SCENE-003 似たもの家族
一緒に暮らしている家族だから。
姉でも妹でもない私に対する距離感なんて、こんなもの。
ずっと、そんなふうに思っていたのに。
「い、いつから……?」
初めて使う内鍵をかけて閉じこもった部屋の中。
衝動的に飛び込んだクローゼットの中で頭を抱える私に答えてくれる人はいない。
「血は繋がってないけど、家族だって……そんなふうに思ってたのは、私だけだったってこと……?」
日本育ちの日本人は家族だと思っている異性にマウストゥーマウスのキスなんてしないはずだ。
そんなことをするのは恋人や、家族の中でも特別な相手――配偶者――とだけ。
仁は私と家族になりたいと言った。
今はそうではなくて。あくまで、これからの話。
私とキスをするような家族になりたいと。
「うぅっ……」
信じられないのは、仁が〝狼も〟と言っていたこと。
どちらかを選んでしまえば、どちらかを失ってしまうのだと、そんなふうに思っていた。
私が余計なことをしなければ、狼と仁はずっと付かず離れずの距離を保っていくだろうし。私は家族だから、他のどんな存在よりも違和感なく、ニコイチという言葉がぴったりな二人と一緒にいられるだろうと。
それなのに。
「二人とも私のことが好きで、二人ともそれでいいって思ってるわけ? そんなの……」
にやけそうになる口元を手の平で覆い隠しながら。こんなのはきっと夢に違いないと、だんだん怖くなってくる。
「これが夢なら醒めなきゃいいのに」
こんなにも、私にとって都合がいいばかりの夢を見るのは初めてだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます