第13話 研修6 色々現実を知る
「これならね!
ケンとメリ―が思い切り噛みついても食い破られないし、大口径のライフル弾でもきちんとした古刀の日本刀の斬撃でも食い止められるんですよ~!
凄い凄い優れモノなんですよ~!」
絵美里が岡田にチョッキを差し出した。
岡田が手に取ると確かに軽かった。
そして柔軟性もあり体に装着してもフィットして動きを妨げる事は無いだろう。
興奮した絵美里が話し続ける。
「本当はこの繊維で全身を覆う、全身タイツみたいなものを作りたいんだけど、なにせ素材の超希少種の体毛が少ないのでね~!」
岡田はそれでも今まで支給されている冗談のように頼りない防弾防刃チョッキよりもずっとましだと思った。
「しかし、どれもこれも凄い装備だと思いますよ。」
「うふふ!
そうですね~!
でも、こういう装備を揃えてもY事案特捜部の殉職率は高いんですよ~。」
「…。」
「それに殉職率だけじゃなくて、勤務で精神をやられてしまって再起不能になる人の確率も高いんですよね~。
今、埼玉県警でもY事案特捜部の人間捜査員の為の精神的ケアの部署を作ろうとしていますけどね~!」
絵美里がため息をついて今度は岡田も使った事がある幽霊を強制的に昇天させるスプレー缶を手に取った。
「あら、これは岡田さんも使ったことありますよね。
特に説明はいらないかな?」
絵美里がスプレー缶をポイとテーブルに捨てると今度は紙箱から何やら取り出した。
「あ、岡田さんは蛇とか大丈夫ですよね?」
「え、ええ、まぁ、毒蛇とかじゃ無ければ…うわぁ!」
絵美里の手には手のひらサイズのとぐろを巻いた黒い蛇が乗っていた。
「ななな、なんですかこれは?」
「うふふ、これはね、妖怪専用の手錠です。
まぁ、人間にも使えるけど、これを人間に使って超蛇嫌いの容疑者が精神がおかしくなってしまって…人間にはなるべく使わないでくださいね~!」
そう言うと絵美里が蛇のしっぽを掴んで岡田の手に投げた。
岡田は悲鳴を上げて逃げようとしたが、宙を飛んだ蛇の身体が素早く岡田の手首に巻き付き、頭をくねらせて岡田のもう片方の手首に巻き付き、体を収縮させ、岡田の両手首を引き寄せると手錠の様に拘束してぎゅ!と硬化した。
確かに手錠の様に岡田の両手首が拘束された。
「これ、この蛇手錠は海外製なんですよ。
メデューサの頭の蛇から何匹か少し頂いて養殖したものです。
どんな鍵も通用しないし、下手にもぎ取ろうとすると噛みつくし、そして鋼鉄以上の耐久性がありますからね!
これで拘束したら熊夜叉さんでも外せないですよ~!」
そして絵美里が小さな鍵、と言うか、スプーンのような物を取り出して蛇の口に突っ込んだ。
蛇が小さく悲鳴を上げて口を開けると体が緩み、岡田の手首から離れて宙を飛び、絵美里の手のひらでまたとぐろを巻いた。
「蛇手錠、凄く便利なんですけどね~!
くれぐれも人間の容疑者に使わないでくださいよ~。
人権弁護士とか変な人達がうるさいから。」
「え?
俺達、特捜部で人間も捕まえるんですか?」
絵美里がおかしそうに笑った。
「キャハハ!
当り前じゃないですか~!
Y事案特捜部と名前が付いているけど、私達は妖怪が人間に行う犯罪と人間が妖怪に行う犯罪も取り締まるんですから~!
今日だって霞タンや熊夜叉タンは神社に入り込んで妖怪の持ち物を壊した不良グループの摘発に行ってるんですよ~!
ほら、ドキュンて言うんですか?
ろくに躾が出来ていなくて頭がおかしい変な人達がいるじゃないですか?
あいつらはよく心霊スポットと言われている所や神社や祠や霊場に入り込んで頭がおかしいおサルの様に落書きしたり物を壊したり、まぁ、奴らには判らないけど妖怪の生存に必要な物を壊したり傷つけたりしますからね~!」
「…。」
「妖怪と協定を結ぶ前は妖怪たちで懲らしめていたけど、今は人間の警察も動きますから…まぁ、おサルの奴らも妖怪の懲らしめにあうより私達特捜部に捕まる方が良いとは思いますけどね。
妖怪が懲らしめると人生が台無しになるし、死んだ後も苦しみますし、下手をすると先祖さまや親族や子孫まで悪影響受けますからね~。
もっとも逮捕されたおバカ達も妖怪との協定で執行猶予なんてつかないし、少年法も適用されないから即懲役ですけどね~!
まぁ、その方が治安が良くなるから良いんじゃないですか~?」
「なるほど~。」
絵美里が蛇手錠を箱の中に入れた。
「この蛇手錠は専用のホルスターに入れてベルトでとめられますから、あとでお渡しします。
さて、午後には霞タンたちも戻ると思いますけど、その間に岡田さんに教えられるだけ教えますよ~!
今、Y事案特捜部は超人手不足だから速成研修になるけどついて来てください。
岡田さんには即戦力になって欲しいですから~!
キャハハハ!」
何がおかしいのかよく判らないが、笑う絵美里の背でまた竜のしっぽが出てきて左右に振れた。
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