第30話 レベル上げとキャンピングオーク馬車
次の日二人と合流し、レベル上げのため、海岸にカニと亀を倒しに向かった。
例のごとくなかなか見つからなかったが、まずカニが見つかったので、ヨゾラさんがソロ討伐チャレンジをすることになった。
ヨゾラさんは闇魔法のブラインドと物理防御ダウンをかけたあと剣で切りかかった。
やみくもに振り回されるハサミを躱しながら剣で攻撃している。
俺は普通の戦闘をあまりしないから気づかなかったが、普通の攻撃だと敵のHPが見えないし傷もつかないから効いているのか良く分からないな。貫通攻撃とかで傷がつけば分かりやすいんだが、HPが減っているかどうやって判断するのだろうか。
ユリアさんに聞いてみると、攻撃を当てた感触と敵の反応で判断するそうだ。経験則で何となく分かるらしい。ヨゾラさんはダメージは当てているが時間かかりそうらしい。
ヨゾラさんは、たまに攻撃を受けているが、当たった部分が少し光るだけで微動だにしていない。攻撃ははじかれている。完全結界は攻撃で吹き飛んだりもしないらしい。もしかして大猪の体当たりをくらっても微動だにしないのだろうか? 電柱にぶつかった軽自動車みたいになるのだろうか?
ユリアさんにきくと、やはり微動だにせず大猪側が大ダメージを受けるそうだ。大猪は頑丈なのでつぶれたりはしないらしい。ただ、剣が折れたり荷物がつぶれたりすることはあるらしい。防具は傷つかないそうだ。体から一定距離の物は守られるのだろう。強力な炎の魔法を受けて裸になったりはしないということか。少し残念だ。・・・別に期待していたわけじゃないぞ。。
考え事をしながら見ていると、ヨゾラさんがハサミで挟まれて持ち上げられてしまった!
吹き飛ばないけど掴んで持ち上げることはできるのかよ! 脱出は無理っぽいぞ!
俺が焦っているとヨゾラさんが声を上げた。
「ユリア!お願い!ユージは来なくていいわ!」 どうやら俺はいらないらしい。持ち上げられても割と余裕そうだ。
見ていると、ユリアさんが杖から雷魔法を放つとカニは痺れたのかヨゾラさんは脱出できた。
その後は二人で攻撃して危なげなく倒していた。
雷魔法は、杖から雷を放つ中威力の発動が早くて使いやすい魔法と、小さい雷雲を作って上に飛ばして上から落雷を落とす大威力の魔法が主力のようだ。1発当てればしばらく痺れて動けなくなり、そのまま当て続ければずっと動けないのでたいがいの魔物は倒せるらしい。敵が1体なら雷魔法が当たれば普通にソロ討伐ができるそうだ。やはり強いな。
ソロ討伐チャレンジする時は、ヨゾラさんは普通に戦ってみて闇魔法と剣で倒せればソロ討伐、火力不足等で無理そうなら諦めて二人で討伐。
ユリアさんがソロ討伐する時は、ドーム結界内から雷魔法を撃って先に当てればソロ討伐、結界に敵の攻撃が当たると戦闘参加扱いになるので二人討伐になるそうだ。
結界内から攻撃しても、敵の攻撃が結界に当たらなければソロ扱いなのか。それはかなりレベル上げがしやすいな。ソロ討伐チャレンジが安全にできるのは非常に助かる。
しばらく休憩してから再開し、亀も見つけたが、カニよりかなり硬いことを伝えると、最初から二人で討伐することにしたようだ。
亀に全力攻撃し、時間をかけて何とか倒すことができたが、MPが尽きたようだ。
しかし亀の情報を調べた配下によると、亀を二人で討伐できるのは凄いことらしい。闇魔法のデバフと雷魔法の高威力の組み合わせはかなり強いようだ。どちらも使える人は少ないらしい。
その後、もう1体亀を見つけたので、俺がサクっと収納したら、ユリアさんは苦笑い、ヨゾラさんはインチキだと言わんばかりの目で見てきた。いやヨゾラさんも十分インチキだからね!
