庶民の少年アルフレッドとして異世界に転生した日本人の和菓子職人が、洋菓子しかない世界で和菓子を作るために奮闘する異世界ファンタジーです。
下町で菓子店を営む両親の息子として転生したアルフレッドですが、残念なことに周囲にあるのは洋菓子の材料ばかり。幼い頃から両親の仕事を手伝いながら、市場に出向いて材料を探し回り、現代のお菓子を再現していく過程が面白いんですよね。
猛勉強の甲斐あって王立の製菓学校に首席入学。王女のシャーロット、お嬢様のカリーナら魅力的な女の子たちと仲良くなったり、貴族のドラ息子から嫌がらせを受けたりと波乱の学園パートが幕を開けるのですが、念願の小豆ともち米をゲットして盛り上がっていく和菓子作りがなにより楽しい。
苺大福、どら焼き、羊羹、最中、三色団子、ついでにカステラ。読者にとっては慣れ親しんだものでも、異世界の人々にとっては未知の味。その不思議な菓子の噂は王宮まで届き、和菓子目当てに国王陛下その人がアルフレッドの前にやってきて……。和菓子ひとつから、貴族や王族、国を巻き込んで広がっていくスケールが痛快な作品です。
(「和風&歴史」4選/文=愛咲優詩)