第10話 VS違法マルチ④ ─ 完 ─
ゲームセンターで遊び始めて暫くすると男が立ち去り、店を出ていきました。それによってどういう状況になるかというと……。
「あの女性、シロさんと距離が近すぎではありません!?」
「ラン、さきほど言っていたデート商法というのはですね、あのように相手の異性に好意があたかもあるように振舞って不要であろう高額な物品を売りつける商法のことですわ」
私の説明を聞いているカトレアは首を傾げながら色々と質問をしてきます。主に男女のアレコレで何が違うかについてを私は答えていきます。
「それは結婚詐欺とはどう違うのでしょうか? デートして買ってもらうよりも多くのお金を奪えそうですけど……」
「結婚詐欺は相手の財産を直接奪うことができますけど、自身の身元を晒してしまいますし報復リスクが高いのです。強硬すれば傷害致死事件になることもありますから」
「なるほど。あとのことを考えると高額とはいえ買えないこともない商品を売りつけるメリットが大きいのですね」
いらない物だとはいってもモノが手元に残るため後からの苦情はあまりでないようです。商品の購入という法に則った正規の入手手段で買わされた事実があるのが大きいのだとか。見ている外野からは高い買い物しているのはわかりますけど、本人は納得して買われているパターンですね。
「あ、ロマネ様、男女のアレコレで思い出しましたが
「びじん……、ああ、
私たちはいずれ殿方と結ばれると思います。それまでは知らなくてもいい話で、カトレアには知らないままでいて欲しいという願いを込めて誤魔化しました。もし、子どもが男の子だった場合、そういう男女関係になった方とグルの男に不倫の慰謝料を請求されることだとでも伝えておきましょう。あまり生々しい話もあれですからね。
「いろいろとお話をありがとうございます。あのマルチへの勧誘は一種のデート商法なのですね」
「ええ、友達から始めて距離を詰めていくのです。覚えておいてくださいね」
自分が引っ掛かったことは忘れていそうなカトレアを余所に、さらに移動を始めた二人を追うと古民家に入っていきました。
「ここが
「何名かの話声が聞こえますわね……」
豪胆な大きな男の笑い声が響き、隠れながら壁に耳を当てると少なくとも男3人、女2人の声が聞き分けられました。
「―――シルヴィ、間に合ったかい?」
「エリックお兄様! お忙しい中、来てくださりありがとうございます! ―――キャロは一緒ではないのですか?」
「僕が最初に声をかけられたみたいで次にシャリンの元にかけていったのは見たけどまだ戻って来ていないんだね」
そして、いいタイミングでお兄様も到着してくださったのでシロからの合図があったら他のお兄様やお姉さまが間に合わなくてもすぐに作戦を決行することとしました。
「え!? あのシルヴィア様とお知り合いなのですか!?」
「そうなんですよ~。ちょっとお城とコネがありましてね、姫様の専属占い師をさせてもらっているんですわ」
「姫様が平民のいる場に顔をほとんど出さないのはこのソウパさんの占いでまだ出るべきではないと出ているからなのよね」
「すげーだろ。ちょっとお前も占ってもらえよ」
そうこうしているうちに内部の会話が胡散臭いモノに変貌していき、隣にいるカトレアが私の顔を不思議そうに覗いてきました。
「え? シルヴィア様って占いとか信じる方でしたっけ?」
「そんなわけないでしょ……。占いは信じませんし、ソウバなんて占い師ももちろん知りません。こういえばどういう状況かご理解していただけますか?」
「―――もしかして、王族との繋がりがあると嘘をついている?」
カトレアもようやく事の重さを理解してくれたようで私は大きく頷きます。となりではよくも
「シロさんから合図です」
床を3回足で叩く音が聞こえたので私たちは拠点となっている家へと突撃しました。
「そこまでです! 悪質なマルチ商法への勧誘はいけませんよ!」
「なんだテメェ!!! オレたちには王族と繋がりのあるソウバさんがいるんだ。悪質なわけがねぇだろ! ―――って、ちょっと待て」
そのソウバさんとやらに騙されているであろう哀れな男が叫びますが、無情にも私の後ろから現れた人物の顔を見て固まります。
「お父様! 来てくださったのですね!!!」
「ワシの手落ちだ。話はエリックから聞いたがシルヴィアにも迷惑をかけたようじゃな」
「こ、国王陛下?」
「いかにも。申し開きがあるなら聞くがどうじゃ?」
お父様であるギルガメッツ国王の登場から先は一方的な展開で、王族への侮辱罪を含めた様々な罪状で一切の温情もなく一味は連行されていきました。その後、なんやかんやとあり、お父様の息抜きの一つだったマルチ商法での教祖の立場はシロさんが引き継ぎ、存在を自分で探し当てた人物のみ勧誘するという形態のサークルへと変化したようです。
「お父様、いくらなんでも力技ではありませんでしたか?」
「国王なのだから問題あるまい? 所詮、この世は金が全て。王国とはいえ資本主義であるならそれが全てじゃ」
「そのお金がお金としての信頼を得ているのは国が保証しているから、ならば王族は最悪、無尽蔵にお金を刷るなりできる。お金が全てであるなら私たち王族はその全てを支配する。―――でしたよね」
「うむ。ゆえにシルヴィアも通貨安定の責務全うせねばをならんぞ」
お父様の期待は重い。それでも私はそれに応え続けるために不当な悪徳金融や詐欺を摘発を続けていく。全てはお金の信頼を維持するために。
─ 完 ─
第三王女の悪徳商法撲滅法 (中編二万文字) たっきゅん @takkyun
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます