第44話 聖女の力


 戦いから一夜明けた次の日、さっそく新たな配下の能力を確認することにした。

 特に聖女だ。聖女といえば勇者と並んで物語の主人公格の職業だ。強いのは間違いない。期待が持てる。


 聖女のステータスはこれだ。


ーーーーー

名前 セイラ

種族 上級アンデッドLv1(人間Lv14)

年齢 19

職業 聖女Lv33 支援術士Lv13

HP 4269/4269

MP 6231/6231

身体能力 23

物理攻撃 23

物理防御 1145+400

魔法攻撃 1797+450

魔法防御 1797+500

ユニークスキル

 味方支援

スキル

 光魔法

 状態把握

 状態異常無効

 祈り

 神官任命

 加護

 聖騎士任命

 支援魔法

 効果延長

 効果上昇

 暗視

 再生

 死体喰い

状態

 ユージの配下

ーーーーー


 めちゃくちゃ強い。これに支援魔法もかかっていたのだからヨゾラさんの攻撃で倒れないわけだ。

 強いのはいいが、人間のレベルが14なのに聖女のレベルが33もある。

 どういうことか聞いてみると、ユニークスキルで職業のレベル上げができるようだ。町全体に回復や支援の魔法をかけたりできるらしい。

 それはぜひ町に魔法をかけてレベル上げをしてもらおうと思ったが、味方勢力じゃないとダメらしい。これまでは国に所属していたので、国の住民は全員味方勢力だったが、俺の配下になったので、町は味方勢力ではないので無理なようだ。しかも俺の配下はアンデッドなので光魔法はかけられない。聖女の光魔法なんてかけたら消滅してしまうかもしれない。聖女のレベル上げはできないな。支援術士の支援魔法はアンデッドにも使えるので支援術士のレベル上げをするしかないようだ。


 それと気になるスキルがある。聖騎士任命と神官任命だ。さっそく確認した。

 聖騎士任命と神官任命は職業を与えることができるスキルで、現在聖女は、神官33名、聖騎士3名を任命できる。当然解除もできる。


 俺が神官や聖騎士になれるということだ。


 とりあえずデメリットがないか確認すると、職業が増えてレベルが上がりにくくなることと、聖女が解除すると経験値は無駄になって再度任命してもレベルが1からになること、聖女が死んだりHPがゼロになった場合も解除されることがデメリットとしてあるらしい。今までも何人か任命していたが、俺にやられて解除されたそうだ。一応あとからでも自力習得の条件を満たせば解除されても消えないらしいが、俺が神官や聖騎士を自力習得するのは無理だろう。


 ・・・微妙にデメリットがあるな。

 意図的な解除はさせなければ良いが、戦闘でHPがゼロになったり浄化されたりすることはありえる。もしそうなったら大量の経験値が無駄になってしまう。この世界では経験値は貴重だ。無駄にはしたくない。

 聖女はステータスが高いからなかなかやられないが、今回のアスカさんのような強敵と戦う場合はやられる可能性がある。もし聖騎士を覚えるなら、強敵相手には聖女を出さないつもりでいないといけないな。強敵相手に突然俺のステータスが激減したりするのは致命的だ。でも聖女は強いから強敵にこそ使いたいというジレンマがある。


 ・・・どうするかな。


 う~ん・・・決めた!俺は聖騎士になりたい!だってかっこいいじゃん!


 聖女は支援や回復が必要な時だけ出して、魔法をかけたらすぐ収納することにしよう。

 この際神官にもなってしまおう。

 死霊術士は上がりにくくなるが、MPばかり上がる死霊術士より、他のステータスも上がる聖騎士や神官を上げた方が良い。MPは余っている。


 祈りと加護のスキルも確認した。加護は非常に有用だった。

 祈りは、祈っている間、自分と周囲の味方のMPをゆっくり回復するスキルだ。

 加護は、聖女の最大MPが100減る代わりに常時バフがかかるものだ。闇耐性と最大HPと物理防御と魔法防御にバフがかかる。上昇量は聖女のステータスの10分の1だ。そして、一番良い点が経験値を吸わないことだ。上昇値は支援魔法などより低いが、魔法は戦闘参加扱いになってしまうのでレベル上げでは使えない。その点加護は戦闘参加扱いにならないので、他人のレベル上げでも使える超優良スキルだ。低レベル者を安全にレベル上げできるようになるだろう。高レベル者にとっても何のデメリットも無いので十分強力だ。常時俺にかけていても何も問題ない。


 さすが聖女だ。滅茶苦茶良いスキルを持っている。

 ヨゾラさんとユリアさんにも報告しよう。聖騎士や神官もなりたいなら、なってもらおう。


 さっそく聞いてみよう!


