第43話 リザルトと祝勝会


 何とか無事に聖女と太陽の炎に勝利した俺達は、まず被害状況の確認を行った。


 やられた配下は、人間兵が半分くらい、Bランク魔物も半分くらい、オークが全滅だ。

 かなりやられてしまった。浄化対策は成功したが、敵の攻撃や防御が想像を超えて強かったためだ。魔法でかなり強化されていたと思われる。


 失った配下は以下のとおりだ。


浄化された配下

 騎士 1

 暗殺者 3

 人間兵 21

 Bランク魔物 49

 オーク 63

 亀 6

 ゾンビ 9

 計 152


魔石を砕かれた配下

 ギルバーン 1

 人間兵 3

 Bランク魔物 11

 オーク 12

 計 27


合計 179



 かなりの被害だ。他にも30体くらいやられたがそいつらは死体喰いや配下回復で復活できた。


 浄化対策が成功したのになぜこんなに浄化されてしまったかというと、敵の武器で魔石付近を攻撃されると魔石が浄化されてしまったからだ。光魔法が武器にかかっていたのだろう。アンデッド討伐のエキスパートだけあってしっかりと魔石を狙ってトドメを刺してきたようだ。

 浄化の魔法と違い、攻撃された付近しか肉体は消滅していないので、死体は残っているが、配下一覧から消えていて最大MPも戻ってきているので復活は不可能だろう。


 魔石を砕かれたギルバーンなどは、配下一覧には残っているが、今のところ復活方法が分からない。MPには余裕があるので念のため解放せずにそのままにしておこうと思う。


 魔物はともかく人間配下がやられてしまったのは痛い。特に騎士は痛い。あと俺を守っていた人間兵10人は、海賊剣士やベテラン兵士など強い人間兵だったが、たいして活躍することも無くまとめて浄化されてしまった。自分の安全を守るために固めたのが裏目に出た。海賊剣士は青髪より少し強いくらいの実力があって、三刀流をさせようかと思っていたのに。まあ仕方ない。ノワリンやAランク冒険者など本当の上位陣が浄化されなかっただけ良かったと思おう。



 次はお待ちかねの新たな配下だ。何も考えず全員配下にしてしまおう。


 取り出し!配下作成!取り出し!配下作成!・・・(省略)


 死体の下に暗く光る魔法陣が現れ、死体を黒い光が包む。


 新たな配下達が次々と起き上がった。



 新たな配下達の内訳はこうだ。


高レベル 5(聖女、聖騎士、女騎士、獅子獣人剣士、女火魔法使い)

騎士 6

神官 19

前衛 21

斥候 7

キメラゾンビ 61


計 119


 うむ。人間配下に関しては失った分を差し引いてもかなり戦力増強になったように思う。 

 特に高レベルの5人は、凄そうな魔法装備を色々身に着けているし、かなり強そうだ。


 キメラゾンビというのは、戦場に散乱していた敵味方の死体を適当に集めて配下作成したらできた。魔石を浄化された配下の死体などは、バラバラだったり五体満足な死体の方が少ない状況で、使い道は無いし死体を放置したら臭くなるので、回収して配下作成をかけた。綺麗な死体を選別してもどうせゾンビになるので、適当に積まれた状態で配下作成をかけたらキメラゾンビになった。強さは大きい分普通のゾンビより強いがオーク程度だ。しかし見た目はヤバい。色々な魔物や人間をつなぎ合わせた感じで禍々しいしキモい。こんなの見せたら絶対悪しき存在扱いされるだろう。気軽には使えない。使うのは緊急時だけだな。


 戦場には武器などの装備品や回復アイテムなども落ちていたのでそれも拾って戦利品にした。


 結局、被害状況の把握と配下作成だけで日が暮れてしまった。


 新たな配下の能力確認は明日にして、景気づけに祝勝会をしよう。配下が言うには、こういう時はパーっとやるのが良いらしい。


 配下に宴会の準備をさせて部屋で休んでいた二人を食堂に呼んだ。

「ヨゾラさん!ユリアさん!今日はお疲れさまでした!祝勝会をしますよ!」

「確かに戦いに勝ったら祝勝会は必要ね!」 ヨゾラさんはノリノリだ。

「大規模な戦いの後は必ずやるって聞きますね。」 ユリアさんも乗り気なようだ。

 どうやらこの世界の常識らしい。

「では僭越ながらわたくし目が、乾杯の挨拶をさせていただきたいと思います。本日は皆様のご協力により勝利という大変喜ばしい・・・」

「カンパーイ!!!」 ヨゾラさんが俺の挨拶の途中で叫んだ。ちょ、俺の挨拶は?

