第40話 迎撃作戦


 俺達も一緒に全力戦闘するという方針が決まったので具体的な作戦を決める。

 俺の現在の戦闘員の配下はこれだ。


黒豹 1(ノワリン)

忍者 1(カゲイチ)

Aランク冒険者 7(黒猫獣人、人妻エルフ、エルフ神官、ドワーフ斧士、犬獣人剣士、盾士、槍士)

騎士 9(騎士団長、副団長、レオス)

鉄仮面 3(アックス、青髪、ジミー)

暗殺者 11

人間兵 62(兵士、盗賊、海賊)

諜報員 1

Bランク魔物 156(クランドウルフ(土狼)、ウォーターモンキー(水猿)、ウインドスネーク(風蛇))

オーク 96

亀 12

ゾンビ 9

詐欺師 1(ギルバーン)

計 369


 非戦闘員は89体いる。侯爵達や貸し出していた無職などだ。無職は武器をそろえる時間もないので、今回は使わない。万一負けて逃げる時に囮として使うかもしれないくらいだ。


 基本はAランク冒険者と戦った時の戦術を改良して使うとして、重要なのは浄化対策だ。

 敵の主力戦術は、大勢の神官が後方から浄化の魔法を多数撃ち込んでくることだと思われる。勝つためにはこの対策をする必要がある。

 神官の浄化の魔法は、光の塊を放物線上に撃ちだして着弾地点を中心に一定範囲を浄化するというものだ。弾速は普通にボールを投げたくらいなので、高レベル配下や魔の森のBランク魔物の配下は躱すことが可能だろう。ただ、低レベルの配下やオークはおそらく躱せない。

 浄化対策1として、密集していると躱せないので、密集せずに十分スペースを取る。ソーシャルディスタンスだ。

 浄化対策2として、浄化の魔法は物や魔法で早めに空中で撃ち落とせば、空中で発動して届かない。普通の魔法や弓では当てるのは難しいが、土狼が使えるサンドショットという砂をショットガンのように撃ち出す魔法を使えば、ある程度迎撃可能だ。サンドショットは、ダメージは少ないが目、口、鼻に砂が入る嫌がらせ魔法で、戦闘中だと結構効果がある。土狼は浄化の迎撃を優先させる。

 浄化対策3として、水猿が木の上から神官に向かって水魔法を撃って、魔法を妨害する。前回は、水猿には近接戦闘メインで戦わせていたし、騎士達も魔物の指揮をとったことは無かったので、木の上を利用するのを忘れていたが、水猿を使えば森の中なら頭上をとれる。実質制空権を取ったようなものだ。ただ水魔法の攻撃は弱いので嫌がらせにしかならない。水猿が使える攻撃魔法は、水球を勢いよく当てて転倒させる魔法と、水を相手にまとわりつかせて溺れさせる魔法だ。水球はダメージが少ないし、溺れさせる魔法は一見強そうだが、頭を振ったり手でバシャバシャしたりすれば落ちるので、嫌がらせにしかならない。それでも水球は発動が早いので浄化魔法の溜め時間中に当てればキャンセルできるし、溺れさせる魔法は当てればしばらく浄化を使えないだろう。


 ちなみに水魔法にウォーターカッターのような魔法は無い。そもそもウォーターカッターは遠距離攻撃できるようなものではなく、至近距離の物をゆっくり切るための装置だ。電動のこぎりの類似品だ。硬い物を切っても刃こぼれしないのがメリットなだけだ。遠距離に撃っても空気抵抗で広がって放水みたいになるだけだ。魔法の謎能力で広がらないようにするとしても、切れるくらいの勢いで物質を飛ばせるなら水ではなく他の物を飛ばした方が遥かに強い。石とかな。ウォーターカッターが切れるのも水ではなく水に混ぜた研磨剤の力だしな。

 ウインドカッターも同じような理由で存在しない。かまいたちのような自然現象は、強風で吹き飛ばされた草や葉や木のとげで切れているだけだ。真空の刃なんてない。

 無属性にマジックカッターの魔法はあるらしい。空気を刃にするより魔力を刃にする方が簡単なのだろう。


 とりあえず浄化対策は、ソーシャルディスタンスとサンドショットと木の上から水魔法の3つだ。一番効果が高いのは恐らく水魔法だな。これだけやれば浄化の被害はだいぶ減らせるだろう。オークなら多少やられてもいいしな。


 そして基本戦術として、軍をいくつかに分けて色々な方向から襲い掛かる。


 正面隊が138体で、内訳はギルバーン、騎士3、土狼35、風蛇45、オーク50、亀4だ。

 右翼隊が88で、騎士団長、騎士2、土狼10、人間兵52、オーク20、亀3だ。

 左翼隊が59で、俺達3人、副団長、騎士2、Aランク冒険者7、鉄仮面3、土狼10、人間兵10、オーク20、亀3だ。

 木の上隊にカゲイチと水猿51。

 自由に不意打ち隊に、ノワリンと暗殺者11。


 残りの魔物5オーク6亀3ゾンビ9は収納しておいて、臨機応変に敵の中心に出したりする。

 騎士は指揮官として各部隊を指揮する。オークは亀投げと使い捨ての前衛役だ。


 亀投げはオーク1体では難しかったが、2体で両サイドから手足の穴に手をかけて亀を持って軽く助走つけて投げれば10メートル以上は飛ばせた。後衛までは届かないかもしれないが、前衛が混乱するだけでも効果があるだろう。


 ノワリンは前回護衛にしていたが、ノワリンはスピードタイプだし隠れて背後から襲い掛かるのが得意なので、護衛よりも不意打ちさせた方が活躍できるため不意打ち隊にした。それに、その方が浄化をくらう確率も低いだろう。俺の護衛をしていたら浄化を避けにくいしな。


 カゲイチは本来不意打ち隊にしたかったが、木の上で猿を指揮できる人間配下がカゲイチしかいなかったので、カゲイチを木の上の指揮官にした。指揮がいらなそうな状況なら攻撃に参加してもらう。

 それとジミーの粉をカゲイチに渡しておくことにした。水猿も使えれば良かったが、少し知能と器用さが足りないようだ。まあ量もそんなに用意できないのでしょうがない。適当に神官の頭上に撒いてもらおう。


 俺達のいる左翼の人数が少なめなのは、正面と右翼が戦闘中に突然収納から出して、奇襲するためだ。

 正面隊と右翼隊と木の上隊とギルバーンに気を取られている隙に俺達左翼隊が敵を収納しながら敵の指揮官や神官などがいる中心部に突入する作戦だ。


 敵が複数部隊に分かれて襲ってきた場合は、非戦闘員と大事な物を全部収納しておけば、拠点を防衛する必要はないので、全員出撃して各個撃破する予定だ。分かれてくれた方が楽らしい。でも多分分けてはこないそうだ。



 作戦ができたので、町に偵察を出しつつ、作戦の周知と浄化の迎撃の練習をさせながら、敵を待った。



 そして数日後の良く晴れた日、とうとう奴らがやってきた。


 俺達はアンデッド軍団で迎えうつ。




 輝く太陽とは裏腹に、俺の心は重苦しい緊張感に包まれていた。 



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