第6話 僕と面会

 一審が終わり、数日が経過したある日。

 いつものように朝食を新米宇宙人ぴにゃぴにゃとともにしていると、来客があった。

 面会者の転移を知らせるブザーが船内に鳴り響き、ぴにゃぴにゃは「ちょっと失礼」と告げて慌ただしく席を立った。

 別室で転移者を迎え入れる作業にあたるのだろう。

 僕はというと、上司宇宙人もちゃもちゃの来訪だろうと合点して、土産話や差入品の雑誌を期待していた。

 昨日も面会に来たのに、本当にもちゃさんはマメだなぁ、などと思っていると廊下の奥からぴにゃぴにゃの「ブ、ブレイン!?」という叫びが響いてきた。


 「ぴにゃぴにゃ、転移のブザーが鳴ったらまず転移者の身元確認とスキャンを行いなさい。流れ作業で転移を受け入れて、もし違う人や危険な何かがやって来ていたらどうするつもりですか」

 先ほどまで眠気を引き摺ったままのだらけきった食堂の空気は一変し、冷えっ冷えっのブレインの小言が木霊す。

 「ぴゃぃ…」

 「面会を受け入れる前に、目的と相手方の続柄、法で面会許可される身分か突合しなさい。スキャンで面会希望者の所持品に問題があれば持ち込み制限の説明をなさい」

 「ぴゃぃ…」

 アレコレと業務上のマニュアルを手元に浮かび上がらせながら、ブレインと呼ばれる女性がぴにゃぴにゃを指導している。楽しかった今朝の食卓は何処だろう。こえー、何しに来たのこの人。

 「お邪魔してすみませんね」

 こめかみに青筋をたててブレインがこちらを睨んでくる。心が読めるという彼女 に、こちらの「はよ帰って?」という気持ちが伝わってしまったらしい。

 「いいえゆっくりしていって下さい」

 心を読まれているものの、一応体面は大事である。来客ならおっとりしたもちゃさんが良かったなあ、チェンジ出来ないかなぁなどとは決して口には出さない。

 「…」

 ワナワナと肩を振るわせ、ブレインがこちらの襟首を引っ掴む。

 ぴにゃぴにゃには申し訳ないが対岸の火事だ。せいぜい頑張ってくれ。二人の面会の間は別室で茶でもしばこう。そう思って食堂を後にしようとしていた僕はブレイン のこの行為に面食らってしまった。

 「え?あの?」

 「諸多さん。貴方に会いに来ました」

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