「うふふ。かんぱーい。」 ユリアさんもかよ。

「さあ食べるわよ~!」

「そんな~。俺の挨拶ダメでした?」 職場では評判良かったんだが。

「え? 良い前フリだったわよ?」 いや前フリじゃないが。まあいいや。


 俺達はワイワイ言いながら飲み食いした。


 お腹も落ち着いたので、今日のことも二人に聞いてみよう。

「今回の敵は強かったですが、お気に入りの配下もやられなかったし、結果だけ見れば完全勝利でしたね。お二人はどうでした?」 まあ実際には危なかった気もするが。

「いや結構危なかったじゃない!事前予想より遥かに強かったわよ? 凄い砲撃みたいなのもあったし。」 やっぱりヨゾラさんも危なかったと感じたようだ。

「そうですね。雷魔法でもあまり敵が倒せませんでした。敵の一般兵も予想より凄く強かったように思います。」 ユリアさんも苦戦していたようだ。

「一般兵が強かったのは、やっぱり聖女の力なんじゃないの? 聖女も全然倒れなかったし。」

「そうですね。配下にしたので聞いてみましょうか。」


 さっそく聖女を呼んで聞いてみた。

 聖女は、美人だが聖女と聞いてイメージするような清純派な感じではなく、気品と色気がある貴族令嬢が似合いそうなタイプだ。適正とは何だったのか。名前は聖羅らしい。名前が聖女っぽいから聖女になったのではないだろうか。神の部下適当疑惑がさらに深まったな。


 聖女に聞くと、やはり一般兵が強かったのは、聖女の力だったようだ。ユニークスキルで広範囲の味方に一気に強力な回復や支援ができるらしい。


 うちに攻めてきた理由も聞いてみた。まあ宗教上の理由だろうけど。

 すると攻めてきた理由は宗教だったが、聖女まで出てきた理由は、メルベル領で会ったアスカさんだった。俺のことを滅茶苦茶恨んでいるらしい。色々な魔法装備を錬金術で作ることと引き換えに聖女を出撃させたそうだ。しかも砲撃してきたのも、ノワリンと互角に戦っていたのもアスカさんらしい。

 意味が分からない。生産職じゃないのかよ。


 聖女からアスカさんのことを詳しく聞いた。

 ヤバすぎる。今後さらに強くなるだろう。俺のことを今後も狙ってくるかもしれない。しかし対策は思いつかない。


「あんた危険な相手に狙われているようね。これはこっちももっと強くならないといけないわ。」

「そうですね。戦力も増えたので森の奥に行くことも検討しましょう。」

「がんばりましょうね。」


 とりあえずこっちももっと強くならないと危険だ。

 しかし魔物を倒さなくてもレベル上げできるユニークスキルもあるんだな。

 MPを消費する通常スキルもほんの少しだけ経験値が入るしな。もしかしたらユニークスキルは経験値が多いのかもしれない。


「ヨゾラさんのユニークスキルもMPを消費するから経験値が入るはずですよね? 普通より経験値が多かったりしないんですか?」

「それは気にしてなかったわね。」

「毎日寝る前とかにユニークスキルをたくさん使って、レベルが上がるか試してもらってもいいですか?」

「そうね。やってみるわ。」

「しかしヨゾラさんは大活躍でしたね。さすがに今回はヨゾラさんがいなかったら負けていました。ヨゾラさんは俺にとって勝利の女神ですよ。」 ヨゾラさんがいなくなったら多分俺は死ぬ。見捨てられないように褒めておこう。

「フフン。そうでしょう。仕方がないから今後も守ってあげても良いわよ。」

「ありがとうございます!」 よっしゃ!言質をとったぞ!ずっと俺を守ってほしい! ・・・なんか俺がヒロインみたいだな。

「喜びすぎよ!もう!」 ヨゾラさんが顔を赤らめている。何だかんだ嬉しいのだろう。

「うふふ。」 それを見てユリアさんも嬉しそうだ。

「もちろんユリアさんも頼りにしていますよ。雷魔法は俺と相性が良いですからね!」

 ユリアさんにも見捨てられないようにしないとな。多分どちらかに嫌われたら両方去って行ってしまう気がする。

「うふふ。私もがんばりますね。」 ユリアさんはつのっちを撫でながら言った。

 ・・・つのっちがいればユリアさんは大丈夫かもしれない。

「しかしヨゾラさんはよく何回も使えば聖女に死体収納が効くってわかりましたね?」

 あの緊迫した状況で、よく思いついたな。

「実は私のユニークスキルも試しに死体収納を防いだ時は凄くMPを消費したのよ。だから私と同じような力で防いでいるなら、連打すれば消費が大きくていずれ防げなくなるんじゃないかと思ったのよね。」

「なるほど。そうだったんですね。」 俺の死体収納は消費無しで連打できるからな。スキル経験値は得られないが、それを補ってあまりあるメリットだな。今後は効かない相手にも連打してみよう。


 まあ面倒な話はこれくらいにして、とりあえず今日のところは、祝勝会を楽しもう。



 家の外では配下がまだ片付けをしている。


 魔の森の夜は騒がしく更けていった。




 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る