第16話 片桐班の射撃の腕前
射撃位置についた岡田に絵美里が声を掛けた。
「岡田タン。
装填、構え、照準、射撃を今教えた手順で5発撃ってみてくださいね~!
絵美里タンがチェックしますからね~!」
片桐が腕組みをしたまま言った。
「岡田、実体化弾頭なら妖怪も人間や獣と同じ場所が急所だ。
中心線、心臓の辺りを狙えよ。」
「SIG撃つのは初めてだから時間かけて良いですよ~!」
岡田は3つ並んだターゲットの1つの前で慎重に狙いを付けてトリガーを引いた。
サクラより数段強い反動と、オートマチックならではのスライドが前後に動き、排莢と装填する動きに多少戸惑った。
弾丸は辛うじて9点の範囲の下の方に当たった。
片桐がにやにやしながら声を掛けた。
「岡田、反動を怖がって握り込み過ぎだ、手にも腕にも上半身にも力がこもり過ぎているぞ!
もう少しリラックして撃て。
そしてもう少し低く構えろ。」
岡田はSIGを構えたまま一度深呼吸をして狙いを修正しながら残りの4発を時間をかけて撃った。
残りの弾丸は9点の範囲内、1発が10点内、5発の弾痕はまぁまぁ中央寄りに集まった。
岡田は弾丸を撃ち尽くしたSIGを規定の動作でマガジンを向いて射撃台に置いた。
片桐、熊夜叉が射撃台に来ると岡田が撃ったターゲットを眺めた。
「ふん、最初にしては…まぁまぁかな?」
熊夜叉がニヤリとした。
「現場では射撃の腕は2割くらい落ちるけどな。
そして相手はおっかない妖怪だぜ。
まぁ、暫くはお前のケンとメリ―に任せた方が良いな。」
絵美里が岡田を励ますように笑顔を向けた。
「なに、岡田タンもあと1000発くらい撃って練習すれば大丈夫ですよ~!
霞タン、熊夜叉タンお手本を見せてあげたらどうかな~?」
「そうだな…。
岡田、まぁ、見ていろ。」
片桐が腰のホルスターからSIGを抜くと低く構え両手で構えると連続射撃を始めた。
岡田が撃ったターゲットの中心、10点圏内に穴が開き見る見ると大きくなった。
コンバットロードの13発が全て繋がってワンホールに収まり、片桐は手首を振って撃ち尽くしたマガジンを振り出すと目にも止まらない速さで新しいマガジンを装填し、またターゲットに向けて構えた。
そして身を起すとSIGをホルスターに収めた。
その素早く正確な射撃に岡田が目を見開いて固まっていると、その横で熊夜叉が両脇から2丁の銃身を切り詰めたダブルバレルのショットガンを抜き、まず右手のショットガンを2発、ターゲットに撃った。
もはや穴だらけのターゲットの中央部にばかばかしいほど大きい穴が二つ開き、そして左手のショットガンを2発撃つと、ターゲットの中心部が紙吹雪のように細かく引き千切れて宙を舞い、ターゲットの下半分が下に落ちた。
その間に片桐が自分のSIGのマガジンを抜いてポケットから40口径弾を1発追加で装填してからマガジンをSIGに差し込んだ。
これで片桐のSIGはマガジンに満タンの12発の他に薬室に1発の13発、コンバットロードにするとホルスターに納めながら言った。
「岡田、うちでは自動拳銃は常にコンバットロードだ。
1発が生死の分かれ目になる場合もあるからな。
そして、熊夜叉のデカい手ではSIGは握れないから、8ゲージのダブルバレルショットガンでグリップとトリガーの用心鉄を大きく広げたものを使っているんだよ。
1丁にはスラグ弾、もう1丁には散弾が装填してあるんだ。
乱戦の時は絶対に熊夜叉の前に出るなよ。
下手をするとミンチより酷い状態になるからな。」
熊夜叉がショットガンを2つに折ってばかばかしいほど大きなショットシェルを抜くとポケットからまたショットシェルを抜いて装填した。
岡田は交番勤務の時に猟銃の不法所持を摘発した時にショットガンの12ゲージのショットシェルの大きさにぞっとした事がある。
これで撃たれる側になりたくないなと思っていたが、熊夜叉のショットガンは8ゲージ。
12ゲージより大きい10ゲージよりさらに一回り大きい弾薬だった。
そんなに装薬が多い弾薬なら反動だって半端じゃない強さだろうが熊夜叉は片手で難なくターゲットの真ん中を撃ち抜いた。
(あんなこと出来るのは人間じゃないよ…あ…熊夜叉警部補は妖怪だったっけ…片桐警部だってあの射撃はとても人間業じゃない…何なんだよこいつら…。)
そんな思いをしている岡田に片桐が声を掛けた。
「岡田、抜き撃ちで4秒以内でターゲットのな、この距離だったら10点圏内に全弾撃ちこめるように仕上げろ。
それが出来るまでお前にSIGを持たせられないな。
今日、夜に春日部に張り込みに行くが、お前はサクラを持って行け。
張り込みの時はケンとメリ―もすぐに開放出来るようにしておけよ。
絵美里、机を借りるよ。」
そう言うと片桐と熊夜叉は射撃場の隅の机で撃ったばかりの銃の掃除を始めた。
絵美里が岡田に笑顔を向けた。
「さて岡田タン、射撃の練習を始めましょうね~!」
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