあえず、“アナタ達”――分かってるわよね? “人のモノ”に手を出したんだから……」


【葵】

「うぐっ……」


【巴】

「ナニナニ……? “お仕置き”でもするの?」


【瞑】

「えぇ……“ソンなトコ”よ?」


【燈馬】

「“許したんじゃ”……ナインスカ――?」


【瞑】

「えぇ……許したわ? でも……“誠意は魅せてくれないと”……」


【燈馬】

「は……はぁ……」


【瞑】

「あぁ……“アナタ”もよ? “燈馬”……ふふっ――」


【燈馬】

「は……はひぃっッ――!!」


【葵】

「ふぅ……“そう言う感じね”……分かったわ――」


葵はラブリーなホテルでの、俺の発言を思い出したのか、堪忍した様子で肩を落とした。


【巴】

「なんだか分からないけど……クヒヒッ――面白そうだからイイや……」


【燈馬】

「………………」


また――始まってしまう……。


瞑の部屋で――いや、“瞑の秘密の遊び部屋”で……。


狂気と狂喜に満ちた――“アレ”が。


後はもう――瞑にブッ壊されるだけ……。


コレからは“瞑のターン”だった。


最強で最凶で最高な……夜が始まる。

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