 ヨゾラさんとユリアさんはリビングで寛ぎモードだ。

「ヨゾラさん!ユリアさん!聖騎士と神官になれますよ!聖女の加護もかけましょう!」

「な、何言っているのよ。いきなり。」

「聖騎士と神官ですか?」

「はい!聖女が聖騎士任命と神官任命と、あと加護というスキルが使えるんです!」


 俺は二人に説明した。


「なるほどね。聖騎士は強そうだけどどんなことができるの?」

「配下にした聖騎士に説明させましょう。」


 配下にした聖騎士ライアスを呼んで聖騎士について説明させた。

 聖騎士は、騎士と神官を両方を30レベルまで上げると習得できる職業で、自力習得が可能な職業の中では最上級の職業の一つとされている。

 しかもレベルを先に上げてしまうと、騎士と神官のレベルを30まで上げることがほぼ不可能になるため、レベルを上げずに騎士と神官の両方を習得しなければならないので、幼い頃から人生をかけて計画的に習得を目指す必要がある。なので、騎士と神官の両方の指導を受けられる家柄に生まれる必要があり、しかも騎士や神官は運動神経、知力、信仰心が足りないと修行しても習得できない。そしてどちらも普通は習得に10年くらいの修行が必要になる。さらに命がけのレベル上げの修行の旅をしなければならないため、聖騎士になることができる者はほとんどいない。


 俺達が自力習得するのは不可能だな。特に信仰心とか無理だろう。いや神の実在は信じているからいけるのか? 神の部下に会ったし・・・ 信仰心って何だろう? まあどちらにせよ今から20年修行したあとレベルを30まで上げるのは無理だ。


 聖騎士は全ての能力が向上し、特にHPと物理攻撃と物理防御の上昇が大きい。特徴としては、自分を対象としたスキルや魔法なら戦いながら使うことができ攻撃を受けてもキャンセルされない能力がある。光魔法も使えるので自分に回復などをかけながら戦える。めちゃつよだ。自分を中心とした浄化などもできる。アンデッドの天敵みたいな存在だ。 ・・・こいつはアンデッドになったので回復も浄化も自分に使えないが。

 まあ俺達3人はアンデッドではないので、使うことができる。非常に強力な能力だ。


 聖騎士ライアスのレベルは、人間Lv30、聖騎士Lv11、騎士Lv30、神官Lv30、剣士Lv30、戦士Lv21となっていて、高レベルの中では人間レベルが低いが、ステータスは一番高い。魔法装備も色々あるので、ノワリンとも戦えそうだ。ただアンデッドになって光魔法が自分に使えなくなったので、弱体化してしまった感はある。アンデッド向きの職業ではないのだろう。まあステータスが色々上がるからアンデッドに覚えさせても損はしないが。

 ライアスは、聖騎士を覚えたあとは魔物でのレベル上げは止めて、毎日聖騎士のスキルを使って聖騎士のレベルを上げたらしい。MPが多ければ低レベルのうちはレベルが上がるのが早いので、11レベルまで5年くらいで上げれたそうだ。


 神官は、身体能力と物理攻撃以外のステータスがまんべんなく上がる職業だ。上昇量は普通だが誰に覚えさせても普通に強い感じのステータスだ。


「わかったわ!聖騎士と神官の両方になるわ!」 ヨゾラさんが宣言した。

「私も両方になりますね。」 ユリアさんもだ。

「わかりました!では3人とも聖騎士と神官の両方になりましょう!」


 ヨゾラさんは職業の数がかなり増えてしまうが気にしないらしい。相変わらず男前だ。

 まあ俺達はレベル上げがしやすいので、なんだかんだ職業が多い方が強くなれるだろう。


 さっそく聖騎士任命と神官任命と加護をかけてもらおう。

 光り輝くらしいので、念のため外に出る。今日も天気が良く、森には木漏れ日の光の筋があちこちに見え、幻想的で美しい。


 俺は聖女の前に跪いた。

 聖女が俺の額に手を当てる。

 聖女が何かを呟くと光の粒が舞い散り、地面に魔法陣が描かれる。

 俺の体もやさしく光り、新たな力が俺の中に宿るのを感じた。



 こうして俺は聖女の加護を受けた聖騎士となった。



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