第5話 班員紹介で失神

硬化しつつある女の幽霊を貼り付けて失神失禁した岡田の身体は改造ハイエースパトカーの荷室に放り込まれ、片桐班は〒330-8533 さいたま市浦和区高砂3-15-1にある埼玉県警本部に戻った。


岡田は失禁しているのでソファでなく詰め所の床に転がされ、女幽霊が消滅するまで寝かされ、女幽霊が昇天して消滅した後で起こされ、シャワーを浴びて来いと言われた。


詰所の横のシャワールームでシャワーを浴び、出動服に着替えた岡田は支援装備開発部横のランドリールームに汚れた私服を洗濯しに行った。


何台か並んでいる洗濯機乾燥機の前では20代前半と思われる眼鏡をかけた華奢で小柄な体つきの白衣姿の女性がぐるぐる回る洗濯槽をじっと見つめていた。


白衣の女性が岡田を見ると笑顔を浮かべた。


「あら?

 新人さんですねぇ~!

 私、支援装備開発部の竜宮絵美里りゅうぐうえみりと言いますぅ~!

 よろしくですぅ~!」


丸い大きな眼鏡越しに満面の笑みを浮かべて舌ったらずな口調で小さく体を飛び跳び跳ね自己紹介しながら岡田と握手する竜宮絵美里に岡田は戸惑いながらも笑顔を浮かべて握手をした。


「あ、はい、今日から赴任しました岡田啓介と言います。

 どうぞよろしくお願いいたします。」


Y事案特捜部で初めてフレンドリーな、しかもきゃぴきゃぴの可愛い感じの女性に挨拶をされて岡田の心が初めてなごんだ。


が、しかし、竜宮絵美里の背中越しに何か…爬虫類と言うか…竜の尾のようなものが左右に激しく振れているのを見て顔が引きつった。

そしてしっぽがひとしきり犬のように左右に振られるとシュルシュルと竜宮絵美里の背中…お尻に引っ込んで行った。


岡田はあえてしっぽに言及せずに竜宮絵美里に尋ねた。


「何を洗っているんですか?」

「ああ、カプセル狼さん達ですよ~!」


竜宮絵美里が洗濯槽の蓋を開けると狼の子供が何匹か水の中で浮いており、所々血がこびりついていた。


「…ひ…。」

「この前片桐警部がこの子達を使ってね、鬼系の奴らを散々に噛み殺したんだけど中々返り血が落ちなくて、今は洗濯しやすいように子供の姿になって寝てもらっているんですよ~!」


竜宮絵美里は水の中からぐったりした狼の子供の1匹をつまみ上げて顔を近づけた。


「う~ん、まだ血がこびりついているし臭いもね~。」


竜宮絵美里は洗濯機横の洗剤の箱を取り出すとドバドバと洗剤を追加してふたを閉めた。


「あ、お洋服洗濯しても大丈夫ですよ~ちゃんとカプセル狼さん達とかその他色々やばい物を洗濯した後はきちんと消毒していますからね~!

