#3 罪と罰

「まず簡単にルール説明をしますと、アナタの部屋にはいくつものクリアポイントがあり、どのような条件を経過するかによってエンディングが分岐します。クリア後は経験値やクリアボーナスで【能力】や【条件】を購入することができ、それらの【ステータス】を引き継いだ【強くてニューゲーム】として、人生をまた始める【再開ポイント】を選べます」


 人生をまた始める?能力や条件を引き継ぐ?

 頭が混乱しそうだが、なんだかスマホゲームにでもありそうな設定だったので、なんとなく言わんとしてることはわかる。


「【能力】や【条件】はエンディングに向かうクリア条件に影響を与えるので、慎重に選んだほうが賢明ですよ~。人生の再開ポイントは、いわゆるターニングポイントと言われている重要な分岐点なので、こちらも、どこから再開するかによってルート分岐に影響を与えます」


 夜鳥はげひゃげひゃ笑いながら説明を続ける。その笑い声はなんとなく癪に障るのだが、堪えなければ話が進まない。

 ワタシは死んでおらず、人生をクリアした。はい、お終い。とはならない。何故、このまま終わりにならないのだろうか。

「ねぇ、ワタシはあのマンションのベランダでクリアしたんでしょ?だったら、どうしてまた人生をやり直さないといけないの?」


 はぁ、まったく何もわかってないな、このお嬢ちゃんは、という深いため息を夜鳥はつくと、こちらに向かって両手を広げてみせた。すると夜鳥の目の前にはノイズ混じりの映像が映し出される。


 そこにはつい先ほど、マンションのベランダに行くまでの自分が映っていた。

 ぼさぼさの髪、荒れた肌、隈だらけの目、ベランダに向かうガラス戸を開け、ぼんやりとした表情で向かっていく様は、こうしてみると醜い。

「いいですか、アナタはたしかにベランダでエンディングを迎えました。しかし、動機、条件としてひなぼっこをするためではなく、自殺するためにベランダに行ったのです。どのような時代においても、重罪とされるのが自殺」

 

 夜鳥はワタシの映像を流しながら神妙な面持ちで言葉をつなぐ。


「自殺をしようとした人間は、大きな罰がまっている。それこそがこのゲーム。いいですか。アナタはこれから何度も何度も人生をやり直し、真実のエンディングにたどり着くまで決して終わることができません」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る