第2話:相思相愛から始まった恋。

出会った頃のふたりは幸せだった。

最初は侑斗ゆうと光希みつきと会えるだけで、それでよかったし

楽しかった。


光希は自分に暗い過去があることを侑斗に話しておこうと思った。

黙ったまま侑斗と付き合うことはしたくなかった。

全てを知ってくれて、それでも自分を選んでくれるなら、光希は喜んで

侑斗の彼女として生きていけると思った。


「あのさ・・・私、人に言えない過去があるんだけど・・・そういう女でも

いいの?」


「今が大事なんだから光希の過去になにかあったとしても気にしないよ」

「それに誰にだって人に言いたくないことだってあるだろ?」

「だから、なにも言わなくていいよ・・・逆に聞いちゃうと気になったりする

からね・・・」


「そうなんだ・・・じゃ〜いいんだね・・・」


光希は侑斗となら、うまくやっていけるって思った。

それからも侑斗は光希の過去のことは一度も聞かなかった。


光希は過去に男性経験はあったが、侑斗は今まで一度も女性経験はなかった。

ふたりの関係は光希が歳上と言うことあって、つねに光希がリードする形に

なった。

そんな関係であるがゆえに侑斗は光希に対して母性を感じていた。


お互いが素直でさえいたら、この恋愛はうまく行くはずだった。

なにかが狂い始めたのは、侑斗の大人になりきれていない未熟な性格の表れ

だった。


包容力がないと言うか器が小さいと言うのは侑斗の消極的な性格から来て

いるんだろう。

気が短いと言う欠点もあった。

それでも暴力を振るうようことはなかったが・・・光希にかまってほしくて

光希が興味をひくような嘘をよくついた。


平日、光希と、なかなか会えないってことが侑斗に猜疑心を芽生えさせた。

自分と会ってない時の、光希の動向が気になってしかたがなかった。

自分以外に男がいるんじゃないか?

疑えば、疑うほど妄想はどんどん膨らんでいく。


そうしてふたりの間ですれ違う日々が徐々に増えていった。

心とはうらはらなこと、言わなくてもいいことを口走る侑斗。

そういう侑斗に業を煮やして持て余す光希。


侑斗の愛は、ほんとにまっすぐで純粋だったけど、それが光希には重く

感じるようになっていった。


こんなに好きなのに・・・。

侑斗は光希に対する想いが強すぎて、方向性を失ったままひとり空回り。

そして侑斗は自分の思い通りにならないとキレるようになって光希を束縛

しようとした。


侑斗はまだ17才、社会に揉まれていない世間しらずの子供だった。

そして光希を美化しすぎるあまり自分の理想を彼女の中に描いていた。


有り余る愛、両手で抱えきれない愛・・・理想と現実の狭間で光希は葛藤した。


男経験のある光希と初恋に等しい侑斗との愛にはかなりの温度差があった。

光希はどこか冷めていたが、侑斗は熱い想いに溢れていた。


「こんなに愛してるのに・・・」


彼が愛情を押し付けてくるごとに光希の気持ちは少しづつ侑斗から離れていった。

束縛されたくない、もっと自由でいたい。


それでも光希は侑斗のことを嫌いにはなれなかった。

彼のことは本気で愛していた・・・つもりだった。


でも愛だけじゃ、成り立たないのが男と女。

どんどんすれ違っていく思い、取り戻せない時間。

光希は苦しかった、ささやかでいい、安らぎが欲しかった。

でもそれは、もうきっと叶わないって思った。


侑斗が変わらない限り・・・。


光希の心は傷つき、疲れ切っていた。


だから別れようと決めた・・・。


そして、それは突然だった。

ある日のデートの夜、公園のベンチに座って光希と侑斗は自販機で買った

コーヒーを飲んでいた。


心地いい夜風がほほを撫でていった。

光希は侑斗の横で、ひとつため息をついた。


そして言った。


「ねえ・・・私たち別れよう・・・」


つづく。

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