葉桜

クライングフリーマン

葉桜を見あげて


 今年は早く「葉桜」になった。サクラの花びらがもう無い、ということである。


 数年前までは、私は、数か所でサクラを撮影していた。スマホとデジカメで。


 もう、あまり撮影していない。母が寝たきりになったし、暫くは、そう、救急で行って、1年は目を開けることも出来ない有様だった。


 健診して貰っている眼科医に「まぶたの力が衰えたのでしょうか?」と尋ねたら、「体力の問題だ」と応えられた。


 ここ1年は、目をあけることもあれば、話をすることもある。


 後何年持ちこたえられるか、母も、私も。


 たまに歌を歌ってやるが、どの程度聞こえているか、分からない。


 短い面会時間の大半は、私の「ひとりごと」で終る。


 それでも、私は片道1.5キロの道のりを自転車こいで病院に通う。


 やっと、面会の予約制が解禁された。後、何回通うかな?


 私の卒業した小学校の葉桜を見上げて、そう思う。


 お父ちゃん、天国から見守ってヤ、最後まで。


 ―完―




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

葉桜 クライングフリーマン @dansan01

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る