#6 女子グループにおける友情の信頼度
「ごめん、墨碕のことは何とも思ってないんだ。それに俺、付き合ってる人がいるからさ」
木小田君から返ってきたのは、とてもそっけない言葉だった。
一瞬にして目の前が真っ白になっていく。膝から下ががらがらと崩れていく感覚と、告白したことへの怒りが同時にこみ上げてきた。
気まずい空気だけが2人の間を流れている。何と言えばこの場から逃げることができるのか皆目見当がつかない。
すると、準備していたかのように現れたのは、同じ女子グループに所属している3人だった。
立華美礼(たちばな みれい)、白沢茉由(しろさわ まゆ)、永井怜奈(ながい れな)、3人はひそひそ話をしながら木小田君の方に駆け寄った。
立華が大げさに身振りを加え、演技じみた様子でこちらを一瞥した。そして白沢と永井もそれを合図に話に乗る。
「木小田君、大丈夫?ごめんね、墨碕さん何にも知らないみたいだから勘違いしちゃって……」
「けっこう有名だと思ってたけど、知らなかったんだ」
「学校の帰りとか、いつも一緒だから普通にしてれば気付くと思うけど」
何かもったいぶった感じで話す3人に、嫌な予感がざわめいている。うすら寒さで、吐き気すらしてくるようだ。
「木小田君と立華さんは付き合ってるの。だから、人のものに手を出そうとするのは、ちょっとどうかなって思うの」
白沢はそう言うと軽蔑の眼差しをこちらに見せた。
「立華さん、墨碕さんが木小田君に発情してること知ってショックでずっと悩んでいたんだから。あたし達に相談してきた時は、耳を疑ったもの。墨碕さんってそういう人なんだって」
やはりそうだったのか。3人は元々知っていた上で、わざとワタシに告白させたのだ。何が楽しいのか、そうやって優越感を満たしたかったのだろうか。
「あの、すみませんでした。何も知らなかったので」
ようやく喉の奥からでた言葉は、なんとも情けない敗者の言葉だった。まかりなりにも一緒のグループで過ごしてきた3人から、このような仕打ちを受けることになった自分の甘さに、悔しさが止まらない。
「謝ればいいってものじゃないのよ。どれだけこっちが傷ついたか。目の前から消えて、二度と現れないでほしいわ」
さようですか。立華と木小田君が付き合ってることを知ってるクセに教えず、わざと告白するお膳立てまでして、今度はこの悲劇のヒロインのお芝居にまで付き合わなければならないのか。
たしかに、だったら二度と顔を合わせないほうがマシだ。
「そうね。そうします。二度とその顔見たくないですしね」
「は?」
立華の顔色が急に変わったかと思うと、ヒステリーのように喚き散らしはじめた。が、すぐにその場から退散したワタシにはもう関係のないことだった。
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