第10話 その道の先に
僕らはまず中央に位置するの宗教国家 ヴォルスへと向かうこととした。集落を出てしばらくすると森があり、人ひとりが通れる草木の刈られた道は、けもの道と呼べるほど左右の植物が高く育っていた。
ザクザク
「サクラ、大丈夫? 足元に気をつけて転ばないようにな」
ザクザク
「う、うん。だいじょーぶー」
僕は、セリアさんから頂いた護身用の短剣をいきなり草刈りに使っていた。旅立ちの時にヘージが溜めていたお金で買った剣はロングソードのため、このような場所では使えなかったから仕方がないと、ありがとうの気持ちを忘れずに言い訳をする。
「それにしてもどうしてこんな道なき道になってるんだ?」
「……んしょっと」
僕の問いに返事はなく、小さな足で必死にサクラはついてくる。切った草木が飛んでいって当たらないように、適度に距離を保ちながら先へと進んでいった。
「出口が見えてきた。もう一息だぞー」
「……う、うん。はぁ、人間の体って大変だね」
木々の隙間から大量の光が見える。西に向かって歩いているため、日の沈む時間が近いことを察した。
「よし抜けるぞ!」
「いきなり野宿しなくて済んだね」
疲労もあるのだろう、サクラは森をようやく抜けられて嬉しそうだ。そして森の木々に阻まれていた日の光が一気に視界を覆い、僕らは森を抜けた。
「……え!?」
「あれ?」
しかし、森を抜けた先は街がなかった。『野宿確定』という四文字が頭に浮かんでくる。僕らはたしかに一本道で歩いてきたはずだ。なのになぜ街につかないのか? そんな疑問を抱いているとぼやぁ~と目の前には蔦が所々に巻きついた神殿のような遺跡が現れた。
「なにこれ? この世界で昔にこんなものが作られていたなんてわたし知らないよ?」
サクラは、ずっとこの世界も見守ってきた。その彼女が知らない文明、遺跡。そんなものがあっていいのだろうか? 僕は、かける言葉が見つからずしばらく遺跡を見上げていた。
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