ちなみに二人とも2体倒して1レベル上がり、ヨゾラさんはレベル16、ユリアさんはレベル19になったようだ。
ユリアさんは若いのに結構レベル高いと思ってきいたら、ヨゾラさんより年上らしい。どうやら大人の女性だったようだ。半分子供とか思ってすみませんでした。
ヨゾラさんは就職したばかりの22歳だったそうだ。ユリアさんの年齢は、怖くてきけなかったが、魔族は人間より寿命が長いので、魔族としては年相応の見た目だそうだ。
俺は38歳だったと言ったら驚かれた。ヨゾラさんにおっさんじゃんと言われた。いやおっさんだけれども。
ヨゾラさんとユリアさんが倒した魔物は、俺の配下が代わりに売ってくることになった。二人はあまり荷物を持てないし、俺が持っていくとユニークスキルがバレるからだ。二人の冒険者ランクは上がらないが、特にランクを上げたいわけではないそうなので、問題なかった。
もちろんカニは食べた。カニ鍋と焼きガニだ。みんな大満足だ。
その後、俺達はヨゾラさんの方針のもと週休二日でレベル上げを行うことにした。
強制的に日本基準で働くことになり、だらけた生活ができなくなってしまったが、俺は強制されないとやる気が出ないタイプなので、適度に強制されるくらいで丁度良い。でも適度よりちょっと多いな。週休4日くらいがいいな・・・
レベル上げも順調に進み、日帰り圏内ではレベル上げができなくなったため、野営をして魔の森の奥に入ることになった。
俺は配下がたくさんいるから野営は余裕だが、二人は今までどうやって野営していたのか気になったので、聞いてみた。
なんとドーム結界で野営していたらしい。MPは大丈夫なのかと思ったが、ドーム結界は張るときと攻撃を受けた時にMPを消費するが、維持にはMPが必要ないらしい。ドーム結界に攻撃を受けるとMPが減った感覚で目を覚ますので、見張り無しで二人とも結界内で寝ていたそうだ。しかもドーム結界は設定すれば光や音を通さないこともできるので、テントもいらないらしい。空気は通すので、中でたき火しても問題ない。
それは野営が楽で良いな、便利すぎる。 ・・・いや良く考えたら俺の方が楽で便利だな。
ちなみに光を遮断するとドームは白くなる。黒ではない。光を吸収ではなく適当にはじく感じなのだろう。攻撃も硬い物に当たって跳ね返っている感じだしな。
俺流の野営を見せると二人にはインチキ呼ばわりされたが、つのっち達を出したらユリアさんは即落ち2コマだった。ヨゾラさんはヤレヤレみたいな感じだ。
いずれ俺無しでは野営できない体にしてやるからな!
変なことを誓っておもてなししたが、残念ながら俺だけドーム外で寝させられた。まあ当然のようなそうでもないような、微妙な気持ちになった。
いや俺だけ危険な外で寝させられたわけだからね。仲間としてどうなの?ってなるよね。配下がいるから全然危険じゃない気もするけどね。べ、別に一緒に寝たいわけじゃないからね。 ・・・いやまあいい。
しかし久しぶりに野営をしたことで、思い出したことがある。
二人にも関係するので、翌朝さっそく二人に相談した。
「二人ともちょっと相談があるので、聞いてください。」
「なによ改まって、また変な事言うんじゃないでしょうね。」 俺は変なことなど言っていないぞ! まあいい話を進めよう。
「実は、キャンピングオーク馬車を作ろうと思うので、どんな物が良いか相談したいんです。」
「はあ? 何言ってんの?」 二人とも理解できていないようだ。
「いや、俺がオークに馬車を引かせて荷物を収納しているのは知ってますよね? ベッドを積んで寝泊りできる馬車を作ってオークに引かせて収納すれば、野営でもベッドで寝れるんですよ!ぜひ作るべきじゃないですか?」
そうなのだ。キャンピングカーを作ろうと思っていたのを思い出したのだ。まあ好きに作れば良いわけだが、今は仲間がいる。一人だけキャンピングカーで寝てたら顰蹙ものだし、勝手に作ったら女子は後がうるさいからな。
「な、なるほど? キャンピングカーみたいな馬車を作るってことね。」
「キャンピングカー?」
「家みたいに住める馬車ってことよ。」
「そ、そんなのがあるんですね。」
「そうなんです。それで三人で1台だと狭いし、色々問題があると思うので、一人一台で考えているんですが、ベッド以外何があると良いですかね?」
「・・・分かったわ。ちょっと考えてみるわ。しかしあんたは変なことばっかり考えるわね。」
