第3話 配属即初出動
〒347-0068埼玉県加須市大門町19-53の加須警察署に連れて行かれた岡田は黒いスーツの2人組に監視されたまま制服を私服に着替え、夥しい書類にサインをさせられ、遺書!を書かされた。
独身で恋人もいない岡田は両親に自分に何かあった時にして欲しい事などを長い時間をかけて書いた。
そして、署長から慌ただしく正式な辞令と新しいY事案特別捜査部巡査長の身分証を渡され、私物が入った段ボール箱を渡され、居並ぶ署の面々から敬礼を受けると又パトカーに載せられて国道122号線を南下し、国道16号線を経て国道17号線を南下、〒330-8533 さいたま市浦和区高砂3-15-1にある埼玉県警本部に向かった。
不安でいっぱいの岡田は両隣の黒いスーツの男達にこれからどうなるのか何度か尋ねたが、配属先で聞け!としか答えなかった。
3月中旬の空は県警本部に着く頃にはすっかりと暗くなっていた。
車が県警本部地下駐車場に入ってゆき、岡田は両脇を黒いスーツの男に挟まれたまま県警本部長がいる部屋まで連れて行かれた。
仏頂面の本部長が岡田の敬礼と報告を受けると面倒くさそうに敬礼を返して顎をしゃくると、岡田はまた黒いスーツの男達に両脇を挟まれてエレベーターに乗り地下五階まで降りて行った。
「このフロアはY事案特捜部の詰め所と支援装備開発部しかないからな。」
黒いスーツの男の片方が言い、もう片方の黒いスーツの男が続けて言った。
「俺達はここ迄しか行きたくない、あとは向こうであいつらに聞け。」
エレベーターのドアが開くと岡田は思い切り背中を押されて廊下につんのめった。
エレベーターのドアは閉まり、岡田は散らばった段ボール箱の中身を拾い集めていると、急に廊下中にサイレンが鳴り響き、廊下の所々にある回転灯が点灯して回り始めた。
パトカーのサイレンに似ているがまるで豚が絞殺されるような、昔々の映画で聞いたような耳障りなサイレン音だった。
その途端に廊下の先のドアが開き、濃い紺色の出動服を着た20代後半か30代になったばかりかのような物凄い美人と…その後ろには…やはり出動服を着た身長2メートル以上(のちに2メートル20センチ体重306キロと判明)の大きな筋骨隆々の…熊の化け物がこちらに向かって速足で歩いて来た。
岡田がヒッ!と小声で悲鳴を上げた。
「お前が岡田啓介巡査長か!」
美人の女性が岡田に向かって歩きながら叫んだ。
岡田は反射的に起立して敬礼をした。
「は、はい!本日赴任しました岡田…啓介…ひぇええええ!」
岡田は美人女性の後ろで凶悪な牙をむき出して歩いて来る熊の化け物を見て硬直し、恐怖に襲われて身を翻して逃げようとした。
「待て!どこへゆく!」
熊の化け物が岡田に追いつくと後ろ襟を掴んでひょいと持ち上げた。
そして岡田を片手で軽々と掴み上げたまま美人女性の後を歩いて行った。
美人女性は前を向いて歩いたまま叫んだ。
「私は埼玉県警Y事案特捜部班長の
こいつは相棒の
これからY事案発生で出動だ!
細かい事は後だ!行くぞ!」
片桐警部が歩みを止めずに廊下の片側にあるもう一つのエレベータに乗りこみ、熊夜叉警部補も岡田を吊り下げたままエレベーターに乗り込んだ。
エレベーターが地下7階まで降りて行く。
何故かエレベーターが動いている間、遥か昔再放送で見たウルトラセブンのウルトラ警備隊出動時の『ワンダバ』が流れている。
「チッ、何が雰囲気大事だからだ…。」
片桐が小声で罵った。
地下7階でドアが開くとそこは駐車場で様々な車が並んでいた。
その中でもごてごてと何やらいろいろな物が付いている紺色のハイエースの運転席に片桐が乗りこみ、熊夜叉が岡田を助手席に放りこむと自分はスライドドアを開けて後席に乗りこむと長々と寝そべった。
片桐が回転灯を付けサイレンを鳴らして車を急発進させた。
そのサイレン音はやはり豚が絞殺されるようなゲーヒーゲーヒーと聞き苦しいものだった。
「ヤッホー!ゴーストバスターズ!」
後席で熊夜叉が牙をむき出して小声で叫んだ。
どうやら笑顔を浮かべているらしい。
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