[超短編]CatROSE/八十八家
@gadychuu
第1話
25
・・・はぁそろそろ夜会が始まるのか。
ある程度、準備を整いて今の若者らしくスマホを見ていた。
「まぁ久々にトォやシィにも逢えるし、まぁいっか。」
するとスマホの画面がとある通話の表示になる。
その主は古くから親友だった。
「・・・大からだ。」
「もしもし?。」
光は親友である大という人物と電話する。
そんな今日も彼等はいつものように過ごす。
しかし彼等は人とは違うヒトである。
余り世間を知らないヒトである。
まぁヒトによるのだけれども。
終わり。
24
二人は一言も言わずに今日も結ばれる。
互いの蜜を本能的に奪い合う。
そして青年は少年を抱え、そのまま浴室へ向かった。
一方、その頃ここ使用人達は夜会の準備で忙しくしていた。
年に数回の八十八家とエイティエ家の交流だ。
はたまた縁のある人物達が現れる。
そして空は夜へと染まる。
「着いたか。」
エイティエ家の兄妹とその使用人。
次々と当家、縁のある方々が到着する。
そして悠長に事を終えて、キリシュタリアは少し用事でこの部屋を後にした直後だった。
23
キリシュタリアはその場が立ち上がる。
だがその光景は何度見ても彫刻のように美しい。
まるで宝石が原料のように。
光は少し艶やかな息を吐く。
どうやら僕はまだ・・・彼が欲しいようだ。
彼は少年に近付いていく。
少年よりも大きな体格に身長だ。
青年と少年の差は30cm以上もある。
光に大きな影が近づく。
二人は熱い視線を打つける。
その間に見えぬ静かで愛おしい花火が咲き乱れているのだろう。
22
そんなキリシュタリアを瞳に映す光。
彼とは出逢って16年となる。
幼い頃から彼は光の許嫁であった。
それに反発した時もあった。
その記憶はまるでついこの間なようだ。
今でも光る星のように美しい。
「・・・どうした?光。」
彼は昨夜の姿のままだった。
光は既に自室用の浴槽に入ったのだ。
「キィもそろそろお風呂に入ったら?。
まだ温かいよ。」
お互いの瞳はまだ昨夜のように暑くて湿った淡い光が宿っていた。
21
魔法とはその惑星並かそれ以上の魔力を持つモノ。
魔導はヒト内で魔力を生成する者。
魔術は惑星の息を糧にその身に宿す者だ。
そしてマーギとはその惑星により選ばれる者だ。
有名どころならマーリンもその内の一人だ。
そして初代世界王であるギルガメッシュもその内の一人だろう。
二代ではマーギとなっている。
しかし二代の世界王は不明なのである。
それから神代は急速に弱まる一方だ。
惑星は息を吹き返す一方であるのに。
そしてそんな事を延々と思考する青年がいた。
冒頭に出てきたキリシュタリアだった。
20
そんな二人はその聖戦に負けてしまった。
しかし、その死闘でステラは覚醒したのだ。
本来はあり得ないのだ。
しかしマーギと契約し膨大な魔力を獲得。
その際に星々の長と契約。
まだ未知となる魔法を確立した。
それから彼女は魔法使の一人となった。
それが星霊魔法または星霊魔術だ。
星霊界との架け橋となった人物だ。
しかし現代は魔導という立ち位置となった。
この世界では魔法>魔導>魔術と分かれる。
一番なのが魔法、二番は魔導、三番は魔術だ。
19
大昔に大星霊と契約した者がいた。
彼女の名はステラ。
元々はヨーロッパ圏に誕生した。
また家系的には魔術師の家系であった。
しかし、とある縁で聖戦というモノに巻き込まれてた。
数百年に起こる神々の戯れに近いだろう。
人からしたら大厄災とも言われる程だ。
七人のマーギによりそれが始まる。
そしてその内の人であるマーギに彼女は選ばれてしまった。
彼の名はモモス。
現代魔術界隈でも全身が震える程の超有名人なのだ。
18
次は兄が少し深い溜息をつく。
「別に去年ぶりだろうが。」
一年に数回はエイティエ家と八十八家の交流がある。
元々は私達は分家側ではある。
しかし近年、我が一族は・・・。
「まぁ久々に会いたいしな。」
妹の表情から懐かしさと愛しさを感じる。
「歩多琉お姉様と光は元気だと良いな。」
兄は適当に返事する。
・・・。
・・・。
