第31話 学院祭の話し合い①

「静粛に!」


 教師が教室に入ってきて、そう言うと教室中が静まり返った。


 教師はそれを確認すると、書類が挟まった本のようなものを教団の上に広げ話し始めた。

 

「一ヶ月後、毎年恒例の学院祭を開催する」


 それを聞いた生徒たちはざわざわとし始める。

 教師が眉毛をピクっとさせながら強い目線を生徒たちに送ると、また教室が静まり返った。


「よろしいかね。学院祭とは生徒たちの出し物を発表する場である。グループは4人1組。成績の上位から4人ずつグループを組んでもらう。何をするかは自由だ。4人で話し合い、決まった内容を報告するように」


 教師は伝達事項を言い終えると、本を閉じ、教室から退室していった。


「学院祭ですって、初めて聞きましたわ」

「わたくし、昨年はお兄様に招待されたから知っておりますわ」

「どうのようなことをしておりましたの?」


 教師が去ると、教室内は再び騒然とした雰囲気になった。


 こちらの世界の学校でも文化祭のようなことをするのだな。

 しかし、だれがこのようなことを考えたのだろうか……。


 ふと、俺はシャーロットの方を見る。


「アル、わたくしたちは何をしましょうか?」


 すると、シャーロットがやる気満々の笑顔で話しかけてきた。


 お察し、これを考案したのはシャーロットだろう。


「そうですね。和風喫茶なんてどうでしょう?」

「ワフウキッサ?」


 カリーナとマドレーゼがハモりながら首を傾げる。


 まあ、和風なんてわからないだろうね。


「喫茶店ってわかりますか?」


 あまり反応がよくない。


 どうやら、喫茶店というものはこの世界には存在していなく、酒や食事以外をお店で楽しむという習慣がないらしい。

 

 スイーツを楽しみながら会話をするというのは、平民の上流階級か貴族くらい。

 しかも、誰かしらが自宅に招待してお茶会を開くだけだ。


 一般庶民にはそういった文化は根付いていないようだ。

 そもそも、経済的な理由で不可能なのだ。


「キッサテン……。その発想は全く思いつきませんでしたわ。お茶とお菓子を気軽に味わえるお店……。すばらしいと思います!」


 カリーナの商売魂に火をつけてしまったようで、目から炎が見でている気がする。


「アル、学院祭が上手くいったら、これをモデルにして商業展開をしてもよろしいかしら?」

「ええ、構いませんよ。むしろ、何かあったら協力させてください」

「よろしいのですか?」

「もちろん。お茶やお菓子を楽しめる人が増えるのは嬉しいですから」

「はい、ありがとうございます」

「あのう……、二人の世界に入らないでいただきますか?」


 俺とカリーナとの会話が盛り上がっていたからなのか、シャーロットは少し口を尖らせている。

 別にそんなつもりはなかったのだが……。


「シャーロ、ごめんなさい。本題に戻りますね」

「ええ、よろしくお願いいたしますわ」


 そう言うと、シャーロットはすっと表情が元に戻った。

 シャーロットは意外と感情豊かなんだな。

 そういったところが可愛らしい……。

 

「アルフレッド様、キッサテンは何となく理解できましたが、ワフウとはどのようなものでしょう?」


 マドレーゼの質問にカリーナも同調する。


「そうですね。言葉で説明しても想像がつかないので、簡単な絵を描きますね」


 俺は、紙に和菓子屋で使っていた制服や、和室の感じを紙に描いていった。


「このような衣装を着るのですか? 少し華がないような……」

「いや、これじゃなきゃダメということはないです」

「そう、ではこれを元にわたくしたちでデザインしますわ」


 シャーロットがそう言うと、俺を除いた3人であーでもない、こうでもないとデザインについて話し始めた。


 

「では、これで決まりですわね」

「はい」

「シャーロット様、素敵ですわ」


 制服のデザインが決まると、紙に描いたものを俺に見せてくれた。


 彼女たちが考えた制服は和風メイド服のようなものだった。

 あのシンプルなデザインからなぜメイド服に? と思ったが、可愛いからこれはこれでアリだ。

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