第11話 研修4 装備研修は続く
さっきは恐ろしいとだけ感じていたケンとメリーだが、今は自分の忠実な使い魔だと知ると岡田はその恐ろしい牙も逞しく筋肉が盛り上がる首筋も頑丈で俊敏そうな四肢も頼もしく思った。
「さて、岡田さん、ケンとメリ―がどれほどの攻撃力を持っているか見たいですか~?」
岡田はケンとメリ―に脇の下に鼻を突っ込まれたがら答えた。
「ええ!命を預ける相棒ですからね!
ぜひ見てみたいです!」
「うふふ!
そう言うと思っていました~!」
絵美里が立ててある3体の藁人形を指差した。
「あれはただの藁人形じゃないんですよ。
藁の表面のすぐ下に骨に当たるフレーム部分は鋼鉄でそれに防弾チョッキにも使うケブラー繊維や刃物を阻止するスペクトラム繊維を何重にも重ねて固く巻きつけてあるんです。
見た目よりずっとずっと頑丈なんですよ。
ケンとメリ―に襲撃させてみませんか?」
岡田はかくかくと頷いた。
「それじゃ、あの藁人形を指差してから、ケン!メリー!チャージ!と叫んでください。
ケンとメリ―の威力を堪能したら、止め!と言えば良いですよ。」
岡田が絵美里に言われた通りに藁人形を指さして叫んだ。
「ケン!メリー!チャージ!」
岡田が叫んだ瞬間、甘えていたケンとメリ―が牙を剥きだして、目にもとまらぬ速さで3体の藁人形に襲い掛かった。
岡田にはそれはそれは恐ろしい光景に見えた。
ケンとメリ―が藁人形に襲い掛かるとほんの数秒の間に藁人形がずたずたに噛み裂かれた。
腕や胴体や頭などが千切れて飛んだ。
何重にも固く巻かれたケブラー繊維もスペクトラム繊維も難なく噛み裂き、火花を散らして鋼鉄のフレームが嚙み千切られた。
ケンとメリーが千切れて飛んだ藁人形の頭を難なく嚙み潰した。
ケブラー繊維が破れた隙間から見えていた鋼鉄製の頭部のフレームはぐしゃりと潰れていた。
「ケン!メリー!止め!」
岡田が叫ぶとケンとメリ―が噛み潰した頭を前足で押さえつけたまま、そして破壊された藁人合に動く気配がないか注意を払いながらも舌を出して岡田に自慢するような顔を向けた。
「よしよし!
ケン!メリー!よくやった!」
岡田は思わずケンとメリ―を褒めた。
絵美里が笑顔で言った。
「そうそう!誉めてあげるのを忘れないでくださいね~!
岡田さんは良いアルファになれそうですね!
それではケンとメリ―をカプセルに戻してください。
手のひらを向けて戻れ!と言えばケンとメリ―はカプセルに封印されて岡田さんの手に飛び込んできますよ。」
岡田が手のひらを向けてケン!メリー!戻れ!と言うと、ケンとメリ―が光に包まれ小さな光点となり岡田の手のひらに飛び込んで来た。
岡田は手のひらのカプセルを見た。
絵美里がポウチを岡田に差し出して、岡田はその中にケンとメリ―のカプセルを入れた。
「このポウチは岡田さんに支給されたボルボのトランクの箱に入れます。
1週間に1度ケンとメリーの健康チェックをしますから忘れないでください。
それではこの子達の破壊力をチェックしましょう。」
そう言うと絵美里が破壊された藁人後に歩いてゆき、岡田がついて行った。
「うん、こんな物かな?」
絵美里はケンとメリ―が噛み千切った藁人形の腕と噛み潰された頭を手に取って岡田に見せた。
固く何重に巻いたケブラー繊維とスペクトラム繊維は紙のように噛み裂かれ、直径5センチはある鋼鉄の棒材もいとも簡単に食いちぎられていた。
頭部には人間の頭蓋骨のようなフレームが分厚い鋼鉄の板で出来ていたがケンとメリ―の牙が貫通した跡があり、ぐにゃりと噛み潰されている。
岡田がため息をついた。
「鋼鉄とケブラー繊維とスペクトラム繊維がこんなに…凄いですね…ケンとメリ―は、妖怪警察狼は無敵じゃないですか…。」
岡田の言葉に絵美里が寂しげな笑顔を浮かべた。
「岡田さん、確かにこの子達はとても強いですけど、もっと強い妖怪は沢山いるんです。
Y事案特捜部、それに今警視庁と大阪府警、広島県警で編成されているY事案機動隊、近いうちに埼玉県警でも新設されると思うけど、その中で人間と妖怪の捜査員よりもずっとずっと妖怪警察狼の殉職数が高いんです…。」
絵美里の言葉に岡田が絶句した。
ケンとメリ―のような強力な妖怪警察狼でも殺されるような妖怪がいる事に改めて危険な部署に配属された事を思い知った気分だった。
「この子達はあなた達の矛となり、盾になります。
自分の命を顧みずにね。
だから機会がある度に充分に可愛がってあげてください。
さて、まだまだ岡田さんの命を守り妖怪を取り締まる装備がありますよ。
今日の研修は盛りだくさんですからね、覚悟してください。
岡田さんも判ると思うけど、今この部署はとても人手不足なんです。
そして、Y事案はどんどん増えつつあるんです。」
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