第3話 VS投資詐欺②

 私はシャリンお姉さまの話を聞いて許せなくなりすぐさま行動に移ります。


「キャロ、異常な利回りの投資話を持ち掛けている人物を特定しなさい」

「畏まりました」


 私はそれはもうとても怒っています。歩いているとお城で働いている皆が振り返ります。ぷんぷんっと擬音が聞こえてくるような歩き方をしている自覚もあるのでそれが原因だと思われます。


「この間の闇金業者は違法な金利でもちゃんとお金を貸すという約束は守っていたけれどこれ詐欺よ! 投資会社ですらないわ!」

「シルヴィア、独り言が聞こえてきたんだが、詐欺なら手を貸そうか?」

「あっ! エリックお兄様、ごきげんよう。お兄様に手伝っていただけるなら助かります」


 私はエリックお兄様を自室に招いて投資詐欺の話とこれから行う撲滅作戦の内容を話しました。


「と、いうわけで協力をお願いします。エリックお兄様、フィリアお母さま」

「……えっと、どうして母上まで付いてきたのでしょうか?」

「そんなの決まっているわ。私の可愛い子どもたちの後ろ姿が見えたらからよ」


 お母さまは私の白銀の髪を撫でながらお兄様の肩に手を回し自分の方へと引き寄せました。


「まったくシルは。ギル譲りなこの綺麗な髪をまたくすませるのね」

「私はお兄様やお姉さまのようなお母さま譲りの神々しい金色ではありませんから」

「……シルヴィア、それは父上を、国王陛下を侮辱しているようなものだと思うぞ」

「お父様の髪には威厳があるのです。私も場数を踏んであのような髪色になりたいと思います」


 国王としての国のことを常に考え続けているお父様は若々しいとは言えず、それは民を思う苦悩による老け方に思えました。昔は私のように艶のある白銀色をしていたと聞きますが、今では輝きの消えた白色に近い髪色に変化してしまっています。けれど、私はそんなお父様が誇らしくて憧れていますし、私たち兄弟姉妹で力を付けて支えていきたいと思える国王の姿でした。


「では、動くのは1週間後の朝ということでお願いします。キャロがそれまでに接触し、騙されたふりをしてお兄様の追跡魔法をかけてた大金を後日に渡します」


 私の考えた作戦の説明を二人は真剣に聞いてくれています。それは経済、お金についての話のばあ、私を信頼してくれている証に思えました。


「で、その夜に詐欺師たちはきっと打ち上げで高級な酒場で豪遊するでしょう。そこを私が酒場の下働きとして投資話に興味を示して話を聞きますのでその間にお兄様とお母さまは資金の差し押さえと分配金をもらっている既に投資してしまった方の確保をお願いします」


 この作戦は詐欺師に大金が入り気分が良く、騙し取ることに成功して失敗なんてすることもないという自信をつけている時にお酒の力で投資話を酒場で力説してもらわなければなりません。


「お酒ねぇ、ギルも私も弱いけどアリアは強かったわね。せっかくだしアリアとカゼルも誘いましょうか」

「賛成です。僕も母上もシルヴィアの近くにいないとなるとキャロだけでは少し不安ですし、ガゼルがいるなら暴れたとしてもシルは守れるでしょう」

「王族相手にそんな暴れるなんて……」

「お酒の力を甘く見てはいけません」「お酒の力を甘く見てはダメだよ、シルヴィア」


 その後、二人からお酒の怖さをたっぷりと聞かせられ、勧められても絶対に口にしてはいけないと念押しされました。そもそも王族なのだから口に入れるモノには細心の注意を払いなさいなど王族の心得の再確認に発展して私は心配性な二人の優しさに感謝をしながらも、そんな子供じゃないんだから大丈夫なのに……と辟易していたのは多分察してくれていたと思います。


「わかりました。お兄様、お母さま。心配してくださりありがとうございました」

「いいのよ、好きであなたに協力したいだけだもの。またね、シル」

「お金の問題はシルヴィアの管轄だけど、詐欺という犯罪の取り締まりは僕の仕事だからね。むしろシルヴィアから聞くまで知らなかったことで自分の未熟さを痛感したよ。それじゃ僕もそろそろ失礼するね」

「はい。当日はよろしくお願いします。アリア様とガゼルお兄様には私からお話しておきますので、それではまた」


 私はその後もアリア様とガゼルお兄様に話をしたり、お金の準備をしたり、キャロに既に投資をしている方と接触してもらったりと色々と手回しをしました。そして一週間後、作戦決行の日となりました。

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