緊急会議は難航する。
〈繁華街・喫茶店〉
――心が酷くザワつく中、俺は本題を切り出した。
【燈馬】
「……さて――そろそろ、お前たちのことを教えて貰おうか」
コーヒーから始まり、コーラを拒否して、主人公達と遭遇した。
正直、まだ頭がついてこない。
それでも、俺は聞かなくてはならない――。
俺が……“殺される未来”を回避する為に。
【葉子】
「――そんじゃ、アタシから。アタシは八崎(葉子」
【燈馬】
「はい、次……!!」
あんまりダラダラしていると、話がそれそうだったので、俺はパンパン話を振ることにした。
【???】
「次は俺の番か……俺は猪瀬茂だ」
【燈馬】
「オッケー、茂な?」
【茂】
「おうよ!!」
【燈馬】
「最後は……お前だ」
俺は少しだけ言い淀んだ。何故なら……。
【???】
「権堂松之助だ!!」
【燈馬】
「……よろしい!!」
松之助とやらは超デカく、ガタイもよく、スキンヘッドで――超……強そうだったからだ。
俺の直感は告げていた。
コイツは敵に回すとヤヴァいと……。
ヤバいではなく、そりゃもう……ヤヴァいのだ。
【瞑】
「それじゃ一応、私は月夜瞑よ」
【燈馬】
「……ふふっ――なんかイイね、ガタガタなメンバーで気にいったよ」
ほんっ――と、ガタガタで、ゴツゴツしたメンツだった。
でも、悪くは思えなかった。なんというか……。
こんなガッタガタな仲間達を、俺は待ち望んでいたのかも知れない。
きっと、マトモなWEB小説の中じゃ、こんな奇抜なメンツにはならない。
主人公サイドも、敵も味方も……。
美形かゴツくても格好イイのが普通だろう。
でも松之助は背が高く、スキンヘッドで見るからに筋肉隆々で、決して若くは見えない。
なんなら、現実世界の俺より老けて見えて、めちゃんこ渋い顔をしていた。
【葉子】
「ゲッ――なに、アンタ……松之助に“気”でもあるの?」
【燈馬】
「ねぇよっッ!!」
俺は光の速さで否定した。
【葉子】
「いや、だって今――凄く、松之助の体をジロジロ見てたじゃない?」
【葉子】
「ねぇ……? 瞑」
【燈馬】
「いや、瞑じゃないんだが……?」
【瞑】
「えっ……そうなの? 燈馬」
【燈馬】
「いやいやいや……無い無い無い!! 断じて無いぞ!! 俺はノーマルだ!!」
【松之助】
「…………」
松之助は無言を貫き、一人、腕を組んで目を瞑っていた。
俺はそれが怖かった。
【葉子】
「まぁ、冗談だけどさ? アンタは……ふふっ――」
――グイッ!! ムニュんっ!! ポヨンっっ!!
【葉子】
「“コッチの方”が……好きそうだしね……?」
【瞑】
「葉子――喫茶店の中で下品なことしないでよ……」
葉子は自分の胸を掴むと、揺れ動かして魅せた。
これがまた……どデカいのだ……。
【葉子】
「まぁ……“アンタは出来ない”だろうけどね、瞑」
【瞑】
「ハイハイ、偉い偉い……どうせ私はまな板ですよ? でも、別にいいんだよ動きやすいし」
【瞑】
「それに、こんな私にも一定の需要だってあるし、服は選び放題だし? 全然、効いてないから!!」
【燈馬】
「――なぁ……茂、いつも……あの二人はああなのか……?」
俺は気になって、コソッと茂に声を掛けた。
【茂】
「まぁ……たまにああして、じゃれ合ってんだよ」
【燈馬】
「そ……そうなのか、へ……へぇ?」
女っていう生き物は、とても不思議なものだと俺は思った。
ギャーギャー騒いで、なんかやっているのだ……。
【燈馬】
「で……話は終わったか? 次に進みたいんだが……」
俺は痺れを切らし、二人に話し掛けた。
【瞑】
「うん、もういいよ」
【葉子】
「アタシも満足したよ」
【燈馬】
「あら……お早いこと」
謎のバトルはすぐに鎮火していた。二人とも、なんだか物凄くケロッとしていた。
そんなこんなで俺は“重大なコト”を告げる。
【燈馬】
「さて……みんな聞いてほしい。これからのコトを」
みんなは黙ってくれるようだった。誰一人口を開かず、無言を貫いていた。
だから俺は――。
【燈馬】
「……もう少しすると、俺は恐らく――“死ぬ”」
超簡潔にみんなに伝えた。
どんな反応が返ってくるのか、俺はドキドキしながら待っていると……。
【葉子】
「……アンタが“死ぬ要素”あるの?」
【燈馬】
「へ……?」
それは俺が求めていた反応とは、少し違っていた。
【茂】
「同感だぜ。燈馬が死ぬ要素が見当たんねえよ」
【松之助】
「うむ……燈馬は強い、何者かに殺られることは無いぞ!!」
【瞑】
「一応、念の為、みんなには話したんだけど、誰も信じないんだよね……」
【瞑】
「まぁ……そんな私も、信じ切れないけどさ……?」
【燈馬】
「そっか――そうだよな……ただ、俺がそんな気がするって話を、信じろってことが無理がある」
これで俺は孤立した。うまく行けば、回避出来るルートが見えたかも知れない。
そのルートがたった今、切られたのだ。
……スッ――カタッ……。
落ち込んだ俺の元に、ホットコーヒーが置かれた。
【マスター?】
「燈馬、お前に名を伝えるのを忘れていた」
【燈馬】
「はっ――はぁ……」
【マスター?】
「俺は、この喫茶店の店主……“マスター”だ!!」
ガンッ――!! びしゃっッ!!
【燈馬】
「それだけかいっッ?!」
思わずテーブルを叩いてしまった。おかげで、少しだけホットコーヒーを溢した。
俺は呆れながらマスターを見ていた。
【マスター】
「“俺は信じる”ぞ、燈馬……だから用心しろよ!!」
【燈馬】
「まっ――マスター!!」
別にマスターに理解されても嬉しくはないが、内心、俺の心はチョッピリ救われた。
【瞑】
「ふぅ……飲まないなら私が飲むわよ、燈馬」
……カチャッ――。
【瞑】
「――ススッ……うん……美味しいコーヒーだ」
【燈馬】
「ちょっと瞑さん!? それ……俺のコーヒー……」
俺のコーヒーは瞑に奪われてしまった。
【マスター】
「ニィ〜〜? やっぱり燈馬はコーラだよな?」
【燈馬】
「ちょっと、もう嫌ぁ〜〜なにこの人達……」
全然、緊急会議が進まなくて頭を抱えていた。
俺の悩みは一つだけ。
このメンツ達と上手くやっていけるのか……。
それだけだった。
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