・・・。
八十八一族。
古くから星々の巫女と呼ばれている。
17
妹は声を掛ける。
「ねぇお兄ちゃん?いつまで不貞腐れてんの?。」
兄は彼方を向いたまま答えた。
「別に・・・不貞腐れてねぇよ。」
妹は少し溜息をつく。
「仕方ないでしょ?当主になると決めたのはお兄様よ。」
兄は名も答えない。
正論という鳩尾に咬まされた兄。
「るっせぇ分かってるよ。」
兄はやっと此方を見た。
「まぁ良いわ、・・・けどお兄様、この景色・・・久々ね。」
16
そして日は少し沈み、夕方へ。
とある黒塗りの高級車が道を走っていた。
彼等兄妹は大財閥エイティエ家の者だ。
エイティエ家は八十八家の西洋圏の一族だ。
分岐の原点は双子の兄弟だった。
兄は八十八家を引き継いだ。
しかし弟はヨーロッパで宝石屋を立ち上げた。
ブランド名はエイティエ。
それから今年で100年となる。
二人の名は兄はトパーズと妹はシートリだ。
そして妹は兄の方へと顔を向けた。
兄は窓に凭れるように窓外を見つめていた。
15
僕の名は兎萌 裕。
彼はルー。
現当主の八十八 光様のお姉様である歩多流様の専属執事、ユエ様の実弟である。
彼とは幼い頃から使用人としての責務を学んで来た同志だ。
実はと言うと僕は彼に前から想いを寄せてる。
けど・・・断定は出来ないけど。
彼は僕の兄である癒希を想ってるような気がする。
何だろう?僕に魅せない優しさを彼は。
ダメダメだ・・・ダメダメだ。
僕にとって・・・お兄ちゃんは。
14
そう裕にとって癒希は唯一血が繋がってるのだ。
青年は少し不服そうだ。
「何でだよ?。」
少年の内心は面倒くさいに塗り潰される。
「別にどっちでも良いじゃん。
てかそんなに僕と居たくないの?。」
青年は突然の意味不明の言動に戸惑う。
「何言ってんだ?お前。」
少年は何も言えなかった。
「べべっ別に何も無いよ。」
すると少年は掃除に集中する。
青年はため息をするかのように呟く。
「意味分かんねぇ奴。」
13
するととある二人は一緒に業務をこなしていた。
「おーい裕。」
「何?ルー。」
一人の少年が紅髪金眼の青年に近づく。
彼は少年よりも30cm以上高いのだ。
青年は続ける。
「てか癒希遅くね?。
まさか道にも迷ったか?。」
少年は大きなため息をつく。
「ほっといてあげてよ。
兄さんにとってはこの期間は大切なんだ。」
12
そして暫くして彼が声を掛ける。
「そろそろ部屋に戻ろう。
朝食が出来てる筈だ。」
彼女は少し寂しくなりながらも頷く。
「うんそうね。
早く行きましょう。」
また主従関係の二人に戻る。
二人が出逢って15年になる。
この二人にも色々な出来事があったのだ。
それもいつか分かる日が来るだろう。
11
「君は素敵だよ。」
彼女は見上げる。
まるで月のように微笑む彼。
「君は最初ったから僕を大切にしてくれていた。
それに君は僕に名を与えてくれたんだ。
何もないこの僕に・・・。」
彼女は優しく彼の頭を撫でる。
「ねぇユエ?。」
すると二人の唇は重なり、暫くして離れた。
「貴方と出逢えて良かった。」
彼女は彼の胸に顔を埋める。
彼もまた彼女を強く抱きしめた。
10
「ジェモア様は血相を変えてお伝え頂いた日です。」
女性の名は八十八 歩多琉。
「そうね・・・でも彼は本当に正しい事をしたのよ。
私達はそれを当たり前だと思っていたわね。
あの言葉を聞いて。」
彼女の瞳には罪悪感を覗かせた。
現当主の実姉である。
その隣はユエと言う。
彼女直属の執事だ。
そしてユエは歩多琉を大切そうに抱き締めた。
「大丈夫だよ?歩多琉。
君も当主様も本当にお優しいのだ。
だから酷く自分を追い詰める事はするな。」
そしてユエは彼女に甘い影を落とす。
9
そしてとある女性は二人の青年少年を瞳に映していた。
またその背後には長身の白髪銀眼の青年がいる。
女性の表情はとても和んでいた。
まるでお日様のように。
「ねぇ?ユエ・・・。
癒希もあと数年数えると二十歳よね。
癒希も恋をする年齢なのね。」
青年は笑みを静かに咲かせる。
「そうですね歩多琉。
あの子もそういうお年頃なのですよ。