 色々やばいものを洗濯しているから消毒はマメにしていますから~!」


竜宮絵美里の笑顔に押されて岡田は気味悪く思いながら仕方なく開いている洗濯機に自分の私服を入れて洗剤を入れてスイッチを押した。


岡田が詰め所に戻ると熊夜叉が自分の机の横に積み上げた新巻鮭の箱を開けている。


「岡田、お前の机は俺の向かいだ。

 遠慮せずに座れ。」


岡田が座ると熊夜叉はタオルを首に巻き付けて新巻鮭を手に取った。


「今日の勤務はあと5時間あるからな。

 腹が減ったらコンビニに行っても良いぞ。」

「あ、ありがとうございます…でも、今食欲がないので…。」

「そうかそうか、俺は遠慮なく頂くぜ。

 お前はマニュアルでも読んで置け、妖怪メンバーに失礼が無いように色々とエチケットも書いてあるからね。」


熊夜叉がぐふぐふ唸りながら新巻鮭にかぶりついた。

片桐は部屋奥のデスクで報告書をパソコンに打ち込んでいた。

岡田は静かにため息をついてマニュアルを読み始めた。


埼玉県警Y事案特捜部の編成、定員などが書いてある。


埼玉県警には県警本部に6個班と、川越警察署、所沢警察署にそれぞれ4個班の特捜部があり、1個班当たりの編成は人間2人と妖怪2人になっていた。


岡田は顔を上げた。


「あの…熊夜叉警部補…。」

「岡田、熊夜叉さんで良いぞ。」

「あ、はい。

 特捜部は1個班…人間2人と化け…。」


熊夜叉が牙を剝いた。


「あややや、すみません、妖怪が2人となっているんですけど…他の化け…ゴホン妖怪の方はどこなんですか?」

「お前は時々気に触る事をほざきそうになるな…まぁ、気を付けろ。

 もう一人は奴に聞けよ。」


熊夜叉が片桐に顎をしゃくった。


岡田は片桐の元に行った。


「あのう、片桐警部。」

「岡田、片桐班長か片桐さんと呼べば良いさ。

 なんだ?」

「あのう、マニュアルでは1個班で人間2人妖怪2人で定数だと書いてありますが…。


片桐が手を休めずに答えた。


「ああ。お前は赴任してうちの班はやっと定数になったな。」

「あのう、もう一匹…。」


熊夜叉が不機嫌そうな唸り声をあげて新巻鮭をバリバリと噛み砕いた。


「ひぃ!あ、すみません!

 あのう…もう1人の妖怪捜査員はどこにいらっしゃるんですか?」


片桐が手を休めて岡田を見た。


「ああ、そうだな紹介するのを忘れていた…。」


そして片桐は岡田に淫靡とも見れる微笑みを浮かべた。


「岡田、こっちに来い。」


片桐が立ち上がると仮眠室に入って行った。

岡田が入って行くと、片桐はドアを閉めて出動服の上着を脱いでベッドに置いた。

そしてブラウスのボタンをはずし始めた。


時折淫靡な微笑みを岡田に向ける。


「見たいんだろう?」


岡田はこの予想もしない展開に混乱しながらも喉がカラカラになってこくこくと頷いた。

ブラウスを脱いだ片桐は上半身がエロいブラジャー1つになった。

その引き締まりながらも女性らしさを併せ持つ美しい身体と透き通るような白い肌に岡田は興奮してしまった。


「岡田、少し目を閉じろ。」


岡田が目を閉じた。


「よし、目を開けても良いぞ。」


上半身裸になり手で胸を隠した片桐が岡田に近寄って目の前に立った。


「見たいんだろう?」


片桐が淫靡な感じで言う。

岡田がこくこくと頷き、吸い込まれるように片桐の胸に顔を近づけてしまった。


「もう1人は…ここだ。」


片桐がくるりと岡田に背を向けた。


片桐の四郎裸身の背中には…先ほどの女幽霊も裸足で逃げだしそうな醜悪なおぞましい老人の顔が張り付いていた。

岡田の顔面数センチ前で醜悪でおぞましい老人の顔があり、そして目を開きにたぁと笑った。


「こいつは人面爺。

 人面瘡なので人間の身体に寄生しないと生きて行けないのでな。

 私の背中を貸してやっているのだ。

 一応巡査部長だからな。」


片桐の声が聞こえ、人面爺の舌が伸びて岡田の顔をじゅるりと舐めた。


「小僧、よろしくな。

 …お前の顔は…今一不味いな。」

「…きゃぁあああああ~!

 いやぁ!いやぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛~!」


岡田はクラスで一番嫌いな男子の濡れて汚れたブリーフで顔面を往復ビンタをされた女子高生のような悲鳴を上げ、白目を剝いて失神した。


ブラを付けながら片桐がため息をついた。


「やれやれ、慣れるまで少し時間が掛かるな。」

「それにしても頼りない小僧だな…大丈夫なのか?」


人面爺の質問にブラウスに袖を通しながら片桐が答えた。


「適性検査では評価Aー2+だったんだが…。

 まぁ、あの検査もあまりあてにならないからな。」













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