#4 鳥葬の輪廻

「よくわからないけど、そんなに悪いことしたっていうなら、ワタシの部屋に帰してもらえる?自殺しようとしなければいいんでしょ。動画の続きでも観るから」

 

 強気な発言をすれば、夜鳥が少しは怯むのではないかと目論んだのだが、意に反して返ってきた言葉は喜々としたものだった。


「面白いこと言いますね、スミサキアカネさん!ぎゃっひゃああはははっはははっはっはははははっはははははははああはははは!経験値とクリアボーナスをそのままに、部屋に戻るってことですか?あぁーーーー、まぁ、できなくはないですね!ただし、もう【鳥葬の輪廻】に入ってしまった以上、抜け出せないですがね!ひゃひゃひゃはあっはっはっはははっははっははははっはっははははっは!」


 夜鳥は両手をブランブランと振りながら嬉しそうに語る。

 ふつふつと怒りが湧いてきた。自殺しようとしたのは悪いのかもしれないが、ここまで笑われていい気がするわけがない。というか今すぐにでも夜鳥をぶん殴りたい。


 ワタシは「クソがぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!キショキショいんだよ、クソヨドリがぁーーーーー!!」という気持ちをぐっと堪えて、冷静になることに努めた。

 

 【鳥葬の輪廻】とやらが、おそらくそのくだらない蘇りゲームのことなのだろう。ふざけてるにもほどがあるが、とにかく元の世界に戻りたい。この小惑星の中のような空間はあまりにも居心地が悪く、不気味で頭がおかしくなりそうだ。


「早くここから帰して。頭が変になりそうなのこの場所」

「そうですかぁ~?ここは【始まりと終わりの交わる球体】といって、僧や著名な方々が利用した、ありがたい場所なんですよ。歴史の教科書を読んでいれば、知ってる名前をちらほら見かけるほどに」


 なるほど。ワタシと同じように、この空間に呼び込まれ【鳥葬の輪廻】なるゲームをした有名人がいるというわけか。

 何度も転生してやり直したのだろうから、歴史に残る偉業を成し遂げたのも頷ける。


「とにかく、経験値やクリアボーナスもそのままでいいから、さっさとワタシの部屋に帰してちょうだい。それでお終い。もう二度と、ここには戻ってこないから」


「う~ん、いいですけど、もう遅いですよ。一度【鳥葬の輪廻】に入れば、真のエンディングに至るまで、アナタは何度だってターニングポイントまで人生を繰り返しますから」


「いいから帰して!」

「はぁいぃぃイ!!」


夜鳥は慌てたように声を上擦らせながら、ワタシを袖に隠した。

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