・・・しかし今でも思い出しますね。」
すると二人は少し燥ぐかのように笑みを咲かせる。
8
でもそれは一瞬の事でした。
私の両手をジェモア様は大切そうにまるで宝物のように包んで下さりました。
「・・・こんな寒いのに。
私は此処の使用人では無いが・・・いつもありがとう。」
その時のあの言葉は今でも励みになっております。
勿論、当主様や皆様はとても優しいです。
けど、初めて一人の人間として接して頂いたのです。
・・・。
・・・。
・・・。
一人の少年の目には一滴の涙が流れた。
それを掬う青年がいた。
青年はまるで家族かのように少年を抱き締めた。
7
・・・あっまた優し目をしてくれてる。
この方をお慕いするようになったのは僕がまだ10代に入りたての頃でした。
その日はいつものように使用人としての業務に励んでおりました。
丁度、季節は冬の頃です。
とあるお部屋で雑巾掛けを行っていました。
その日はとても寒くも冷たくもありました。
「はぁー寒いな・・・。」
すると足音がし、顔は其方を向けていた。
其処には今日同様に宿泊なさってたジェモア様が居たのです。
僕はそれに気付き、礼儀としてその場に立ち上がったのです。
6
ずっと見つめる癒希。
それに鈍感なジェモア。
「大丈夫か?癒希。」
癒希はハッとし我に返る。
「・・すすみません!はい大丈夫です。」
ジェモアは少し癒希を心配する。
「無理だけは出来るだけ控えるんだぞ?。」
ジェモアは癒希が幼い頃から光に仕えている。
・・・正直、俺は驚いていた。
こんな幼い頃から仕えている事に。
もっと遊びたいだろうに。
すると癒希は更に目の前にいる憧れの人に沼る。
5
ジェモアは優しく微笑み癒希へと近づく。
「癒希か・・・頭を上げてくれ。」
彼の命のままにそれに従う。
癒希の顔は蕩けるように赤くしていた。
「ジェモア様・・・ありがとございます。」
少し辿々しくなる。
すると癒希の頭に大きくて温かい手が置かれる。
癒希の顔はピークまで赤くなる。
同時に彼の金眼神艶と自身の目が打つかる。
「いつもご苦労様だな。
あの二人を起こしに行ったのか?。」
しかし癒希はその瞳に抜け出せなくなっていた。
4
僕には幼い頃から想ってるお方がいる。
この時期になるとゼーラー家のキリシュタリア様に・・・。
そしてとある大きな庭園に向かった癒希。
其処には筋肉質の上半身を露わにした青年がいた。
同時に木製の槍を手に持ち、一人稽古を重ねていたのだ。
彼の名はジェモア・ポセードュ。
癒希の幼い頃からの想いを馳せるお方だ。
彼の美しくも逞しい光景に癒希は色んな花を心で咲かせていた。
するとジェモアは此方に気付き此方を振り向く。
癒希は慌てて頭を下げた。
3
するととある少年が溜息をつく。
「はぁ・・・。」
・・・もう朝食出来たんだけどな。
「まぁいっか・・・数分後にまた来るか。」
僕の名は兎萌 癒希。
此処では男中として幼い頃から務めている。
元々、僕の家系は八十八家の使用人として古い歴史がある。
産まれながらにこのお屋敷に仕えるのだ。
ふと癒希はある事を想い出す。
「そういえば・・・。」
癒希は甘い笑みを咲かせた。
2
隣にいる青年はキリシュタリア・ゼーラー。
かの神々の末裔である。
すると扉に3回ノックが鳴る。
少年はこの屋敷の当主である。
しかし彼はノックを無視する。
この状況では恥ずかしいのだろう。
・・・静かになった。
「流石に中には入って来られたら困るよ。」
少年はそっと隣にいる愛しい人の髪の毛を撫でる。
金の長髪は何度見ても美しく感じる。
少年の表情もとても和やかだ。
1
2020年8月のとある朝。
横になる二人の男性カップルがいた。
すると目覚ましが鳴り始めた。
それに先に意識を咲き始める少年。
そのまま上体を起こした。
少年の顔は余りにも端正な顔をしていた。
「・・・はぁ朝か。」
少年は隣にいる恋人を見る。
どうやら未だ眠ってるようだ。
昨夜、愛し合ったのだろう。
二人は裸体だった。
少年の名は八十八 光だ。
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