失礼な。俺はいつでも安全と快適を求めているだけだ。
「いえいえ二人のためを思って俺はですね。冒険者流の野営ばかりでは美容と健康にも良くないですし。」 そう二人のためでもあるのだよ。
「わ、わかったわよ!感謝してるわよ!クドクド言わないでよ!」 まったく素直に感謝もできないとはヨゾラさんには困ったものだ。
「うふふ」 いつもの適当なやりとりにユリアさんも笑っているじゃないか。
「あ、まだ手持ちの資金を確認してないので、足りなかったら二人も出してもらえませんか?」 昨晩思い出したからね。
「もう!しまらないわね!そこはかっこよく奢るところでしょ!」 何を言う。俺は彼氏ではないぞ。対等な仲間だ。
「うふふ。ユージさんのおかげでお金はたくさん稼げてるんだからいいじゃない。」 ほらみろユリアさんは分かっている。実際死体収納があるだけで収入が全然違うしな。
「分かってるわよ!出すわよ!でも値段によるからね!」
「それはもちろんです。大きさとか値段とか一緒に見に行きましょう。」
そして町の馬車工房に見に行ったが、1頭立ての馬車はベッドがギリギリ乗るかどうかのサイズしか無かった。キャンピングカーサイズは六頭立てとか八頭立ての馬車になるようだ。そんなのオークが引けるか分からない。しかも滅茶苦茶高い。1体で引けないと収納できないし試すこともできないので買うのは無理だ。
とりあえず馬車に布団を敷いてベッドにするだけでも良いという話になり、ベッドサイズの馬車を3台注文した。
しかし、二人をガッカリさせてしまったな。確認してから相談すればよかった。とりあえず謝っとくか・・・
「ガッカリさせてしまって、すみません。」
正直俺はこの手の失敗は良くある。この辺もモテない理由なのかもしれない。
「もう。野営でベッドで寝れるだけで十分良いアイデアよ。落ち込むようなことじゃないわ。」 俺がしょんぼり言うと、ヨゾラさんがやさしくフォローしてくれた。ヨゾラさんは俺が自信満々の時は文句ばかり言うが、こういう時はやさしい。しょんぼり男が好きなのか? ・・・失礼な思考はやめよう。
「そうですよ。十分うれしいです。」 ユリアさんはいつもやさしい。やさいせいかつだ。
「とりあえず二人の馬車代は俺が半分出しますね。」 出しすぎも良くないと聞いたことがあるので半額にしたが、こういう時は全額出した方がいいのだろうか。分からん。
「いいわよ。そんなの」「そうですよ。気にしないでください。」
「いえ、俺がいないと使えないし、常時俺が収納しておく物になるので、それにいずれキャンピングオーク馬車ができたら使わなくなって結局俺の馬車みたいになりますから。」
「えぇ? まだ諦めてないの? 無理しなくて良いわよ。」
「いえ俺がやりたいんです。ちょっと店員に聞いてきます。」 今までの俺ならここで諦めていたが今の俺は違う。死線を越えて俺も成長しているのだ。 ・・・死線を越えた先にしてはしょぼいが。
俺は大工に作らせるための設計図を売ってくれないか店員に聞いてみた。三台も買ったしワンチャン荷馬車ならいけるかと思ったが、工房のノウハウが詰まった設計図は売れないと断られた。やっぱりダメかとしょんぼりしていたら、見かねた店員さんが、商業ギルドで旧式馬車の設計図なら売ってくれると教えてくれた。店員さんありがとう!
実際走るわけではないので、旧式でも何も問題ない。さっそく商業ギルドで設計図を購入した。
「設計図を手に入れたので、うちの大工に作らせます。見ていてください。きっとキャンピングオーク馬車を実現してみせますよ!」 俺は二人に宣言した。
ヨゾラさんはため息をつき、ユリアさんは苦笑いだ。なぜだ。
その後、二人と別れ帰宅した。
大工に設計図を渡し、実用できる可能なかぎり大きいオーク用馬車の開発を命じた。収納できれば性能なんてどうでもよいので何とかなるだろう。
しかしうちの大工は大忙しだ。増築やら修理やら馬車開発やらオークの棍棒作ったりとか24時間常に働いている。人間だったら過労死確定だ。もう死んでるけどね。
その後、俺達は順調に魔物配下を増やしたり、レベル上げをしながら過ごした。
季節は春をむかえ、異世界に来て1年が経とうとしていた。
そして新たな波乱の足音が近づいていた。
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